転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



(5月17日(日)11時公演 広島ALSOKホール)

『哀しみのコルドバ』と言ったら、峰さを理じゃないか。
なんという古典的名作を今頃掘り起こして来たのだろうかと
最初にこのツアーの演目を知ったとき、とても懐かしく思った。
それで先ほど、遅ればせながら上演記録を調べてみたのだが、
峰さを理による初演は85年、とあった。
そんなもんか。だったら、私の中では、あんまり昔でもなかった(汗)。
初演は70年代かと思っていた。私の記憶は無茶苦茶だ。

再演が安寿ミラ主演(95年)だったことは、よく覚えている。
が、私の中で第一次宝塚ブームを起こした大浦みずきが退団し、
ちょうど、ファンとしてはモラトリアムのような時期だったのと、
松江に住んでいて大劇場が遠かったのとで、観に行かなかった。
テレビでは観たのだが、肝心の舞台のことより、
番組表か何かで、『哀しみのコバルト』という、
オオウケな印刷ミスを発見した記憶のほうが強烈だったりして、
結局、大馬鹿なことに、細部は全然、覚えていないのだった。

ということで、私は、なんとなく『名作』感があっただけで、
その実、かなりあやふやな状態のまま、今回の観劇に出かけた。
キャストも、ろくに把握していなかった。
失礼な!と怒らないで下さい。
私は、歌舞伎でも、席についてから「うそぉ!踊りだったか!」
と初めて演目に気づくような人間
なので。

主役がマタドールのエリオだというのは、観る前からわかっていたが、
私は最初、二番手男役がやるのはビセントだと勘違いしていた。
そう考えてしまった理由は、初演で日向薫がこれを演じたからだと思うのだが、
しかし後で調べてみたら、85年当時のネッシー(日向薫)さんは
単独二番手とは言い難いポジションだったようだし、
更に95年の再演時に二番手だった真矢みきが演じたのは
この役ではなかったことも判明し、
私の記憶が、どんだけいい加減に混乱しているかが、
改めて自覚できただけだった。

で、今回、観劇時にはまだビセントが二番手だと思い込んでいたわけだが、
芝居が進むにつれ、どう観ても私の目には、
オッサンな筈のリカルド・ロメロのほうがイイ男に見えて、困った。
ビセントも勿論、それなりに雰囲気があって、ゾクゾク来るのだが、
ロメロが出て来るたびに、私は「この人をもうちょっと観たい」と思った。
立ち姿が綺麗で、型どおりの台詞でも『何かある』感じがしたからだ。
しかし私はオペラグラスも持っていないうえ、最後列に近かったので、
顔がわからず、誰が何を演じているか定かでなかった。

私が以前から感じているのは、「大人の男性を演じられる男役は少ない」、
ということで、今回のロメロにはそれが出来ていたから凄いと思った。
宝塚の二枚目男役は、少女漫画から抜け出したという例えがあるように、
通常、描線の細い、綺麗で若い青年が多く登場している。
しかし時々、レット・バトラーのように、かなり年齢の高い男性を、
路線の二枚目男役が務めなければならない演目があって、
そういう役は、本来女性である男役スターには、とても難しいように思う。
異性を演じなければならないうえに、年齢まで表現する、というのは、
男役の側にそれなりの力や貫禄がないと、出来ないことだからだ。

終盤、主人公のエリオが、ヒロインのエバを巡ってロメロと決闘する、
という展開になって、私はついに、ロメロを演じているのが誰なのか、
配役を見なくても確信できた。

大空祐飛だった。


(続)

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