非国民通信

ノーモア・コイズミ

日本にはまだ高齢層が必要だ

2010-03-18 22:49:46 | ニュース

 『嫌韓流』で有名な山野車輪に新刊が出たそうです。その名も「『若者奴隷』時代」だとか。まぁネットのコピペを漫画化するという点では一貫しているのかも知れません。プレスリリースに寄れば「『貧乏』なのも、『結婚ができない』のも『自分の努力が足りない』せいだと思っていませんか? / 現代の若者を追いつめるこれら諸問題の元凶は、『弱者であるはずの高齢者』にあったのです……。」とのこと。この辺もネット世論的には一定の支持があるところなのでしょうか。ネット世論に限らず、経済誌や御用学者にも若者の貧困問題を世代間対立にすり替えようとする傾向は強く見られますから、『嫌韓流』に続いてこの類の本が出てくるのは自然な流れなのかも知れません。

 経済誌や御用学者が世代間格差を強調するのは、労使の問題に目を向けさせたくないからですね。経営目線で考えれば、雇用者と被雇用者の問題に発展させることなく、被雇用者間で完結させたいのは当然と言えます。しかるに、そうした経済誌や御用学者のまいたタネを鵜呑みにしちゃう子も少なくないのは困りものです。小泉内閣時代に日本の格差が取り沙汰され出した時、政府筋の見解はどのようなものであったでしょうか。格差が拡大したのは高齢化が進んだからだ、元から経済格差の大きい世代の占める比率が高まったからだと、それが小泉の答弁でもあったはずです。(それは格差拡大の一因であって主原因ではないのですが)ともあれ高齢層の経済格差が大きいことは当時の自民党政府も認めるオフィシャルな見解であり、つまり若年層よりも富裕層が多い一方で貧困層もまた多いのが高齢層だったわけです(終身雇用や年功序列賃金の恩恵を受けてこられたのは、大企業に勤めていた人だけですからね!)。しかるに昨今では高齢層=裕福/若年層=貧困というように類型化して語る論調が強まりつつある、その一環として山野車輪の著書も出てきたように思われます。

 取り敢えず山野車輪は自分の親に自説を訴えかけてみてはどうでしょうかね、彼が木の股から生まれてきたのなら話は別ですが。何はともあれ、中高年層を取り巻く環境が悪化すると、その子供もまた困ります。よく「無能で高給取りの団塊世代が居座っているせいで自分たちにポストが回ってこない」みたいな紋切り型の意見もあるわけですけれど、そこで解雇規制を緩和して団塊世代を追い出すとなるとどうでしょうか? もしかしたら、あなたにポストが回ってくるかも知れません。その代わり、あなたのパパが失業します。ちなみに新人のあなたの給料は、パパの半分以下です。頑張って失業したパパを養ってください。ちなみにあなたの子供が就業年齢になる頃には、あなたはクビです。高給取りの中高年は不要です、あなたの子(世代)に椅子を譲ってください――みたいな事態が予想されますね。「優秀な」若年層のチャンスは増えるかも知れませんが、親+子を合計した収入は下がります。経営側からすれば相対的に高給の中高年より薄給で済む若年層に雇い代えたいでしょうから、願ったり適ったりなんでしょうけれど。

 年金や医療福祉などは若年層が高齢者層を支える形になってきましたけれど、これを止めたらどうなるでしょうか、若者の金銭的な負担は減るように見えるかも知れませんが、「年老いた両親の面倒を見る人」の負担は増えます。そもそも時限爆弾のように小泉の後任者を苦しめた後期高齢者医療制度などからもわかるように、高齢者を巡る社会環境も負けず劣らず悪化傾向にあるわけですが、この辺も世代間対立にすり替えたがる人からすれば「なかったこと」になっているのでしょうか。付け加えるなら、バブル崩壊後「リストラ」の名で真っ先に標的にされたのはどの世代だったかを思い出してください。まず初めに人員削減の対象とされたのは給料の高い中高年であったはずです。その辺も貧困問題を世代間対立に落とし込みたい人には「なかったこと」になっているのかも知れませんが。

参院選がどう転んでも、政界の「世代交代」加速は止められない(週刊ダイヤモンド)

 最後に、次期参院選後の政局を考えてみたい。結論から言えば、どういう結果になっても若手・中堅の台頭による「世代交代」が促進される。

(中略)

 要するに、参院選はその結果にかかわらず若手・中堅世代が台頭する。この世代には構造改革を志向する政治家が多く、鳩山政権の政策の方向性は、修正されていくことになる。

 「構造改革度」みたいなものが数値化して計れるわけでもありませんので印象論になりがちですが、引用元でも指摘されているように国会議員に関しては若手/中堅世代の方が小泉カイカクへの親和性が高いタイプが多いように思います(その辺を肯定的に取るか否定的に取るかで私と引用した週刊ダイヤモンドでは見解が異なりますけれど)。そして小泉内閣への支持率からも、若年層は中高年層よりも構造改革に肯定的であったことが推測されます。昨今の若者(若者に限りませんが)の貧困を招いた政治体制に、より強い共感を示してきたのはむしろ若い世代であり、ベテラン議員や高齢層ではなさそうです。そこで高齢者、中高年、若者と世代を区切って類型化して論じることが許されるなら、当面は世代交代に待ったを掛けた方がマシな結果になるような気がしますね。12歳の子供の国では、まだ年寄りの力が必要です。

 

 ←応援よろしくお願いします

コメント (29)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする