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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

『子どもと保育が消えてゆく』 子どもと親を追いつめ、少子化を促進する野田民主党と橋下維新の会

2012年05月05日 | 子どもの権利

子どもと保育が消えてゆく―「子ども・子育て新システム」と保育破壊 (かもがわブックレット)



書評 

子どもの日にあわせ発表された総務省の推計によりますと、2012年4月1日現在の日本の15歳未満の子どもの数は、過去最低だった去年の同じ月より12万人減って、男子が852万人、女子が812万人で、1665万人となり、31年連続で減少しました。

子どもの数は、過去最低だった去年の同じ月よりも12万人減っており、昭和57年から31年連続の減少となりました。

また、総人口に占める子どもの割合も、去年に比べて0.1ポイント下がって、13.0%となり、昭和50年から38年続けて過去最低を更新しました。

最も減少したのは、東京電力福島第一原子力発電所の事故があった福島県で、およそ1万3000人減っています。

こうした少子化が我が国の最も大きな根本問題なのに、さらに子どもと親が生きづらくなる「改革」が野田民主党政権の下で進められています。

それが、総合こども園を中核とする子ども・「子育て新システム」です。

保育園が差押え!民主党の子ども子育て新システム「総合こども園」は幼児を不幸にする



本書で紹介されている大手コンサルティング会社の次のような宣伝にはぞっとしました。

「不況期でも急成長し続ける貴重な業界があります。それが、保育業界です。08年、09年、10年と全サービスの成長率ランキングで3年連続1位! 市場規模は5年前と比べて約300%! なぜ保育業界だけが急成長しているのか!?」

「どの企業様も元々保育園の運営経験などありません」

保育を「新成長戦略」に位置づけて、民間企業の参入をはかり、経済成長につなげるというのが新システムの狙いです。

「新システム」では、市町村の役割は保育の必要性の認定と利用料の一部補助だけになり、保育の供給量や質は市場原理にゆだね、児童福祉としての公的保育を解体し、市場任せの“商品”に変質させるのです

しかも、消費税増税とパックにして導入しようという狡猾さです。

消費税のために「人質」にとられた幼保一体化 「総合こども園」は要らない 子ども未来法律事務所通信16



他方、ネット上では、橋下維新の会が大阪市議会に提出予定のトンデモ教育条例が話題で、橋下市長が必死に逃げを打っています。

発達障害は愛情不足? 維新条例案、市長が火消し躍起

 橋下徹大阪市長率いる大阪維新の会大阪市議団が議会提出する方針の条例案の発達障害をめぐる規定に当事者らが強く反発、橋下市長が3日から4日にかけ短文投稿サイト「ツイッター」で火消しに躍起となっている。

 条例案は「家庭教育支援条例案」。原案で「発達障害、虐待等の予防・防止」の章を設け「乳幼児期の愛着形成の不足が軽度発達障害またはそれに似た 症状を誘発する大きな要因」と明記。「虐待、非行、不登校、引きこもりに深く関与している」「わが国の伝統的子育てで予防、防止できる」などの文言も並ん だ。

 自身も発達障害があるNPO法人「発達障害をもつ大人の会」(大阪市)の広野ゆい代表(39)は「発達障害と虐待などが同列に扱われ、人権侵害 だ。前向きに生きようとしているのに、私たちの存在を『防止』しようとする発想も許されない」と指摘。「この条例を読んだ親は自分を責めてしまう」と批判 した。

 インターネットの掲示板でも「実情をどれだけ知っているのか」「デマだと信じたい」などと非難の声が渦巻いた。

 これを受け橋下市長はツイッターで「発達障がいの主因を親の愛情欠如と位置付け、愛情さえ注げば発達障がいを防ぐことができるというのは科学的ではない」などとするコメントを連発。「市議団の方針について(市長である)僕には決定権はありません」などと釈明に追われた。

 原案をまとめた市議団副団長の辻淳子つじ・じゅんこ市議は「誤解を与え申し訳ない」と陳謝。原案修正も含め検討していく意向だ。

 発達障害には、アスペルガー症候群や学習障害、注意欠陥多動性障害などが含まれ、主に先天的なものとされている。(2012年5月5日 中国新聞)

 

 

そもそも、橋下維新の会の教育音痴ぶりは、教育基本条例などで明らかでした。

また、大阪市の改革プロジェクトチームは、保護者が運営する学童保育所(105カ所)に補助金を支給する「留守家庭児童対策事業」と子どもの家事業という放課後対策2事業に対して、今年度限りで補助を打ち切る案を示しています。

これでは働く親が子どもを預ける場所がなくなります。当然、子どもを持つことが出来なくなる大人が増えるのは確実です。

さらに、大阪市は 橋下徹大阪市長は、公立か公益法人の運営に限られていた市内の認可保育所について、株式会社にも参入を認める方針を決めました。2013年4月からの参入開始を目標とし、新年度予算に関連費用を盛り込む方針です。

ところが、大阪市は保育所面積基準を0歳児5m²・1歳児3,3m²を、0~5歳児すべて1,65m²へ縮小する大阪市児童福祉施設最低基準条例を制定しました。

本書によれば、2009年、全国社会福祉協議会は2歳未満児については1人当たり4・11㎡が必要だと実証しているのだそうです。

今までの基準でも不十分なのに、1・65㎡って、たたみ1畳でしょ?!何を考えているんですか!

