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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

「後方支援」が武力行使と一体化するという意味は、「後方支援」も参戦そのもので違憲だということ。

2015年06月13日 | 安倍政権の戦争法

 

 以前書いた記事で自分でも気になっていることがあります。

 それは、今出されている「平和安全法制」=戦争法案が11個も法案を一括して提出したもので、与野党ともに混乱しており、見ているこちらも訳が分からなくなるから整理したこの記事です。

 そこでは、こうまとめました。

戦争法案を整理する 国際平和支援法と「平和安全法制整備法」10本。武力攻撃事態法が集団的自衛権行使。

『というわけで、安倍政権の戦争法制シリーズは力の限り続けていく所存ですが、一応、ここでまとめを入れます。

「平和安全法制」=戦争法制11法案

1 国際平和安全支援法 1新法ー国連総会や安保理決議に基づく多国籍軍への後方支援

2 平和安全整備法制 10法改正案

(1)重要影響事態安全確保法ー戦争直前のアメリカ軍などの同盟軍の後方支援

(2)武力攻撃事態法(+自衛隊法)-アメリカが攻められているときに相手を攻撃する集団的自衛権の行使

(3)PKO協力法

(4)その他(国家安全保障会議など)



1 安倍首相が「新3要件があるから大丈夫」「これも専守防衛」って言ってるのは、集団的自衛権の行使を認める武力攻撃事態法の話。

 ホルムズ海峡での機雷掃海しか考えられないと言っているのも、集団的自衛権行使ー武力攻撃事態法の話。

 「我が国は後方支援するだけだから自衛隊にリスクはない」と言ってるのは、たぶん、重要影響事態安全確保法国際平和安全支援法の話。

(だって、武力攻撃事態法は自衛隊が戦争するんだから、リスクがないわけがない)。

(これには3要件なんていう形式的な縛りさえないので要注意!)

(「後方支援」なんて言ってるけど、武力行使とその手伝いなんて分けられない!)

 「我が国がイラク戦争や湾岸戦争に参戦することは絶対ない」って言ってるのは、武力攻撃事態法重要影響事態安全確保法国際平和安全支援法全部

の話だと思います。

 そうだよね、安倍ちゃん?!大丈夫か、俺と安倍ちゃん!!??

 そして、次回から見ていくように、集団的自衛権を行使する武力攻撃事態法だけでなく、実は「後方支援」の名のもとに自衛隊が活動する国際平和安全支援法重要影響事態安全確保法も、その「後方支援」っていうのがとっても危ないんだということを見ていきます。

 はい、今日はこれまで!』

『例外なき国会の事前承認』って自衛隊派兵の一部の場合=「国際平和支援」の時だけだって知ってました?

 

 

 

 確かに、「後方支援」というものが危ないのだということは予告しましたが、上の分類では、安倍政権の説明に乗っかり、「後方支援」は武力行使ではないから集団的自衛権の行使には当たらないとしてしまっています。

 ここがずっとひっかかっていたんですよね。

 衆院憲法審査会でも3参考人が口を酸っぱくして言っておられたのは、

後方支援は武力行使と一体化する

という危険でした。

 私も、実はそのことを直に日本近現代史の大家、大江志乃夫先生から直接伺ったことがあります。

 あれは、政教分離原則訴訟のために靖国神社のことを教えていただきに行ったんだったかもしれないのですが、当時、私は湾岸戦争に対する日本の1兆円以上の資金援助や自衛隊の掃海艇派遣が憲法前文と憲法9条の規定する平和的生存権を侵害するとして、首都圏の市民1000人以上が原告となって立ち上がった市民平和訴訟に参加していたので、兵站のお話が非常に印象に残りました。

 あの時は、うちからもリンクさせていただいている澤藤統一郎弁護団事務局長《岩手靖国訴訟に勝訴されるなど政教分離原則訴訟の第一人者でもあった)にくっついて大江先生のご自宅までお話を伺いに行ったのでした。

 その時、大江先生が強調されたのが、兵站なくして戦争なしということです。

 兵站とは難しく言うと、軍事装備の調達,補給,整備,修理および人員・装備の輸送,展開,管理運用についての総合的な軍事業務ということになりますが、大江先生は日露戦争や第二次大戦を例に、いかに兵站が武力行使と密接不可分なものであるかを丁寧に教えてくださったのでした。

