非国民通信

ノーモア・コイズミ

コロナがなくても

2022-01-16 22:28:15 | 社会

受験生「本当に公平性保てるのか」 大学共通テストの〝救済〟波紋(西日本新聞)

 大学入学共通テストが今週末に迫る中、文部科学省は新型コロナウイルスの影響でテストを受けられなかった受験生の救済策を通知した。西日本新聞「あなたの特命取材班」が12日、無料通信アプリLINE(ライン)でつながる「あな特通信員」にアンケートを実施すると、臨機応変な対応を評価する保護者らがいる一方で、「本当に公平性が担保できるのか」と、疑問視する受験生は少なくなかった。九州の大学関係者は土壇場での決定に戸惑い、大慌てで検討を始めている。

(中略)

 福岡県福津市の高3女子(18)は今回の対応に納得がいかない。東京にある国立大を目指し、共通テストのために2次試験では出題されない社会や理科などの科目にも取り組んできた。「自分のように合格ラインぎりぎりの人にも不利益にならないことをきちんと示してほしい」と話す。

 

 さて新型コロナウィルスの感染拡大を受けて急遽、文部科学省が「救済策」を持ち出したことにより随所で混乱が出ているようです。まぁ、この段階で言われても困る人の方が多いでしょうか。感染や濃厚接触により正規の日程で受験できなくなってしまった人からすれば恩恵はありますが、幸か不幸かそういう人はまだ少数派ですので。

 ただ受験機会が実質的に年1回しかないのは問題だとは、ずっと昔から言われ続けてきたことでもあるように思います。それでも今に至るまで抜本的な変化はなかったわけですが、新型コロナウィルスの感染が拡大するに至り、別日程での受験機会が設けられるなど動きが出てきました。これはどう評価するべきでしょう。

 以前にも書きましたが、私の勤務先では「コロナ前」から在宅勤務の制度がありました。ただし実際に在宅勤務が認められるのは、何らかの事情があって通勤できない社員に限る──結果として事実上の障害者枠になっていたわけです。それが政府の緊急事態宣言を受けて急遽「普通の」社員も在宅勤務を行うことになったのです。

 結果として「普通の」社員が在宅勤務を行っても会社の売上は割と好調なまま推移し、業務運営に支障は出ませんでした。では、それまでずっと在宅勤務が「ワケあり」の社員に限定されてきたのは何だったのかと、問われるべきものがあるように思っています。コロナ前からだって、在宅勤務は出来たはずですので。

 同様に大学入試の受験日程に幅を持たせることは、新型コロナウィルスの感染拡大の有無にかかわらず検討すべき課題であったはずです。それを今までずっと怠ってきたツケが、ここで回ってきたとも言えます。コロナという危機に迫られてようやく本当の意味での変革が始まるとしたら、そこに省みるべきこともあるでしょう。

・・・・・

 なお「福岡県福津市の高3女子(18)」からの不平も伝えられています。「共通テストのために2次試験では出題されない社会や理科などの科目にも取り組んできた」そうですが、多分この人は、共通テストの対象でなければ社会や理科はろくに勉強しなかったのでしょうね。まぁ受験対象の科目しか勉強しないのは、この人に限ったことではありません。

 学校で何を学んできたか、それが就職の際に重要視されるのは極めて稀なことです。一方で著名な(総じて入試難度の高い)大学をストレートに卒業しているかどうかは、しばしば最も優先度の高い選別条件になっていたりします。企業が秘密裏に定める大学群に入っていなければ面接対象から外されるなど、いわゆる「学歴フィルター」は誰もが知るところです。

 ただ大学や高校も似たようなものなのかも知れません。大学だって「高校で何を学んできたか」を軽視しているからこそ受験科目を絞る、英語さえ出来れば十分だったり、社会や理科は全く勉強していないような受験生だって合格させるわけです。大学生が英語しか勉強しなかったり、高校生が受験対象の科目しか勉強しなかったりするとしても、それが次のステップで求められるものだったとするのなら、致し方ないことと言えるでしょう。

 私も大学を出たおかげで高卒社員より少しだけ高い基本給を設定してもらえたり、出身校のネームバリューのおかげで面接機会を得られたことはありますが、大学で学んだことを職場で生かせる機会が巡ってきたことは一度たりともないです。ただ仕事の役に立っていないから意味がなかったかと言えば、それは別問題でもあります。この「福岡県福津市の高3女子(18)」にしても、高校で社会や理科を学んだことが卒業後に就職した先で役に立つことはないでしょう。しかし自分の人生にとって意味があるかどうかは、本人の心がけ次第ですね。

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