「大阪市条例 保育所 1才児室が日本で最も狭くなる」 毎日放送VOICEより



橋下市長は国から地方に与えられた裁量を使うのは当たり前だといいますが、日本全国で厚労省に裁量が認められた中で、実際に行使したのは下の表のように大阪市だけなのです。

だって、まともな人間なら裁量権を与えられてもためらうのが当たり前でしょう?この基準の狭さもさることながら、0歳児から5歳児まで一緒くたに議論をする乱暴さもひどすぎます。

彼だって7人のお子さんをそんな環境で育てては来なかったはずです。

「子ども達が笑顔になれる大阪」、が彼が選挙に出たときの公約でしたが、橋下市長のやろうとしていることは、笑顔どころか橋下流「地獄の泣き顔」保育です。

こんなことでは子どもを安心して産み育てることが出来るわけがなく、少子化を促進するに違いありません。

待機児童対策、大阪市だけ緩和したのは…

(厚労省が待機児童が100人以上おり地価が高い東京の24区市や大阪、横浜市などに認めた中で日本最悪の対応が大阪市)


子どもと保育が消えてゆく―「子ども・子育て新システム」と保育破壊 (かもがわブックレット)



自民党政権を倒した民主党政権も、それを倒そうとしている橋下維新の会も、人を育てるという教育の本質を理解せず、市場主義、競争主義に堕している不幸。

わずか60ページなのに、本書では「新システムの背景」「新システムの内容」「新システムの問題点」を通じて、教育にとってなにが必要なのか、実例に即して極めて分かりやすく説明されています。

幼保一体化、待機児童解消などと言いながら、実は国民が育ててきた幼稚園教育も保育園保育も市場化して破壊してしまう新システムの問題点を明らかにする本書を、子どもの未来を考える大人の皆さんに是非読んで頂きたいと思います。



本書の著者はイラク派兵違憲訴訟で違憲判決を勝ち取った弁護団事務局長。

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待機児童対策、大阪市だけ緩和したのは…

 待機児童対策として、国が定める保育所の面積基準を今年度から3年間緩和することが大都市部の全国35区市で認められた。

 今年度の実施を決めたのは大阪市のみで、園児の「詰め込みになる」との懸念から大半の区市は見送ることが読売新聞の調べで分かった。

 認可保育所の保育室などの面積は、子どもの発達を考慮し園児1人あたりの国の最低基準が定められている。今回の基準緩和は厚生労働省が3年限定で、待機児童が100人以上おり地価が高い東京の24区市や大阪、横浜市などに認めた。

 実施には都や県、政令市などの条例が必要で、都は3月、0、1歳児に限り、1人あたり3・3平方メートルの国の基準を年度途中から2・5平方メー トルに緩和できる条例を制定した。だが、読売新聞が今年度の対応を尋ねたところ、都内では17区市が「緩和しない」、4区市が「緩和しない方向で検討 中」、3区が「未定」。一方、緩和を決めた大阪市は、必要に応じ「0~5歳児で1人あたり1・65平方メートル」に緩和できる条例を制定。対象地域は今後 検討する。

(2012年4月9日  読売新聞)
 
 

2012年05月02日 毎日新聞

 大阪市の改革プロジェクトチーム(PT)が先月まとめた試案で、放課後に子どもの遊び場を提供する民間施設に補助金を 支給する「子どもの家事業」の廃止方針を打ち出したことに対し、戸惑いが広がっている。施設は市内28カ所で、18歳未満の約2000人が利用。昨年度は 1億6100万円を補助した。障害児や複雑な家庭環境の子どもを基本時間を超えて受け入れる施設もあり、保護者らが「居場所をなくさないで」と訴えてい る。【反橋希美】

 日雇い労働者のまち・釜ケ崎(西成区)に民間児童館「こどもの里」がある。4月26日の午後1時、「た だいま」と女子中学生を筆頭に子どもたちが帰ってきた。登録は90人。基本は午後6時半までだが深夜まで開けており、親との関係に悩む高校生が相談に来 る。利用する子どもの出生届が出されていないことに職員が気付き、小学5年で初めて通学し始めた例もある。

 こどもの里は77年に開設された。大阪市から年間800万円程度の補助金が支給されているが、荘保(しょうほ)共子館長(65)は「補助がなくなれば、職員確保は難しい」と言う。他の施設も中高生の障害児を受け入れるなど特色ある活動を行っている所もある。

 1日約50人が利用し、深夜まで延長保育を行う「つくしクラブ」(東淀川区)は「今の補助でも赤字運営。職員や預かる子を減らすしかない」と訴える。

 PTは、(1)298ある市立小学校の空き教室で、校区内の小学生を対象にした「児童いきいき放課後事業」(2)保護者が運営する学童保育所(105カ所)に補助金を支給する「留守家庭児童対策事業」(3)子どもの家事業−−の放課後対策3事業のうち、今年度限りで(2)と(3)への補助を打ち切る案を示している。

 日雇い労働をしながら、小4と中1の姉妹をこどもの里に預ける父親の吉岡基(もとい)さん(48)は 「仕事が遅くなる時に夕飯を食べさせてもらえ、安心して預けられる」と語り、PT案に反発する。近くの小学校に勤務する50代の女性教師も「学校に居場所 を見つけられない子が、こどもの里に救われている。PTへの反対の声を集めたい」と話す。


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