 そこで私も下の記事を書いたのです。

「安全法制」=戦争法案で、自衛隊は湾岸戦争・イラク戦争・ISIL=「イスラム国」への武力行使に参戦できる


 

 この「後方支援」について、憲法審査会で、長谷部先生は

「(憲法9条に抵触する他国との)武力行使の一体化が生ずるおそれは極めて高くなる」

とおっしゃる、小林節先生は、戦争への協力を銀行強盗を手伝うことにたとえて、こう皮肉って話題になりました。

 「一体化そのもの。長谷部先生が銀行強盗して、僕が車で送迎すれば、一緒に強盗したことになる」

 私が湾岸戦争でイメージしていた「後方支援」はこんな感じです。

 電車の中で暴れているならず者がいて、それを暴力団の組員たちが殴る蹴るして叩きのめしているときに、暴力団の後ろからそっと汗を拭いて差し上げたりしているのが日本なんだな、と。

 もちろん、ならず者がイラクとフセイン大統領で、暴力団はアメリカをはじめとする多国籍軍のことです。

 四半世紀前の湾岸戦争の時には、それでも日本はまだ武力行使にだけは参加してはならないという規範意識がありました。犯罪で言うと正犯ではなくて、従犯・ほう助犯といった感じです。

 しかし、今回の戦争法案では、広域指定暴力団(アメリカ)が地方の暴力団(例えば「イスラム国」etc.)をよってたかって叩きのめすときに、後ろから飲み水ばかりでなく、鉄パイプやこん棒など凶器まで差し出すわけで、日本は自分自身では殴っていないというかもしれませんが、これは完全に共同正犯で、正犯アメリカと同罪です。

 これが日本が重要事態影響法や国際平和支援法でやろうとしている「後方支援」の本質です。


 さて、上の記事ではまとめとしてこう書きました。

『以上のように、重要影響事態法で行われる自衛隊による米軍への「後方支援」=兵站の分担は、武力行使と分けて考えることができない戦争そのものです。

 だから、私は再三、「後方支援」=参戦と言う書き方をしてきました。

 もちろん、兵站は武力行使に不可欠な参戦そのものですから、相手国から自衛隊はガンガン攻撃されます。また、安倍首相は戦闘に巻き込まれそうになったら逃げるんだと言っていますがw(そんなこと米軍に対する関係上も実際的にもできるわけがない)、今はどんな相手でもミサイルがあるんですから、自衛隊が攻撃されない安全地帯なんてどこにもありません。

 つまり、まとめると、日本は集団的自衛権の行使で湾岸戦争にもイラク戦争にも「イスラム国」へ自衛隊が武力行使をすることが考えられ、また重要影響事態では湾岸戦争にも「イスラム国」への武力行使でも兵站を分担して自衛隊が参戦し、攻撃される可能性があるということです。

 なんだか、物凄いことになっている輪郭をつかんでいただけたでしょうか。

 しかも、今回例に出したのは中東地域のことだけで、日本海、太平洋、東シナ海、南シナ海という、日本により近い地域ではさらに戦争をする可能性が高いわけです。

 だからこそ、各種戦争法案は戦争放棄をしている日本の憲法にも反しているわけですよね。

 これはえらいことだと思いませんか。』



 えらいことだというのは、実は、この「後方支援」=兵站=武力行使と一体化した「参戦」は、戦争法制では武力攻撃事態法よりも簡単な要件で行えるということです。

 つまり、武力攻撃事態法での集団的自衛権の行使は例の「存立危機状態」を含む新3要件を曲がりなりにも必要としますが、アメリカが他国と戦争しているときに「後方支援する」重要影響事態法では、日本に「重要な」「影響を」与える「事態」であればいいということになっています。

 さらに、恐ろしいのは実は国際平和支援法です。

 これは、イラク戦争の時の「人道復興支援」をするために作ったイラク特措法のような法律を個別に作らなくても「後方支援」できるという恒久法です。

 そして、この国際平和支援法に基づく自衛隊の米軍への「後方支援」は、

1 国連総会や安保理決議があれば、

2 国会の事前承認を条件として

行なえるのです。

 今の安倍政権がそうであるように、議院内閣制では国会の多数を占める政党が与党となって政権を担当するのですから、事前とはいえ国会承認では歯止めになりません。

 そして、イラク戦争にはありませんでしたが、湾岸戦争や「イスラム国」への武力行使には安保理決議がちゃんとあるのです。だから、私はこういう表題を付けたのです。

「安全法制」=戦争法案で、自衛隊は湾岸戦争・イラク戦争・ISIL=「イスラム国」への武力行使に参戦できる

 


