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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

安倍政権の大義なき法人税減税・外形標準課税拡大 賃上げには結びつかず、中小企業は倒産する

2014年12月29日 | 所得の再分配と格差社会の是正

日本経済新聞 「外形標準課税 赤字企業も税負担」より



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 本日、2014年12月29日、自民・公明両党の2015年度税制改正大綱の全容が発表されます。

安倍政権が「アベノミクス」の目玉政策と位置付ける法人税減税で、その実効税率を2015年度に2・51%引き下げ、さらに2016年度までの2年間で計3・29%以上の引き下げを目指す方針です。


1 赤字企業にも課される外形標準課税が、日本にさらなる倒産の嵐を呼ぶ

そうすると、1・5兆円程度の代替財源が必要になる計算ですが、これは、外形標準課税を2年連続で拡充することなどで確保するということです。財源は現時点で1・2兆円程度と見られるので、財源の上積みも問題になります。

 ところで、外形標準課税は事業規模に応じて課税する仕組みで、給与総額やオフィス賃料などに基づいて税額を計算するので、赤字でも課税されます。

特に黒字には程遠く、経営に苦しんでいる中小企業には、やがて必ず来る消費税増税とのダブルパンチになります。





日本は企業のほとんどが中小企業で、国内雇用の7割を引き受けています。中小企業がさらに苦しむようでは、内需拡大による景気回復も、賃上げもあり得ません。

しかも、中堅・中小の実効税負担率は後述のように、大企業や銀行に比べて圧倒的に高いのです。

そもそも、地方経済もこれら内需型の中小企業に支えられているのですから、さらなる課税は「地方創生」など夢のまた夢なのです。

与党二党は対策を取るとは言っていますが、あくまで大企業優先で中小企業対策は全く不十分なので、また増税倒産が増えることは必至です。







2 法人税は大企業に甘く、中小企業に負担の重い不公正税制

さて、実際に税引き前の最終利益のうちどれだけ国税・地方税を払っているかをみた実効税負担率を法人の規模別にみると、法人税が企業の格差を拡大する性格を持っていることがわかります。

 まず、銀行大手平均の負担率は2013年度で19・6%、金融保険業を除く大手企業平均は26・3%です。

ところが、中堅企業は同37・9%、中小企業が同39%で、法人税は大企業ほど負担が小さく中小企業には重いという、企業間の格差を助長する逆進性の高い税制になっているのです。

ちなみに、アペノミクスの第一の矢と言われ、黒田バスーカという異名を取る超金融緩和で、銀行は日銀からの超低利の資金供給が得られ、居ながらにして利ざやを稼げます。

銀行は資金を貸さずに日銀当座預金口座に留め置いても、大部分は0・1%の金利がもらえるのですから、税負担は少ないのに特権だけはあるという、極めて不合理な優遇を得ているのです。




 

3 日本は欧米諸国に比べて法人税が高いという大嘘

 安倍政権は、日本の法人税が先進国の中で高すぎるので、法人税減税で日本企業に活力を与え、賃上げを実現し、また、外国から企業を呼び込むとしています。

確かに、財務省は、日本の法定実効税率が2012~2013年度が37%で、米国(40%強)より低いが、ドイツ(29%強)、英国(23%)など欧州に比べると高いと言っています。





ところが、あの、安倍首相の応援団の産経新聞に、大変な記事が載っていました。

【日曜経済講座】安倍首相が執念燃やす法人税引き下げ 法人税減税と経済再生は…


 「税務会計学」の権威である富岡幸雄中央大学名誉教授が調べ上げた、主要企業別の実効税負担率を見ると、2012、13の両年度合計平均の持ち株会社単体の実効税負担率を取り出してみると、こんな結果になるというのです!

日本のメガバンクと呼ばれる、三大金融グループは
1 三井住友フィナンシャルグループ0・001%(グループ全体の連結財務会計上の負担率は22・9%)
2 みずほフィナンシャルグループ0・097%(11%)
3 三菱UFJフィナンシャル・グループ0・306%(18・9%)
なのだそうです。

次回の記事で読んで頂く、1兆円利益を上げながら、法人税ゼロのトヨタ自動車とほぼ互角。
なにが日本の企業は法人税の負担が重い、でしょうか。

ちなみに、日本を代表する経営者として、常に名を挙げられる孫正義氏のソフトバンクは0・003%(同37・8%)、ユニクロで有名は柳井正氏のファーストリテイリング6・91%(38・5%)だというのですから、そりゃ儲かるわ!という話です。

もちろん、財務会計でみる税額は税申告額と一致するとは限りませんから、カッコ内の負担率はグループ全体の実際の税実効負担率ではなく、参考値ということにはなります。

しかし、日本の大企業の実質的な税負担が異様に軽いことは明らかです。





4 日本の大企業優遇のカラクリ

 以上のような大銀行や大企業は傘下に多くの国内子会社や関係会社を抱えています。
第1のカラクリは、親会社がこれら傘下の法人から受け取る配当金は「受取配当金不算入制度」により非課税となることです。

