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水樹の理その4

2009-11-12 | Weblog
その一瞬に、切り裂かれた。

理沙は、短く言った。



俺はふと我に返ると、その手を止めた。

理沙の下半身の辺りにあった自分の顔を持ち上げ、改めて彼女の表情を見た。

理沙は、優しい顔をしていた。

悪戯を制する母親の優しさではない。それは、信じる顔だった。



俺は、理沙に魅かれていた。


ベッドに仰向けに横たわる理沙を、俺は無言のまま見つめ、鼻がぶつかる手前くらいに近づいた。



唇は、つけなかった。



なんて綺麗なんだろう。それまでの女性に対する自分を忘れるくらい、穏やかな気分が溢れてきた。



これは、本物かもしれない。


俺が、全力でぶつかるべき相手かもしれない。








沈黙を遮り、俺の口が動いた。

「やめよう」

俺は近付けていた顔を外し、理沙から少し離れて隣に寝転がった。

そしてズボンを履き、ベルトを閉めた。

仰向けで天井を眺める。



「え、いいの?」

理沙は、風俗嬢だった。
客の男を満足させるのが、彼女の仕事だった。



「ああ、そんな気がなくなった」



彼女は困惑したようだった。

俺は、ベッドから身体を起こすと、彼女の方を向いて言った。

「俺、君に本気になりそうだ」

これには彼女はあまり驚かなかった。本気にされていなかったのだろうか。

「まずは、友達になってくれ」



8も年の離れた女の子に、俺は願うように言った。



彼女はその願いを聞き入れた。
メールアドレスと、名前を教えてくれた。



彼女の名前は、水樹。












続く。