 このように、日本はイラク戦争には重要影響事態であれば参戦できますし、湾岸戦争や「イスラム国」への武力行使にはそんな日本への影響は全く関係なしに参戦できるのです。

 ここが、安倍政権が作ろうとしている戦争法制の恐ろしいところで、集団的自衛権の行使には新3要件があります、これは日本の存立が危機になる場合なので固有の自衛権の範囲内ですなどといっていますが、実際には日本と何も関係がないアメリカの戦争にも「後方支援」の名のもとに参戦できるのです。

 新3要件は必要最小限か、砂川事件最高裁判決は認めているか、などと議論していても無駄だというわけです。

 しかも、これらの場合、アメリカが攻撃されてその助太刀に行くという集団的「自衛」でなくても良くて、アメリカが先に仕掛けた戦争でも一向に構わないのです。

 たとえば、クウェートにイラクが侵攻したのでアメリカなどが自分たちが攻められたわけではないけれどもイラクと戦争する湾岸戦争でも、イラクが独裁国家で大量破壊兵器があるから攻撃するというイラク戦争でも(しかも大量破壊兵器はなかった)、ISIL=「イスラム国」が無茶苦茶やるので攻撃するという武力行使でも、なんでも「後方支援」=参戦できるのです。

 現に、2015年5月27日には衆院特別委員会で安倍首相はこう発言しています。

維新の党・柿沢幹事長:「湾岸戦争やイラク戦争に参加することは決してないんですか。戦闘に参加しないだけで、兵站(へいたん)業務には参加できるし、実際に参加するかもしれないことではないか」

安倍総理大臣:「まさにイラク戦争や湾岸戦争等において行われたような、空爆を行うとか上陸をしていって武力行使を目的として、いわば砲撃を行う、こういうことはしない。後方支援ということについては、これは武力行使と一体化しない。つまり武力の行使ではないという明確な定義のもとに(自衛隊を)派遣するということは、はっきりと申し上げておきたい」

 こんな戦争にいつでも参加できるような体制のどこが積極的「平和」主義でしょうか。これは完全に積極的参戦主義ではありませんか。

 戦争法案がここまでの危険性をはらんていることは、まだあまり指摘されていないと思います。是非、皆さんにはそこまでひどい法制だということを肝に銘じてあらためて戦争法案に反対していただきたいと思います。

 


世界史としての日露戦争
大江志乃夫 著
立風書房

近現代の代表的学者・大江志乃夫の書き下ろし論考。欧米列強が迫り来る東アジア世界の解体過程と、近代主権国家の形成過程を、世界史的に捉えて新論考を提唱する。98年刊「東アジア史としての日清戦争」の続編。

 

天皇の軍隊 (昭和の歴史 3)
大江志乃夫 著
小学館

日本の国民を悲惨な戦争に巻きこんだ軍は、どのような組織を持ち、どのような思想を持っていたのであろうか?統帥権独立を旗印に、内閣や国民の戦争反対の動きを押しつぶし、張作霖の暗殺、柳条湖事件、二・二六事件、そして「支那事変」と、あいつぐ陰謀によって独裁体制をかためた。陸軍航空士官学校在学中に敗戦の日を迎えた著者が、自らの体験を手がかりに「帝国軍隊」から「皇軍」へと変貌する軍隊の実像に迫る。

 

靖国神社 (岩波新書)
 大江志乃夫 著
岩波書店

かつて靖国神社は、国民を「天皇の軍隊」に結びつけるきずなの役割を果してきた。今日では一宗教法人となっているが、近年、現職首相の参拝が慣行化し、また国家護持を求める動きも執拗にくり返されている。本書は、靖国信仰がどのようにつくられ、戦争への国民動員にいかに利用されたかをたどって、今日の靖国問題の意味を明らかにする。