第2に、大企業が海外子会社から受け取る配当も「外国子会社配当金不算入制度」のおかげで、実質的には無税になります。

これらの結果、企業グループのトップである持ち株会社はその税負担が極端に低くなりますし、持ち株会社でなくても、大手商社や多国籍化している企業もこの税制を大いに活用して「節税」しているのです。例えば、事業会社の実効税負担率(連結ベース)は丸紅が7・1%、三菱商事は23・2%です。






5 賃上げにも、景気回復にも結びつかない法人税減税

 以上のように、大企業やメガバンクは「節税」して手元資金を確保し、内部留保を増やすだけで、従業員の賃上げに結びつく保証は全くありません。

安倍首相が盛んに経団連などに賃上げ要請をしていますが、我が国は共産主義国ではありませんから、企業が従う義務など全くないのですから。




大企業は、内部留保にまわさない資金で、海外でM&A(企業合併・買収)攻勢をかける一方、配当を増やして内外の投資家を引きつけるグローバル化に徹しています。

日本の大企業を日本の会社だと思っているのは、我々庶民だけであって、彼らは日本のことなどどうでもいい、まさに多国籍企業なのです。

 これらグローバル企業は日本国内向け投資、雇用を増やさせるという安倍内閣の取らぬ狸の皮算用というか、ただ大企業を優遇したいだけの御題目のようには動かないのです。

彼らは会社の実質的な所有者である株主の利益を最大化するのが唯一絶対の使命・義務・目的なのですから、法人税実効税率を引き下げてもらっても、それを株主への配当に回し、海外展開に残りの資金を活用するだけの話なのです。

 


6 アペノミクスで富めるものはますます富み、貧しきものはなおさら貧しくなる日本

そして、法人税減税で足りなくなった税収は、外形標準課税や消費税増税でまかなうのですから、日本国民は泣きっ面に蜂です。




安倍首相は、美しい国だとか、日本を取り戻すなどと美辞麗句を撒き散らしますが、彼のやっていることは、私たちの国富をグローバル企業に売り渡すことなのです。

99パーセントの我々大多数の国民を不幸せにする法人税減税には、大反対しなければなりません。

 
 

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企業減税、2千億円先行へ 法人税率2.5%引き下げ
2014年12月27日0時52分 朝日新聞

拡大する法人実効税率は来年度32%台に
 企業がもうけに応じて納める法人税について、政府・与党は来年度から、国税・地方税合わせた実効税率で2・5%引き下げることにした。税収が減る分を穴埋めする企業向けの別の増税は、複数年かけて段階的に進める。初年度については、減税額が増税額を2千億円程度上回る「先行減税」になる見通しだ。
 税制改正の具体案を議論している自民党税制調査会の野田毅会長は26日、安倍晋三首相に下げ幅の方針などを報告し、首相も了承したという。その後、野田氏は記者団に「(法人減税が)賃金引き上げなどの好循環をもたらす原動力になっていく」と語った。
 法人減税は30日に決める税制改正大綱に盛り込む。具体的な引き下げ幅は2・51%程度になる見通しで、実効税率は34・62%(全国の標準税率)から32・1%程度に下がる。
 減税分を穴埋めする増税の柱は、規模に応じて大企業に赤字でも課す外形標準課税の規模拡大だ。今の2倍にすれば1・5%の穴埋め財源になるが、2015年度は1・5倍とする方針で、初年度は他の増税と合わせて約2%の穴埋めにとどまる見込み。
 安倍政権の成長戦略では、法人実効税率を「数年で20%台」に下げる方針を示している。税率を1%下げると5千億円弱の税収が減るため、政権は別の増税で穴埋めする考えを打ち出していたが、経済界の減税要望などを受け、当面は減税幅が増税幅を上回るようにした。



【経済対策と法人税減税】格差解消は見通せず 
2014/12/27 11:12

 政府は景気を下支えする経済対策を取りまとめた。アベノミクスで大企業や富裕層が潤った一方、中小企業や中低所得層との格差は広がっている。今回の対策は増税や円安に苦しむ家計や中小企業に配慮する姿勢を示すが、格差解消につながる効果があるかは見通せない。
 経済対策と同時並行で調整が進む来年度税制改正大綱では、法人税の実効税率の下げ幅を、来年度からの2年間で3%超とすることが固まった。黒字の大企業の税負担を減らす一方、財源確保のために赤字企業の負担は増やす。「勝ち組」を優遇して経済成長のけん引役とするアベノミクスの基本姿勢は変わっていない。
 消費税増税が実施された4月以降、消費低迷が続き、国内総生産(GDP)は2四半期連続でマイナス成長に陥った。一方で円安を追い風に大企業の収益は改善した。
 安倍政権は昨年も増税に備えた経済対策を決めたが、家計や中小企業は消費や投資に対する慎重姿勢を崩していない。大企業が受けた恩恵が、賃上げや取引条件の改善を通じて家計などに波及していないためだ。
 今回の経済対策には、景気回復に直接関係がない項目や、従来の施策の焼き直しも目立ち、家計や中小企業の積極姿勢を引き出すには力不足との印象が拭えない。こうした中で大企業の優遇措置がさらに拡充されると、国民の不公平感が強まる可能性がある。
(共同通信)



