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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

侮辱罪で懲役刑も科することができるように刑法を厳罰化する「改正」案を岸田政権が閣議決定。市民が権力を批判する健全な表現の自由は抑圧され、権力側の人間だけが言いたい放題になる危険。自公政権に騙されるな。

2022年03月10日 | 人権保障と平和

権力側の人間は絶対に刑罰を科せられない。

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 岸田政権は2022年3月8日の閣議で、社会問題となっているインターネット上の誹謗中傷を抑止するための「侮辱罪」(刑法231条)の厳罰化を盛り込んだ刑法など関連法の改正案を決定し、今国会中の法制化を目指しています。

 侮辱罪は現在刑法上「拘留(30日未満)または科料(1万円未満)」となっているのですが、この刑法改正案では侮辱罪で1年以下の懲役や30万円以下の罰金なども言い渡せるようにするという内容です。

 これに伴い、公訴時効も1年から3年に延びることになります。

 

 この刑法改正案の提案理由は、ネット社会の広がりでSNSなどを使った侮辱行為がエスカレートし、被害は深刻さを増しているのは確か。

 そして、2020年5月にはプロレスラーの木村花さんが誹謗中傷を受けて自死する痛ましい事件もあり、いまの量刑は軽すぎるとの声が上がったことにあります。

 しかし、この動きを進めてきたのが、高市早苗自民党政調会長ら表現の自由を抑圧する側だということに注意しなければなりません。

ネオナチ代表と写真を撮ったことで世界的に知られる高市早苗氏は「ヒトラーの選挙戦略」というナチス礼賛本にも推薦状を書いた極右。総務大臣として安保法案に反対する放送局は電波停止と脅迫した最低政治家だ。

 

 

 

 侮辱罪と同じく名誉の罪の章に規定されている名誉毀損罪(刑法230条)の場合は条文(230条の2)によって、表現の自由とのバランスが図られており、表現者により指摘された事実が公共の利害に関わり、公益を図る目的があり、内容が真実もしくはそう信じた相当の理由が認められる場合は罰せられないとされています。

 また、公務員や選挙の候補者の名誉を傷つけても、真実であれば罰しないとする明文規定もあります。

 ところが、言論・表現の自由に配慮したこうした定めが侮辱罪にはないので、もし侮辱罪を厳罰化するのであれば、免責する場合について広く意見を聞き、法律に盛り込むのは当然です。

 

 

 

 さらに、名誉毀損罪の場合は、公然事実を適示することが構成要件の要素になっていて、保護法益は相手方の社会的評価という客観的な価値になっています。

 ところが、侮辱罪の場合は名誉感情という相手方の主観的な要素が保護法益とされているので比較的保護の必要性は低いですし、どのような表現が「侮辱」とされ、国家が刑罰を科すべきかという線引きはあいまいになりがちです。 

 そこで、刑法は侮辱罪の刑罰を拘留または科料として、名誉毀損罪(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)よりもはるかに軽微な罪とすることでバランスを図ってきたわけです。

 ところが、侮辱罪を刑罰を厳罰化すると、侮辱の中身があいまいになだけに権力側の恣意的に運用も可能で、言論・表現の自由の萎縮につながる恐れがあるのです。

捜査機関の恣意的運用の余地があると、こういう人は絶対に捜査の対象にならない。

 

 

 そもそも、ネット上の誹謗中傷について、国家が刑罰をもって律するのが妥当なのか問題です。

 国際的には、名誉や侮辱をめぐる争いは当事者間の民事手続きで解決をめざそうという流れが主流で、国連の規約人権委員会は2011年、犯罪の対象から外すことを提起し、刑罰を科すとしても身体を拘束するのは適切でないとする見解を出しています。

 また日本でも2021年4月には、ネットに書き込みをした者を、いまよりも簡易な手続きで特定できるように法律が改正されています。

 表現の自由という重要な基本的人権が問題になる場合には、それを抑制することに国家権力は謙抑的であるべきで、当事者同士で解決する措置や民事裁判をより使いやすくして、迅速・確実に被害を救済し、違法な発信を抑止していくことを目指すべきです。