法律とは常に拡大解釈される危険性を予測しなければいけません。

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集団的自衛権の何が問題か――解釈改憲批判
半田 滋 (著), 青井 未帆 (著), 南野 森  (著), 浦田 一郎 (著), 水島 朝穂 (著)
岩波書店

安倍首相が執着する集団的自衛権の行使容認。憲法九条を実質骨抜きにし、平和国家としての日本のあり方を根底から覆すに等しいことを、閣議決定で済ませてよいのか。立憲主義の破壊など憲法解釈の変更がもたらす深刻な事態について、憲法学者、政治学者、ジャーナリストなどさまざまな論者が多角的に分析。安保法制懇の報告書、パネルを使用した総理会見、与党協議等に現れた国民をミスリードする数々の議論に対しても批判を加える。過去の政府答弁など充実した資料も付した、全国民必読の書。

 

ハンドブック 集団的自衛権 (岩波ブックレット)
浦田 一郎 (著), 前田 哲男 (著), 半田 滋 (著)
岩波書店

安倍総理が執念を燃やす「集団的自衛権」の解釈変更。「集団的自衛権」とはそもそもどのような概念か?なぜ、これまで許されなかったのか?他国はどのようにして行使してきたのか?そして、なぜ、いま変更しなければならないのか?専門家がやさしく、丁寧に解説する。


政府の憲法九条解釈 ―内閣法制局資料と解説
浦田一郎編
信山社

『憲法関係答弁集(戦争の放棄)』(内閣法制局作成)を資料として用いて、昭和28年(1953年)から平成23年(2011年)に至る政府の憲法9条解釈の歩みと蓄積を考察する。「憲法9条と自衛権(自衛隊の合憲性)」、「自衛権発動の三要件」、「武力の行使」、「集団的自衛権」、「有事法制」、「武器の輸出に対する規制」など論点別構成で、検索至便。政府の平和主義解釈を知る上で必携の一冊。

 

集団的自衛権 容認を批判する 別冊法学セミナー (別冊法学セミナー no. 231)

渡辺 治 (著), 山形 英郎 (著), 浦田 一郎 (著), 君島 東彦  (著), 小沢 隆一 (著)  日本評論社

学生・一般市民向けにやさしい語り口です。
資料として、基本用語解説、および、集団的自衛権関係史を載せてあるので、法律を勉強したことのない人でも、読んで理解できる工夫をしています。

 

 

 

“イラク戦争で後方支援あり得る” 安倍総理

(テレビ朝日 05/28 00:05)

 安全保障法制の委員会審議が始まりました。このなかで安倍総理大臣は、かつての湾岸戦争やイラク戦争のような事態で、アメリカ軍などの後方支援を行うことはあり得るという考えを示しました。

 維新の党・柿沢幹事長:「湾岸戦争やイラク戦争に参加することは決してないんですか。戦闘に参加しないだけで、兵站(へいたん)業務には参加できるし、実際に参加するかもしれないことではないか」

 安倍総理大臣:「まさにイラク戦争や湾岸戦争等において行われたような、空爆を行うとか上陸をしていって武力行使を目的として、いわば砲撃を行う、こういうことはしない。後方支援ということについては、これは武力行使と一体化しない。つまり武力の行使ではないという明確な定義のもとに(自衛隊を)派遣するということは、はっきりと申し上げておきたい」

 また、共産党の志位委員長は、補給や輸送などの兵站任務は国際的には武力行使と一体不可分で、軍事攻撃の目標にされると指摘しました。これに対して安倍総理は、あくまでも安全が確保されている場所で後方支援活動を行うと強調しました。安倍総理はさらに、集団的自衛権の行使について、中東地域ではホルムズ海峡での機雷掃海以外は「念頭にない」という考えを示しました。

 

