非国民通信

ノーモア・コイズミ

烙印を押せ

2008-12-30 22:05:11 | ニュース

 今年ももう終りなので、最後に何を扱うかは色々と悩むところですが、まぁ色々な意味でお世話になったネタ系メディアから、ネタではないニュースを紹介することにします。

日本IBMの退職強要疑惑に、日本綜合地所のずさんな内定取消問題(ダイヤモンド・オンライン)

 それにしても今回気の毒なのは、対象者が「成績下位15%」であるという選定基準が公になってしまったということ。つまり、成績下位であるというレッテルを貼られてしまったということになる。これは、転職活動をするにしても非常に不利になると思われる。

 日本IBMはここ数年、地方の生産拠点などを中心に、会社分割や事業売却などによって従業員を減らしてきたという経緯がある。そのため、労働組合の活動が活発になっていたといえる。そんな中に降って湧いた今回の大胆なリストラ。そういう意味では、問題がより表面化しやすくなっていたといえるだろう。

 それにしても、これだけの大企業が、「成績(社内評価)」をリストラの選考基準にしたケースは非常に珍しい。そういう意味でも今回の事件は、今後整理解雇をするにあたって、ドラスティックに正面突破を図ってくる企業が増えてくる、という予兆なのかもしれない。

 こちらは、日本IBMが社員に退職を強要していた件ですね。派遣切りに比べれば規模は小さいかも知れませんが、こちらも同様に深刻です。制度を作ってもそれを守らせるための仕組みは作らない、制度を破っても企業に罰は与えないのが日本の労働法制ですから(正社員と非正規雇用の「保護」の差は、制度上の差よりもむしろ雇用側の遵法意識の差に拠るところが大きいのです)、こういう前例が認められてしまうと、堰を切ったかのように惨事が続出する可能性があります。

 そして今回、日本IBMが退職を強要した対象は「社内評価の下位15%」だそうです(なんでも管理職を除けば、2人に1人の割合だとか)。もちろん、会社の評価が低いからと即解雇が合法化されるわけでもなく、必ずしも合理的な判断に基づいた退職勧告とは言えません。ただ、仮に雇用側の不当性が認められ、退職の強要という事実上の解雇処分が撤回されたとしても、「成績下位15%」として貼られたレッテルは消えません。引用元記事でも触れられているように、このレッテルは重くのしかかってくることでしょう。

ニート・引きこもり支援新法制定へ 通常国会で政府提出へ(産経新聞)

 ニートや自宅に引きこもっている若者の存在が社会問題化している中、こうした若者の自立や社会参加、就労を官民連携で支援するために、政府が「若者支援新法」(仮称)を来年の通常国会に提出する方針を決めたことが、28日分かった。急速な景気の悪化で非正規労働者らが解雇されるケースが相次いでいることを受けて、今後のニートや引きこもりの増加に備えるねらいもある。

(中略)


 地域協議会は、各機関の情報を集約して、ニートや引きこもりになっている若者がどこにいるかを把握し、専門相談員「ユースアドバイザー」や医師、保護司らが自宅を訪問する。こうした活動を繰り返す中で、引きこもりの原因を探って、社会参加への計画を策定。コミュニケーション能力を回復させる方向へと導くとともに、就業体験に参加できるように協力し、同居する保護者への助言なども行う。

 政府は新法の成立後、若者支援のためのより細かい実施計画をまとめる予定だ。

 ニート 「通学せず、仕事に就かず、職業訓練も受けていない」という意味の英語の頭文字(NEET)を取った略語。明確な定義があるわけではないが、平成20年版「青少年白書」によると、家事も通学もしていない15~34歳のニートは19年で62万人いるとされる。一般的には、ハローワークに通うなどの就職活動を行う「失業者」や、アルバイトなどを行う「フリーター」とは区別される。

 麻生首相の肝煎りだそうです。一般に想定されているような、絵に描いたようなニート/引きこもりの実数はごく僅かで「親の援助などがあるため日雇い派遣などのブラック仕事に飛びつく必要性に迫られてはいない、のんびり仕事を探しているだけ」ぐらいの人が大半だと思います。まともな仕事があれば就職したいが、まともな仕事がないから就職しない人ですね。これで親の援助がない場合、選ぶ余地を失ってブラック企業や製造業への派遣などに取り込まれるわけですが、そうならずに済んでいる人が「ニート」と呼ばれている気がします。ハローワーク? あんなブラック企業しか紹介してくれないところ、行っちゃダメです。

 ならば満足できるだけの仕事を創出するのが、当の支援対象者にとって最も満足できる解決方法なのでしょうけれど、しかるに対策としては「各機関の情報を集約して、ニートがどこにいるかを把握し、専門相談員が自宅を訪問する」とか。怖いですね。まさに「引きこもり狩り」の世界です。この手の支援、自立支援となりますと、これとかこれとかこれとか、全く良いイメージがない、人間を不良品扱いして、何とか役に立つように調教してやろうと、そういう扱いをされる印象ばかりですが、実際はどうなんでしょうね?

参考、誰のためのセーフティネット?

 それはさておき、産経新聞は正直に吐露しています。ニートとは「明確な定義があるわけではない」と。そうですね、考え出したのはイギリス人らしいですが、この言葉を実際に使うのは日本人で、とりあえず他人を貶めたいときに便利に使われる言葉が「ニート」ですから。明確な定義に基づいて使われているはずもないでしょう。それにもかかわらず、曖昧な定義のまま他人を「ニート」と認定し、押しかけようというのが今回の法案です。もはや魔女狩りみたいなものです。むしろ行政による積極的な「ニート」というレッテル貼りと呼ばれるべきでしょう。産業兵卒として役に立たないであろう人間をあぶり出して、それに「成績下位者」との烙印を押して回る作業です。「社会不適格者」と認定された人のプラスにならないことだけは間違い有りません。

 

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コメント (13)
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