 ほとんど議論もないまま、侮辱罪の厳罰化だけが独り歩きする政府のやり方は、ロシアのように市民の表現を抑圧する狙いがあると言われても仕方ないはずです。

 

参考記事

村野瀬玲奈の秘書課広報室さんから

#侮辱罪 が戦前の言論弾圧諸法制のような言論弾圧法になることを強く恐れる (メモ)

 2020年今年の漢字一文字wwwwwwwwww | わろたにえん速報

こういうのを見たら誰でも、「安倍のアホ!」と言いたくなるじゃないですか?!(笑)。

でも、そういう市民の健全な諧謔精神の発露が、「安倍氏の名誉感情を害する」と言われて懲役刑をもって取り締まられたら、完全に萎縮してしまいます。

旧ソ連でも絶対的な権力者だった共産党に、市民は果敢に当てこすりで抵抗していたのですが、それができなくなるのが侮辱罪の厳罰化なんです。

他方、ネット上で極めて口の悪い橋下氏や百田氏らが取り締まられるとはとても思えませんしね。

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政府は8日の閣議で、人を侮辱した行為に適用される侮辱罪に懲役刑を導入し、法定刑の上限を引き上げるほか、「懲役」と「禁錮」を一本化した「拘禁刑」を創設するとした刑法などの改正案を決定しました。

改正案ではSNS上のひぼう中傷対策を強化するため、公然と人を侮辱した行為に適用される侮辱罪に懲役刑を導入し、法定刑の上限を「1年以下の懲役・禁錮」と「30万円以下の罰金」に引き上げるとしています。

また身柄の拘束を伴う刑のうち、刑務作業が義務づけられている「懲役」と、義務づけられていない「禁錮」を一本化した「拘禁刑」の創設も盛り込まれ、明治40年の刑法の制定以来、初めて刑の種類の見直しが行われることになります。

「拘禁刑」では、受刑者の特性に応じて、刑務作業のほか、再犯防止に向けた指導や教育プログラムなどを実施できるとしています。

このほか、再犯防止の観点から裁判所が個別の事案に応じた処分を出せるよう、保護観察中に再び罪を犯した場合でも執行猶予を付けることができるようにするほか、被害者の心情を伝えて反省を促す制度を整備するとしています。

政府は今の国会で刑法などの改正案の成立を目指す方針です。

 

ネット中傷抑止狙い 侮辱罪の厳罰化を閣議決定 公訴時効も延長

写真はイメージ=ゲッティ

 政府は8日の閣議で、侮辱罪の法定刑を引き上げるほか、懲役刑と禁錮刑を一本化して「拘禁刑」を創設する刑法改正案と、民事裁判をIT化するための民事訴訟法改正案をそれぞれ決定した。

 現在の侮辱罪の法定刑は「拘留(30日未満)または科料(1万円未満)」で、刑法で最も軽い。インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷を抑止するため、「1年以下の懲役もしくは禁錮」と「30万円以下の罰金」を追加して厳罰化する。公訴時効は現在の1年から3年に延びる。

 IT化によって民事裁判の迅速化と効率化を図るため、民事訴訟法も見直す。裁判所への書面のオンライン提出や、口頭弁論へのウェブ参加、訴訟記録の電子化が可能となる。当事者双方の同意があれば、6カ月以内に審理を終結し、そこから1カ月以内に判決を言い渡す制度の創設も盛り込んだ。【山本将克】

 

 

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1 コメント

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[岸田も所詮、自民党] (バードストライク)
2022-03-13 00:30:01
侮辱罪で懲役刑。。。?
こんな危険な、言論弾圧につながりかねないーーというより言論封殺が目的の法案を閣議決定した岸田&自民党。
「核シェアリング」の安倍・橋下と同様、“火事場泥棒” 以外の何者でもない!

今日の共同通信ニュースでも「今こそ改憲を成し遂げねば」と怪気炎を上げたと報じられているし。
岸田が「核シェアリングを否定した」とめっちゃ評価している自称リベラル(その実かなりネトウヨ思考な人)は、あまりに見識がなく甘ちゃんで恥ずかしいね。

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