掃海と同時に後方支援も=ホルムズ派遣は事前承認-中谷防衛相

衆院平和安全法制特別委員会で答弁する中谷元防衛相=5日午後、国会内

 中谷元防衛相は5日の衆院平和安全法制特別委員会で、存立危機事態を受けて集団的自衛権を行使するケースとして想定している中東・ホルムズ海峡での機雷掃海に関し、同海峡の周辺地域で重要影響事態が発生したと認定した場合、他国軍への後方支援を同時に行う可能性があるとの見解を明らかにした。維新の党の重徳和彦氏への答弁。
 重徳氏は、武力行使の一環である機雷掃海と、後方支援の二つの活動について「明確な線引きができるのか。一体化のリスクが大きい」と指摘。防衛相は「地域的に明確に分けられる。武力行使に当たる活動の現場では、重要影響事態法に基づく後方支援活動を行うことはない」と説明した。
 防衛相は、機雷掃海のため自衛隊をホルムズ海峡へ派遣する際の手続きに関し「事前に国会の承認を求めることになると想定している。(緊急時に限り認められる)事後承認は考えていない」と述べた。維新の党の木内孝胤氏への答弁。
 ホルムズ海峡に機雷がまかれた場合の影響に関し、宮沢洋一経済産業相は、日本が輸入する原油の約8割、天然ガスの約4分の1が同海峡を通過していると説明。原油は官民で169日分の備蓄があるものの、液化天然ガス(LNG)は備蓄できず、輸入が途絶えれば「1次エネルギーのうち6%の供給に直ちに甚大な支障を生じる。発電にも大きな影響がある」と強調した。
 経産相は、海峡封鎖への対策として調達先の多角化に取り組んでいることも紹介。パイプラインによる迂回(うかい)輸入も挙げたものの、「容量が小さい」として有効な対策とはなり得ないとの認識を示した。重徳氏への答弁。 (時事通信 2015/06/05-20:13)

 

 

憲法学者から思わぬレッドカード 安保法案審議に影響か

笹川翔平、高橋健次郎 2015年6月5日02時13分 朝日新聞

写真・図版


「集団的自衛権の行使は違憲」。4日の衆院憲法審査会に招かれた憲法学者3人は、安全保障関連法案に「レッドカード」を突きつけた。政府・与党内には、今後の衆院特別委員会の審議に冷や水を浴びせかねないとの見方が広がり、「委員会の存立危機事態だ」との声も出た。

 この日の憲法審査会は本来、立憲主義や憲法制定過程を巡る議論について、各党推薦の専門家から意見を聴く参考人質疑だった。しかし、野党議員の質問をきっかけに議論は衆院特別委で審議中の安保法案をめぐる議論に集中していった。

 小林節・慶大名誉教授は、今の安保関連法案の本質について「国際法上の戦争に参加することになる以上は戦争法だ」と断じ、平和安全法制と名付けた安倍晋三首相や政府の姿勢を「平和だ、安全だ、レッテル貼りだ、失礼だと言う方が失礼だ」と痛烈に批判した。

 憲法や安全保障についての考え方が異なる3人の参考人だが、そろって問題視したのは、昨夏の閣議決定で認めた集団的自衛権の行使だった。集団的自衛権は「違憲」との見方を示し、憲法改正手続きを無視した形で推し進める安倍政権の手法を批判した。

 長谷部恭男・早大教授は、従来の政府解釈が個別的自衛権のみを認めてきた点を踏まえて「(閣議決定は)どこまで武力行使が許されるのかも不明確で、立憲主義にもとる」と批判した。

 笹田栄司・早大教授は、内閣の判断で憲法解釈を変えることについて、戦前のドイツでナチスの台頭を許した「ワイマール(体制)のことを思う」と言及。専門の違憲審査の問題を踏まえて、憲法解釈については「少しクールに考える場所が必要」などと指摘した。

 教授らは、新たな安保関連法案が、「戦闘現場」以外なら米軍などへの後方支援を拡充する点についても問題点を指摘した。

 長谷部氏が「(憲法9条に抵触する他国との)武力行使の一体化が生ずるおそれは極めて高くなる」と発言。小林氏は、戦争への協力を銀行強盗を手伝うことにたとえて、こう皮肉った。

 「一体化そのもの。長谷部先生が銀行強盗して、僕が車で送迎すれば、一緒に強盗したことになる」

■自民党内からも不安の声

 報道各社の世論調査では、安保法案に反対・慎重な意見が目立つ。憲法学者らの批判に、政府・与党は神経をとがらせる。

 安保法案の与党協議をリードした公明党の北側一雄氏はこの日の審査会で「憲法9条でどこまで自衛の措置が許されるのか。突き詰めた議論をしてきた」などと反論。菅義偉官房長官も4日午後の記者会見で「『違憲じゃない』という憲法学者もいっぱいいる」などと火消しを図った。

