転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



昨日夜は、紫苑ゆう『Legend of Shion―再会Part10』に行った
『Legend of Shion―再会Part9』及びPart6~8のリンクあり )。

2005年から参加しているので、私にとって今回は、
連続5回目の『再会』だったのだが、
第1回から数えると、今年はちょうど十年目だった。
それを記念して、この秋には紫苑ゆうバウ公演『True Love』も行われ、
昨日の『再会』は、シメさんいわく「バウのお茶会」、
という意味合いもあり、バウでの曲目や制作の思い出話など
今回の公演にちなんだ内容になっていた。

登場時のシメさんは黒いマント姿で、
バウではこれに白い百合を抱いて「アルブレヒト」として
ご登場になったということだった(私はバウを観てない!)。
今回のバウを制作するにあたり、担当の谷正純先生が、
「何をやりたいか」とお尋ねになったので、シメさんは即答で
「アルブレヒト」を挙げ、それが実現したわけだったが、谷先生は
「ジゼルて墓場やろ。それから話、どーすんねん」
と随分、悩まれたということだった。

昨日はバウで共演者だったウル(未央一)さんが来られていて
シメさんに乞われてステージに上がられ、
公演の裏話や、植田先生のモノマネ(シヌほど笑わせて貰った!!)
など恐ろしく話術が巧みで芸達者なところを披露されたあと、
ウルさんからの『クリスマスプレゼントのお願い』として
「東京でもシメのリサイタルをして欲しい」
「衣装をつけてトートをやって欲しい」
等々を挙げて下さり、客席は大喝采だった。ウルさん素敵過ぎ!!

シメさんは、バウが終わってこのかた「変」なのだそうで
昨日の『再会』も、ご本人的には、
「こんなに準備しないで迎えた『再会』は初めて」
とのことだった。
しかし実際には、バウ本番もかくやと思われる熱唱が続き
(『True Love』主題歌、『うたかたの恋』『熱愛のボレロ』
『闇が広がる』(←ひとりトート&ルドルフ)等々)、
いつものシメさんの可笑しいトークも連発で、
全然「準備してない」とは思えない内容だったけれど(苦笑)。

バウのときのボレロ調『フォーエバー宝塚』の振付は
ヤン(安寿ミラ)ちゃんだったが、そもそもは、
公演予定が決まった頃に、偶然、東京でヤンちゃんと会い、
「シメさんが黒燕尾を着ないでどうするの」
「私が振付するから」
とヤンちゃんのほうから言ってくれたことで、
あの場面が決まったということだった。ヤンちゃん男前!!

振付はひとつひとつ、「宝塚への愛と感謝」が込められたもので、
ステージ上手下手それぞれから、喜多先生や小原先生寺田先生と
ほか、故人となられた先生方へお礼を捧げるかたちになっていて
シメさんだけでなく、クールなヤンちゃんまで振付しながら泣いたそうだ。
そして予科!本科!初舞台!初主役!と宝塚の日々を重ねる振りがあり、
最後、愛する宝塚から去っていく場面があり、
再度正面を向いて「はい戻ってきました、きょうのリサイタル」
という構成になっていたのだそうだ。

昨夜は、仙堂花歩ちゃんも会場に来ていて、
エリザベートの一幕最後のシシィとトートの歌を、
シメさんとのデュエットで披露してくれた。
仙堂花歩ちゃんにとってはシメさんは、既に最初から、
音楽学校の渡辺奈津子先生、という存在だったそうだが、
現役男役スターさん同然(それ以上!?)の格好良さで、
また、先生なのに
「入待ちのファンがいる」
という特別なかただったということだ。
ほか、昨日は、現・星組男役スターの涼紫央さんの姿も客席に見え、
あまりにお綺麗なので、客席でも皆の注目を集めていた。

シメさんご本人は、このたびのバウ公演に際して、
皆の愛情と尽力とに感謝するとともに、
とにかく期間中、最後まで無事に務められるよう・声が出ますように、
と祈るばかりの毎日だったそうだ。
公演が全うできてからのシメさんは、しばらく社会復帰できないほど
「変」になってしまい、今もまだ、普通ではないとのことだった。
そういえば、唯一、シメさんがいつものようでなかったのは、
昨夜のショーの最後の、挨拶の部分だったかもしれない。
アンコールを求める客席に対し、もう何も用意していないと話し、
え?アカペラ?と気を持たせた割には、結局挨拶だけで終わって、
いつも客あしらいのうまいシメさんとしては、
昨夜の幕切れは、ちょっとシまらない、奇妙なものだった。

しかしバウは終わっても『再会』は続いていくので、
今年はなんだかおかしなシメさんだった、
というのも良いかも、と温かい余韻があったのも本当だった。
また来年、貴公子・紫苑ゆうに会えるのが楽しみだ。

なお、昨日は私は珍しいことにテーブル対抗じゃんけんで勝ち抜き、
100以上あるテーブルのうち5テーブルにだけ与えられる賞品
(私のは、写真の、シメさんの記事掲載雑誌・直筆サイン入り)
を勝ち取ることができた。
同じテーブルの方々全員になんらかの賞品があったので、
皆さんにも喜んで頂くことができ、本当にシアワセだった。