【日曜経済講座】安倍首相が執念燃やす法人税引き下げ 法人税減税と経済再生は…

2014.11.2 11:29
企業規模別税負担率
不公平税制の抜本改革急げ

 景気減速の中、来年10月から消費税率を予定通り引き上げられるかどうか微妙だが、安倍晋三首相は法人に対する法定実効税率(国税・地方税合計の税率)引き下げには執念を燃やしている。法人税減税は成果を挙げられるのか。

 財務省によると、法定実効税率は平成24~25年度37%。米国(40%強)より低いが、ドイツ(29%強)、英国(23%)など欧州に比べると高い。だが、実際に税引き前の最終利益のうちどれだけ国税・地方税を払っているかをみた実効税負担率を法人の規模別にみると、全く話が違う。

 グラフを見よう。銀行大手平均の負担率は25年度19・6%、金融保険業を除く大手企業平均は26・3%だ。中堅企業は同37・9%、中小企業が同39%で「逆累進税率」の構造になっている。銀行は日銀からの超低利の資金供給で、楽々と利ざやを稼げる。資金を日銀当座預金口座に留め置いても、大部分は0・1%の金利がもらえる。特権に応じた税負担とは言えまい。

 法人税実効税率の引き下げを強く求めているのは、大企業や大手金融機関で構成される経団連だが、実際の税負担を踏まえているのだろうか。中堅、中小企業との税負担率格差はまさに、不公正税制であり、産業界を代表する経団連は法定税率引き下げの前に、不公平税制の是正を提起すべきではないだろうか。

 まだまだ、衝撃的なデータがある。「税務会計学」の権威、富岡幸雄中央大学名誉教授(89)は主要企業別の実効税負担率を綿密に調べ上げた。「公正な法人税制こそが、企業国家日本の再生の鍵。兵隊に行って生き残った私の最後の国家へのご奉公」という使命感による。

 教授が算出した24、25の両年度合計平均の持ち株会社単体の実効税負担率を取り出してみる。三井住友フィナンシャルグループ0・001%(グループ全体の連結財務会計上の負担率は22・9%)、ソフトバンク0・003%(同37・8%)、みずほフィナンシャルグループ0・097%(11%)、三菱UFJフィナンシャル・グループ0・306%(18・9%)、ファーストリテイリング6・91%(38・5%)、キリンホールディングス12・5%(37・7%)と超低税負担率だ。

 財務会計でみる税額は税申告額と一致するとは限らない。従ってカッコ内の負担率はグループ全体の実際の税実効負担率ではないが、教授は参考値として書き入れた。実はこの奇怪な数値は、大企業や金融機関有利の法人税構造を浮き彫りにしている。

 銀行や企業大手は傘下に多くの国内子会社や関係会社を抱えるが、これら法人から受け取る配当金は「受取配当金不算入制度」により非課税となる。また、海外子会社から受け取る配当も「外国子会社配当金不算入制度」に応じて実質的に無税になる。その結果、持ち株会社の税負担が極端に低くなる。持ち株会社でなくても、大手商社や多国籍化している企業もこの税制を大いに活用している。

 事業会社の実効税負担率(連結ベース)は丸紅7・1%、日産自動車21・4%、三菱商事23・2%、トヨタ自動車31・6%という具合だ。

 富岡試算値などからうかがえるのは、大手企業や銀行は節税して手元資金を確保し、海外でM&A(企業合併・買収)攻勢をかける一方、配当を増やして内外の投資家を引きつけるグローバル化に徹している現実だ。大手企業のビジネス戦略としては当然のことだ。大いにやればいい。収益を稼げばいい。そして納税すれば文句ない。

 だが、グローバル企業は日本国内向け投資、雇用を増やさせるという安倍首相の意図に応えられるだろうか。法人税実効税率を引き下げてもらっても、大手企業は配当に回し、海外展開に残りの資金を活用するだけではないのか。

 自民党税調や政府税調は法人税実効税率引き下げに伴う税収減をカバーするために、赤字法人にも課税する「外形標準課税」強化を検討している。すると、国内雇用の7割を引き受けている中堅・中小企業の打撃となる。しかも、中堅・中小の実効税負担率は前述したように、大手や銀行に比べて圧倒的に高い。地方経済もこれら内需型の企業に支えられている。さらに課税するなら「地方創生」は看板倒れだ。

 日本再生のために地方税を含めた全般的で大胆な法人税率の引き下げは必要に違いない。それは不公平税制の是正が前提だ。富岡教授は、国・地方合わせた法人税率20%として一律、公正に課税すれば、税収は1・5倍になると試算している。

編集委員・田村秀男

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