 だが小林氏は審査会後、「日本の憲法学者は何百人もいるが、(違憲ではないと言うのは)2、3人。(違憲とみるのが)学説上の常識であり、歴史的常識だ」と言い切った。

 法案審議の序盤で出た「レッドカード」に、自民党内からは不安の声が次々と上がる。安保法案の特別委に加わる自民党中堅議員は「特別委にとっては重要影響事態どころか、存立危機事態だ」と心配する。

 自民党幹部らは、安保法制の審議への影響について「タイミングが悪すぎる」「自分たちが呼んだ参考人がああいう発言をしたことの影響は非常に大きい」などと懸念。そもそも「なぜこんな時期に憲法審査会を開いたのか」(党幹部)と、矛先を与党の審査会メンバーに向ける声も出始めた。自民の船田元・審査会筆頭幹事は「(今回の質疑テーマは)立憲主義であり、多少問題が及ぶかなと思っていたが、後半の議論がほとんど安保法制になり、予想を超えたと思っている」と認めた。

 与野党は審査会後に幹事懇談会を開き、11日に同じテーマで各党議員による自由討議を行うことで合意したが、自民党内からは「改めて調整が必要になる」と、特別委への影響を配慮し、審査会の日程を白紙に戻すべきだとの声も出ている。(笹川翔平、高橋健次郎)

 


 

2015年6月1日(月) しんぶん赤旗

NHK「日曜討論」 赤嶺衆院議員の発言

 日本共産党の赤嶺政賢衆院議員は31日のNHK番組「日曜討論」で、戦争法案について与野党の安保政策実務者と議論し、同法案が抱える三つの重大問題を告発しました。

存立危機事態

日本が攻撃されていないのに海外の戦争に参加し武力行使

 集団的自衛権の行使が可能になる「存立危機事態」について、自民党の岩屋毅衆院議員は「必ずしも(存立危機)事態が周辺だけで起こるとは限らない。地域を限定した考え方ではない」、公明党の遠山清彦衆院議員は「専守防衛」に限られると主張。赤嶺氏は次のように述べました。

 赤嶺 集団的自衛権は、日本がどこからも攻撃されていないのに、海外の戦争に参加し武力行使をするもので、歴代政府は憲法違反だといってきた問題です。「存立危機事態」は限定的なものだと繰り返していますが、安倍(晋三)首相は、中東のホルムズ海峡が機雷で封鎖されたような経済的な影響でも発動し、自衛隊を派兵し、掃海活動を行うといっているわけです。戦後の日本が、侵略戦争への反省の上に立って、そして、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こらないことを世界に誓い、再出発した。まさに、憲法の平和主義の原点に立って、この問題を考えていくべきです。

時の政権の考えでいくらでも膨らむ―際限ない泥沼に

 他国の領域で日本が集団的自衛権を行使する問題では、各党から「(行使が認められる事例の)基準を明らかにしないと、どこまで広がっていくのか国民の心配は尽きない」(民主党・大串博志衆院議員)、「ホルムズ海峡の(機雷掃海の)話が突破口として議論され、歯止めがなくなってくる」(日本を元気にする会・山田太郎参院議員)などの指摘が相次ぎました。赤嶺氏は次のように主張しました。

 赤嶺 「存立危機事態」だから、必要最小限度の武力行使だからというのは、時の政権の考え方によって、いくらでも膨らんでいく。限定的な戦争、限定的な武力行使ではなくて、これはもう際限ない泥沼に入っていくことにつながると思います。

後方支援

軍事活動の一環―自衛隊が「殺し殺される」事態にまきこまれていく

 自衛隊が従来の「戦闘地域」にまで行って、米軍や他国軍を「後方支援」する―。海外での自衛隊の活動範囲が広がることに関して、自民党の岩屋氏は「リスクを極小化する」と言い張る一方で、「リスクが高まる可能性(があるの)は事実」とも認めました。赤嶺氏は次のように強調しました。

 赤嶺 リスクが高まるのは当然のことです。イラクは「非戦闘地域」が前提でしたが、その場合でも、戦闘寸前の危険を感じて、自衛隊は戻ってきているわけです。今度の場合には、従来の「戦闘地域」でもできるということです。「後方支援」は、もともと軍事活動の一環、兵たん活動であり、武力行使と一体化する活動です。そこに弾薬を運んだりするような自衛隊の行動が、攻撃の対象になるということは本当に現実に起こりうると思います。「殺し、殺される」事態に自衛隊が巻き込まれていく。そもそも憲法違反だということを申し上げたいと思います。

