転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



松緑の髪結新三を観るために、歌舞伎座に来た。

いつものことだが、土曜の仕事があまりに忙しかったので、
私は疲労の極にあり、今回はもう新幹線に乗ったら心身が緩み、爆睡した。
岡山と新大阪の記憶だけはあったが、あとは京都も名古屋も全く知らず、
窓側の席だったため、隣人の乗り降りの際に私が動く必要もなく、
こんこんと寝続けた挙げ句に、目覚めて外を見たら新横浜に停車していた。
全然車内販売が来ないなと夢うつつにどこかで思ったのだが、
それもあまりに寝過ぎていて気がついていなかっただけだった(汗)。
広島―東京は全然遠くなく、寝たら一瞬だということを実感した。

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さて、その松緑の新三なのだが、
私にとっては今まで観たことのないタイプの新三で、とても気に入った。
松緑の新三は、若くてワルで才気漲り、極めて導火線の短い男だった。
艶っぽさはさほど無かったが、そのぶん、新鮮さが稚気にも通じており、
十分に悪いことをしているのに、愛される「やんちゃ」な雰囲気があったし、
牢屋暮らしの経験や入れ墨を自慢する件なども、かえって微笑ましかった。
髪結いの仕事をしながらの台詞がリズミカルで、
松緑ならではの、くっきりとした発音との相乗効果もあり、小気味よかった。
亀寿のシャープで冷徹な勝奴との並びがまた、実に絵になっていて、
この二人が若々しいだけに、老獪な大家(左團次)にやり込められるのも
「亀の甲より年の功」という納得感があって、面白かった。

……しかし、旦那(菊五郎)さんファンと致しましては、
あまりに鮮やかな肴売新吉の一挙手一投足に
一瞬、すべてを持って行かれそうになった今宵であった(笑)。
こんなチョイ役での旦那さんを観ることがあろうとは。
そしてそれが、これほど魅力的であり得ようとは。
旦那さんの「かっつおい!」の売り声、ワタクシ一生忘れません(笑)。

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