2月4日11時公演、観劇。
宝塚の演目として、ベルばらはやはり楽しいと私は思った。
原作なんか既にほとんど関係ない、独自のヅカ歌舞伎として、
この演目は、今後もあまり演出など変えずにやって欲しいし、
くれぐれも「垢抜けよう」などと考えて欲しくないと改めて思った。
ケバいメイクで、こけおどしみたいな軍服やドレスで、
「愛ー、愛ー♪」
と臆面もなく歌い、背景にあるのは、書割そのもののお城。
だからこそ、良いのだ。これこそ私の思う宝塚歌劇ではないか。
こんなもの、世界中探したってほかの劇団はやっていない。
ということで、私は、相変わらずのオモロい脚本に
内心では腹筋の震えるのを止められず、しかし同時に、
懐かしさや暖かさが胸にあふれるような思いも抱きつつ、
大いに楽しんでベルばらを観せて貰った。
『(フェルゼンと王妃の逢い引きの)運河』『今宵一夜』
『バスティーユ』『牢獄』『断頭台』他、フィナーレの数々、
いずれも完成された名場面だと改めて感じた。
宝塚のベルばらは、誰が主人公になるかで何バージョンかあるが、
今回の星組は『フェルゼンとマリー・アントワネット編』、
主演のフェルゼン役は、トップの湖月わたるだった。
わたるちゃんは、レッキとした女の子だが(爆)、
どこからどう見ても、野郎系の役に持ち味を発揮するタイプで、
今回のフェルゼンも、全然、高貴には見えなかった。
王妃とは、まさに「不倫」という感じがしたし、
しかもワイルドな魅力で無意識のうちに王妃を誘惑してしまった、
という設定に見えて、ちょっと困った(^_^;。
だが一方で、わたるちゃんは、星組育ちの強みで、
キザな男役としての表現力は素晴らしいと私は思う。
リアリティのほとんどない、ベルばらなどという演目では、
そういうわたるちゃんの長所が遺憾なく発揮されていて、
男役のオイシイところをたくさん見せてくれて、とても良かった。
以下、全体として印象に残ったこと(順不同)。
・となみ(白羽ゆり)ちゃんが巧かった。びっくりした。
台詞回しといい、存在感といい、私にとって理想の王妃様だった。
こんなに堂々としたトップ娘役になっていたとは知らなかった。
・とうこ(安蘭けい)ちゃんアンドレも素晴らしかった。
歌良し姿良し演技良しの充実ぶりで、見とれてしまった。
ショーになって、ビラビラのお衣装で『薔薇のタンゴ』を踊ったのも
もうもう、最高だった。私の記憶にあるネッシー(日向薫)さんより、
かなり小柄な『薔薇タン』だったが、熱さでは遜色なかったと思う。
・「行けフェルゼン」のとき、馬車が小さく見えてびっくりした。
わたるちゃんは存在感があるうえに、そもそもガタイが良いのだった。
2001年に演った和央ようかも、かなり長身のフェルゼンだったが、
彼女は体のボリュームがないので、こんなに馬車が狭くなかった。
わたるちゃんは本当に男らしい(爆)と実感した。
彼女のフェルゼンが凄い勢いで鞭を振ると、馬車が窮屈そうだった。
・役替わりのオスカルは、この日はユウヒ(大空祐飛)ちゃんだった。
自然に「男装の麗人」になっていて、気持ち良いオスカルだと思った。
ショーの『小雨降る径』でも本当にチャーミングだった。
あと、この回では、オスカルがバスティーユで撃たれたとき、
例の、十字架みたいなかたちに持ち上げられる場面で、
支えていた衛兵役の人がよろめいて巧く上がらず、落ちかけた。
『ついに、陥ちたか』の台詞が危うくホントウになるところだった。
・フィナーレでは、メインのキャストの歌が全然なくて意外だった。
が、『小雨降る径』『ボレロ』のふたつのダンスナンバーがあり、
しかも『オマージュ』まで再現されて、わたるちゃんの男役芸が楽しめ、
目には非常に豪華なフィナーレだった。
わたるちゃん級の主演男役なら、『オマージュ』の燕尾は、
主役っぽい飾りなど付けず、シンプルな黒燕尾のほうが良かったのに、
という点だけは、見ていて残念に思った。
皆と同じ衣装を着たとき、どれほど主役の輝きが大きいか、
わたるちゃんくらいの存在感があれば、はっきりと見えただろうに。
・細かいことだが、フェルゼンの妹ソフィアが出てこなくて、
今回はなぜか「姉」になっていたのが多少、違和感があった。
しかもフェルゼンは彼女を「おねえさま」と呼んでいた。
「姉上」って言わないだろうか、普通?
私は最初、よその誰かの「お姉様」かと、一瞬、悩んだぞ(^_^;。
あと、ここ何年か、ベルばらではジャンヌが出ていないのが、
私としては、ちょっと、寂しい。
今回もまた見られなくて残念だった。
私にとって、ベルばらにおけるジャンヌは、かなり好きな役だ。
「革命政府は、手ぬるいよ!」
と民衆をあおる、痛快なジャンヌを、また誰か演ってくれないかな。
・・・ということで、以上。
月組バウホール公演『想夫恋』については、またのちほど。
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