米海兵隊教本で指摘―「後方支援が一番狙われる」

 「後方支援」を行う地域について、岩屋氏が「安全な実施区域を定める方法はある」と述べたのに対し、赤嶺氏は次のように反論しました。

 赤嶺 安全なところで運用するといってみても、これは日本(政府)の勝手な考えです。戦争が起こっている、そこに弾薬を提供する、あるいは、武器や兵員を輸送する。だいたい、戦闘がいつ起こるかというのが分からないようなところでの「後方支援」活動ですから、これはもう武力行使と一体化(する)。海兵隊の戦争教本でも、一番狙われるのは「後方支援」活動、兵たん活動ですよと言っているわけですから、今の岩屋氏の発言は、現実を無視していると思います。

任務遂行の武器使用

アフガンでドイツ軍は大きな犠牲に―自衛隊に繰り返させるのか

 PKO(国連平和維持活動)法改定案で、自衛隊が国連の統括しない活動にも参加し、武器使用も「任務遂行」のために範囲が拡大されることについて、与党側は、停戦合意などの「PKO参加5原則」をあげて「自衛隊員の安全は確保されている」(公明・遠山氏)と発言。赤嶺氏は次のように主張しました。

 赤嶺 停戦合意はされていても、戦乱、混乱が残っている地域で、今度、新たに加えられた任務は、自衛隊が監視や巡回や検問や警護(を行うことであり)、これは治安維持活動です。武器の使用も任務遂行型に改めた。アフガニスタンで戦闘が終わってISAF(国際治安支援部隊)という支援機関をつくりましたが、最初は人道支援といっていたものが、戦乱、戦闘に巻き込まれて、ドイツなどは大きな犠牲を出した。そういうことを日本の自衛隊に繰り返させるものです。

戦争法案の審議

8月成立とんでもない―廃案においこみたい

 安倍政権が今夏までに戦争法案の成立を狙う中、今後の審議のあり方について問われ、赤嶺氏は次のように表明しました。

 赤嶺 戦後70年、戦争の反省の上に立って、戦力の不保持、交戦権の否認(を掲げて)出発したはずの日本が、いつの間にか自衛隊の海外派兵を拡大し、自民党政府でさえ憲法で容認できないといっていた集団的自衛権に踏み込む。最悪の法案の審議が行われています。徹底審議の上、廃案に追い込みたい。8月上旬(の成立)というのはとんでもないことだと思います。

 

 

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3 コメント

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これってどう見ても (リベラ・メ)
2015-06-13 08:29:34
“ど”素人の私でもわかります。例え直接攻撃せずとも、武器弾薬、食糧、駐屯地…etc.“軍隊にとって必要なもの”を提供すれば、“相手にとっては攻撃対象”“戦闘員でなくとも軍隊に加わって居る協力者=即ち軍属”だと云うことを。
軍に占める兵站部隊の割合は過半を越えるんだよ。 (L)
2015-06-16 12:09:50
 「アメリカ陸軍の編成は戦闘要員が2に対して、サポート要員が8の割合」だそうで、兵站は軍の力の源泉と言っていい。戦車や戦闘機や軍艦のような華やかな純戦闘部隊は槍の切っ先のようなものでその力は柄やそれを握り押し出す人にある。
 単純化すれば、リモコンの戦車のようなものでコードと電池、リモコンボックスなどが兵站。リモコン戦車(前線の部隊)を止めたいなら、コード(補給線・後方連絡線・兵站線)を切りに行くのは普通の手です。
 作戦級と呼ばれるシミュレーションゲームの一群がありますが、そこでは間接アプローチと言って、以下に補給線を切るかが大きなテーマとになります。補給が切れると、部隊は移動できなくなったり、防御力が半減したり、自分から戦闘を仕掛けられなくなるなどの制限が掛かって弱くなるからです。
 兵站を担えば、当然第一に攻撃を受けるでしょう。兵站は事実上戦闘そのものですよ。
武器提供をしません (スギさん)
2015-08-03 14:54:54
今回の法案で弾薬提供はしますが、武器はしないと政府は説明していますよ。

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