非国民通信

ノーモア・コイズミ

手帳はなくても

2018-09-02 23:10:11 | 雇用・経済

職場での障害者虐待が過去最多(共同通信)

 職場で雇用主や上司から虐待された障害者が、2017年度は597事業所で1308人に上ったことが22日、厚生労働省のまとめで分かった。人数は16年度に比べ34.6%増加。年度を通じて調査を始めた13年度以降、人数、事業所数ともに最多となった。

 通報件数も増えており、1483事業所、2454人といずれも過去最高。厚労省は「心理的虐待に当たるいじめや嫌がらせは一般の労働者でも相談が増えており、社会全体の問題意識が高まっているのではないか」としている。

 虐待の種類別(一部重複)では、最低賃金を下回る時給で働かせるなどの経済的虐待が1162人で最も多かった。

 

 2週間ばかり前に、こんな報道がありました。「職場での障害者虐待が過去最多」とのことで、この辺は氷山の一角と言いますか実数はもっと多いであろうと思われますが、まぁ社会の問題意識の高まりもあって表に出てくる数値が増えたと見るのは妥当なところでしょう。

 なお厚労省の匿名の誰かによれば「心理的虐待に当たるいじめや嫌がらせは一般の労働者でも相談が増えており~」だそうですが、虐待の種類別では、最低賃金を下回る時給で働かせるなどの経済的虐待が1162人で最も多かったことも伝えられています。そういうのも――法律違反ではなく――虐待と呼ばれるんですね。

 

障害者雇用3460人水増し 27機関で不適切算入(朝日新聞)

 障害者の雇用数を中央省庁が水増ししていた問題で、政府は28日、国の33行政機関を対象とした昨年6月1日時点の再調査結果を公表した。27機関で計3460人の障害者数の不適切な算入があり、平均雇用率は従来調査から1・19%に半減した。27機関で当時の法定雇用率2・3%に届いていなかった。障害者雇用の旗振り役となる国の約8割の機関で、水増しが広がっていた深刻な事態となった。

(中略)

 再調査の結果、最も水増しが多かったのは、国税庁で1022・5人。雇用率は2・47%から0・67%に下がった。国土交通省の603・5人、法務省の539・5人が続いた。雇用率はそれぞれ2・38%から0・70%、2・44%から0・80%になった。制度を所管する厚労省でも不適切な算入があったが、法定雇用率は達成していた。

 

 さて、冒頭の障害者虐待を伝える記事が出てから数日後、今度は官公庁における障害者雇用の水増しが報じられるようになりました。中央省庁の他、地方自治体でも類似の事例があるそうですが、国税庁などでは障害者雇用率を2・47%としていたものが0・67%へと下方修正されるなど、華々しい粉飾ぶりが伝えられています。

 背景としては民間企業と省庁の制度の違いがあり、民間企業では障害者手帳のコピーを外部団体に提出しなければならない一方、省庁の場合は厚労省への報告だけで良かったのだそうです。この独立行政法人へ障害者手帳のコピーを提出する制度、ともすると天下り先のための仕事作りに見えないでもありませんが、一応はチェック機能になっていたようですね。

 さて雇用主であるところの各省庁は厚労省に報告するだけで済むことから、そこで働く人が障害者手帳を持っているかどうかまでは、敢えて確認していなかったわけです。この辺は褒められたことでは当然ありませんが、しかしこの水増しを構成している「障害者枠で雇用されているけれど、手帳は持っていない人」とは、いったいどんな人たちなのか、ちょっと気になります。

 まぁ就労先が官公庁であれば心理的虐待はあろうとも経済的虐待まではなかろうと、そう期待して就職を望んだ人は多そうです。民間企業は手帳の有無を厳しくチェックする反面、「最低賃金を下回る時給で働かせるなどの経済的虐待」などの問題が大いに懸念されます。民間企業も官庁も、守っている法律もあれば守っていない法律だってあるでしょうから。

 結局のところ手帳を持っていなくとも就労に苦労したり、諸々に支障を来している人は珍しくないです。健常者として世間に認められているけれども、法律で認められた障害者よりずっと無能で有害な人だっています。自分の勤務先にしても、手帳を持った人よりもずっと気配りを必要とする人々に就労機会を提供しているわけで、もう法定雇用率を満たしているかどうかなんて気にしていられません。

 まぁ、障害者枠として線引きをするなら、その線引きに客観性を持たせるためには「手帳を持っているかどうか」が最大公約数的なものにならざるを得ないのでしょう。それぞれの雇用主が独自に基準を設けることを許してしまえば、結局は都合良く改変されるのを許すだけです。ただ現行の手帳交付の基準、手帳の有無による雇用の区分には、いくらか釈然としないものもあります。

コメント (1)
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