非国民通信

ノーモア・コイズミ

名ばかり専門業務ですって

2010-03-03 22:59:44 | ニュース

「名ばかり専門業務」で派遣法違反、3社に改善命令(朝日新聞)

 厚生労働省は1日、人材派遣最大手のスタッフサービス(東京都千代田区)など3社に対し、労働者派遣法に基づく事業改善命令を出したと発表した。派遣期間の制限がない「専門26業務」として契約した派遣社員を、実際には一般的な業務に就かせ、原則1年、最長3年の期間制限を超えて働かせていた。

 スタッフサービスでは、契約上は専門業務に指定されている「事務用機器操作」でありながら、来客の受け付けや記念品配布などの一般的な業務をさせた違法行為などが、五つの派遣先企業で計6人について見つかった。同社の本原仁志社長は「命令を真摯(しんし)に受け止め、雇用管理に関する取り組みが不十分であったことを率直に反省します」とのコメントを発表した。

 ほかに改善命令を受けたのはヒューマンリソシア(同新宿区)とヒューマンステージ(大阪市中央区)の2社。

 労働者派遣法の改正作業を進めている厚労省は、「専門業務の存在が期間制限の抜け穴になっている」との批判を受けて、派遣会社への指導・監督を強める方針を2月に示していた。

 こちらでも書いたことですが、建前上、派遣社員として雇用できる期間には制限が設けられているわけです。それ以上の期間、雇い続けるのであれば直接雇用を申し込む義務がある……ことになっています。しかるに制度上の例外として「専門26業務(政令26業務)」というものがあり、ここに該当する仕事は専門業務と言うことで派遣期間制限の適用対象からは除外されているわけです。ただし主として専門26業務に従事している場合であっても、専門26業務に含まれない仕事も兼ねている場合、その兼ねている部分の割合が高いと一般的(非専門的)な業務として扱われますので、派遣期間が制限されます。そこで派遣期間の制限から逃れるため、専門26業務以外の仕事の比率が高いにも関わらず、専門26業務として取り扱っていた、今回はその辺が指摘されているわけですね。

 まぁ、この辺は派遣業界ではよくあることです。私が所属していた派遣会社も、同様の改善命令を食らっていました。どこでもやっていることだけれど、政府としては完全に黙認しておく訳にもいかない、だから時々、思い出したように目立ったところを摘発する、そういうものなのでしょう。ただ行政サイドのアリバイ作りとしてはこんなものなのでしょうけれど、派遣労働の実態に即したものかと言えば、また微妙なところです。

 そもそも取り沙汰されている専門26業務、中には本当に専門性の高いものもあるわけですが、専門26業務として働いている人の大半は5号:事務用機器操作業務です。要するに「パソコンを使った仕事」ですね。しかるに分類上は専門的業務となっていますけれど、30年前ならいざ知らず、現代においては「誰でも出来る仕事」のはずです。仕事の9割以上が事務用機器操作業務=パソコンを使った仕事であれば専門性の高い業務として派遣期間の制限はなくなりますが、それは実態に即しているでしょうか? 引用した事業改善命令云々は、業務内容に偽りがあったことに端を発しています。ですが実際の業務内容が派遣会社の申告通りであったとして――つまりは9割以上がパソコンを使った仕事であったとして――それは本当に、派遣期間制限の例外扱いに相応しい専門的業務なのでしょうか? 制度上は、確かにそうなるのでしょうけれど……

 ついでにいえば「原則1年、最長3年の期間制限」という書き方も、制度上の建前を伝えるばかりで実態を相応しく表してはいないように思われます。私だったら「実質3年の期間制限」と書きますね。「原則1年」なんてのは過去の規定が削除されずに残っているだけで、実際の運用の際には全く考慮されていない代物ですから。また「3年の期間制限を超えて働かせていた」とのことですが、同じ人が同じ職場で3年以上、というのは意外に希少なケースです。志のある人は早くに自分から辞めてしまうものですし、逆に私のように勤労意欲に乏しいタイプは3年を待たずに雇い止めに遭う、そして会社は新たな派遣社員を雇い直すわけです。「専門業務の存在が期間制限の抜け穴になっている」との批判があるそうですが、そもそも専門業務の枠が実態に即していない、期間制限が実質的に機能していない、そして大半の派遣社員は期間制限に到達する以前に雇い止めに遭う等々、まぁキリがありません。

 

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コメント (6)
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