追記:上記の文章を書くのは、私にとってつらくなかった。
宝塚の話題だというのに。しかもウルさんはなーちゃん同期なのに。
シメさんはやはり凄い人だと思った。シメさんの魔法は偉大だ。

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昨日、南座昼の部の『一條大蔵譚』を観てきた。
例の目眩が完治していなくて、体力的に不安だったので
今回は、勿体ないがこれしか観なかった。
あの狭い三等席で下を見続けていたら、
そのうちクラっと来て転落しそうだったから(苦笑)。

私は行くが行くまで、今回の一條大蔵卿は
音羽屋(尾上菊五郎)にとって初役だと思っていた。
自分が、音羽屋の大蔵卿を観たことがないからと言って
勝手に初役だと思い込むとは、物凄い自己中心だった。
番附(筋書き)を調べたら、昭和60年11月の国立が初役で、
解説によれば、平成11年の地方公演でも演じているそうで、
つまり今回が三度目であるらしかった。

昭和60年は、成田屋のなつおちゃん團十郎襲名で盛り上がっていた、
という記憶はあるが、それにしてもなぜ音羽屋を観なかったのか。
きっと、何かほかの道楽にウツツを抜かしていたに違いない。
平成11年のは多分、自分の居住地界隈で公演がなかった、
というのが理由だと思うのだが・・・。
ちなみに音羽屋以外での大蔵卿というと、
私は、平成元年2月に猿之助が新歌舞伎座で演ったものが、
非常に強く印象に残っている。

さて、菊五郎の一條大蔵卿なのだが、
序幕の茶店の前のところは、凄く面白かった。
最近の菊五郎には、何か憑いているのじゃないかというほど
ファンの私には絶好調に見えるのだが、今回も、
つくり阿呆の大蔵卿は、愉快だし元気だし楽しいし御機嫌だしで、
客席にも大ウケで、言うことが無かった。

中でも、なんとも言い様のない可愛らしさがあるところが、
ファン的に言って、とても良かった(逃)。
いいコいいコしてあげたいような(殴)。
お京(菊之助)の舞を見ながら喜んで、
座ったまま、自分も一緒に舞い始めてしまうところなど、
あかんぞ、来るぞ来るぞ、という可笑しさがこみ上げてきて、
がたーん!と最後に床几から転落するところまで、
ずっと、音羽屋に目が釘付けだった。

その大蔵卿が、鬼次郎(松緑)と一瞬だけ目を見交わすところは、
やはりなかなか良かった。
大蔵卿がキラリと本性を見せ、ハっと鬼次郎が身を隠すという、
本当に瞬間的な変化なのだが、・・・旦那、格好良かったです(殴)。

しかし残念ながら今回のは、
予想通り『曲舞』などの途中の場面はなくて、
序幕のあとは、もういきなり大詰の『奥殿』だった。
話としてはこれでもちゃんとつながっているので、
別に問題はないのだけど、私としては、正直なところ、
もうちょっと大蔵卿のオモシロいところが観たかったなあ、
という欲求不満が残った。
今の菊五郎なら、自由自在に演じて見せてくれただろうに、と。

大詰そのものは、勿論、良かった。
菊五郎の台詞回しは絶品だったと思うし、
武将然とした雄々しい立ち回りと、品格のある公家としての立居振舞、
そして最後に見せる、もとの「つくり阿呆」の愛らしさ可笑しさと、
良いところがふんだんに詰め込まれていて、見応えがあった。

常磐御前は、一昔前なら雀右衛門が務めたことだろうと
見ながら懐かしい場面がいろいろと思い浮かんだが、
今回の時蔵も素晴らしかった。
不可侵というくらい高貴な生まれと、
それでいて胸に秘めた強い自己主張を持つ、稀代の姫君、
というような役どころが、今最も巧いのは時蔵だと思う。
・・・と言いつつ、下町の性悪女的な役も凄みがあって巧いので、
時蔵というのは、実に恐ろしい役者だなとも思うのだけど。

菊之助は、見る度に美しくなっていて、お京も見事だった。
地味な衣装なのに、りんとした強さと「光」があって、
出てきただけで、お京の存在の意味が客席に伝わる感じだった。
ひょろひょろしていた丑ちゃんが、こんな立派になって、
・・・と親戚のオバちゃん的な勝手な感慨をずっと感じて来たが、
『十二夜』あたりから私は完全に菊之助に圧倒されるようになった。

そして何より私は、松緑を見るのが毎回、楽しみで、
今回もやはり期待を全く裏切られなかった。
胸のすくような美声と台詞回し、切れ味の良い立ち役としての動き、
松緑を見ていると私は、本当に観客としての大きな爽快感を覚える。
父上の初代辰之助の、暗くシャープな芸風とは全く違うが、
今の松緑の輪郭の鮮やかさの中には、
やはり辰っつぁんから受け継がれたものが確かにあると思い、
歌舞伎の世襲の良さを、改めて感じたりも、した。

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