忌野清志郎が準主役級の役で出演していたので、
「雨やどりの恋 ~うさぎと亀より~」を録画したうえで、じっくり観た。
テレビドラマというものをマトモに観たのは、かなり久しぶりだった。
以下、敢えてファンモードな感想のみ記しておきます(^^ゞ。
ほとんどのファンの方が同意して下さると思うのだが、
清志郎は歌っているときとその他のときとでは、まるで別人だ。
ライブで、ステージの真ん中に君臨しているときの清志郎は、
BOSSでありKINGでありGODであり、圧倒的なオーラで観客を掌握し、
どれほど広い空間だろうと完全に意のままにしてしまう。
清志郎の強烈な声は、武道館の南スタンドのてっぺんの席にさえも、
歌詞のひとつひとつを鮮明に徹底させるほどの力を持っている。
なのに、舞台を降りた清志郎は、そんなこと嘘だったかのように、
ファンを相手にしていてさえも、おどおどした目をして、
恥ずかしそうに笑う、大人しいオジさんに変貌してしまう。
それは、彼が余技のようにして時々出演する、芝居の場でも同じだ。
役名があって、現実の彼とは完全に違う設定の芝居に出ているのに、
口調も態度も、インタビューを受けてモジモジしているときと同じだし、
映画にも舞台にもテレビドラマにも出演経験があるのに、
ボー読み台詞は昔からちっとも変わっていない。
つまり、清志郎は演技などしていないのだ。
この人が「キヨシちゃん」以外のものになったところなど、
考えてみたら、私はこれまで一度も観たことがない。
このドラマの「平田紀彦」も、まさにその、
歌っていないときの、パワーオフになった清志郎そのものだった。
『千代さんだって、可愛いじゃないですか』
『千代さーん。明日、江ノ島行こうよ、江ノ島』
『千代さんとなら、新しい思い出がつくれるかなと思って』
あの口調で、こんなこと言われたら、
そりゃあ、千代(市原悦子)が平田に惹かれるのも無理ないな、
とファンなら誰だって思っただろう(^^ゞ。
ゆえに、里沙子(羽田美智子)と抱き合うシーンは本当にドキドキした。
特に、自分の着ていたジャケットを彼女の頭から被せてキスする場面は、
たまらなく格好良かった。
日頃が不器用な平田だけに、ああいうストレートな求愛は切なかった。
里沙子は、社会的にも人格的にも理想に近い夫(宮川一朗太)がありながら、
職もなく借金取りに追われるだけの平田と離れられない。
『理屈じゃないんです。平田さんを、愛しているんです。
平田さんと、いつも、一緒にいたいんです』
と言う里沙子に、こっちはそもそも清志郎ファンだから、
『そうだ、わかるぞ、里沙子!そーなんだ、どんなにアカンタレでも、
ワケわかんなくても、キヨシがイイんだよっっ~~!!!』
と本筋以上に、やたらと感情移入してしまった。
というわけで、恐らく、多くの清志郎ファンは、
『雨やどりの恋』を観て、二時間弱で、グッタリ疲弊したことと思う。
それくらい、ファンモードという観点からは吸引力の強いドラマだったし、
清志郎の存在感は、相変わらず、独特で強烈なものがあった。
そしてもうひとつ、この時期だからこそ、ファンとして心配だったのは、
やはり清志郎の声のことで、それは今まで聞き慣れた彼の声とは、
どう聞いても、違っているように思われた。
ドラマの収録時には既に喉の痛みを自覚していたそうで、
撮影期間中に、清志郎は喉頭癌の宣告を受けていたとのことだ。
『撮影は6月20日に始まり、8日に終了したが、体の不調は誰にも告げず、
「すごく楽しい仕事をさせていただきました。放送が楽しみです。
ありがとうございました」と話していたという』。
(忌野清志郎が喉頭がん、12日に入院(日刊スポーツ 07月14日))
18日には清志郎本人も放映を観ることができただろうか。
改めて、最善の治療と順調な回復を祈らずにいられない。
そして、急がなくていいから、やがて体調が万全になったとき、
今度こそ、日比谷の野音に帰ってきて、また、
BOSSでありKINGでありGODである清志郎の歌を聴かせて欲しい。
熱い熱い野音ベイベーたちが全国から集結し、
入りきれない人たちは、外に立ちつくし蚊にさされながら
それでもきっと、聞こえて来る清志郎の声と一緒に歌うだろう。
待ってます!Gatta、清志郎!!
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