北朝鮮の朝鮮中央テレビと朝鮮中央放送、平壌放送は19日正午からの「特別放送」で、最高指導者の金正日総書記が死去した、と伝えた。69歳だった。葬儀の日程などは不明。
北朝鮮は昨年から金総書記の三男で朝鮮労働党中央軍事委員会副委員長を務める金正恩氏を中心とする三代世襲態勢への移行を推進していた。金総書記の死去が今後の北の核活動を含む対外政策にどのように影響するか、米韓など各国は不測の事態に備え情報の収集と分析に全力を挙げる。
ラヂオプレス(RP)によると、朝鮮中央テレビは同日午前10時、正午からの特別放送を予告。その際、アナウンサーが悲しい表情をしていたうえ、背景音楽が「将軍」を称える主旨の曲調だったことから死亡したとの見方が有力だった。
北朝鮮では2010年9月、朝鮮労働党代表者会を44年ぶりに開催し、正恩氏を後継者に選出。健康に不安を抱える金総書記の死後の“金王朝”の安泰をアピールし、国内の安定を図ってきた。
北朝鮮は核開発に力を入れ、06年10月と09年5月に核実験を実施。既に数発の核爆弾を保有しているとみられている。また10年には米国の核専門家に対してウラン濃縮施設を公開するなど、核を恫喝(どうかつ)外交の手段としてきた。
金総書記は73年、31歳で党、軍の人事を握る朝鮮労働党組織指導部長、思想担当兼宣伝扇動部長に就任。翌年、労働党中央委員会で政治局員に選出され、金日成主席(94年死去)の後継者となった。08年8月に脳卒中で倒れたとされ、健康が不安視されていた。
故金日成主席の生誕100年に当たり、自身も70歳を迎える12年を「強盛大国の大門を開く年」と位置付け、軍事強国を目指し、正恩氏の後継体制確立を推進してきた。
朝鮮中央放送で、金総書記の訃報を伝えたのは、あのベテラン女性アナウンサー、リ・チュンヒ氏(68)だった。(夕刊フジ)
リ氏は民族衣装の喪服に身を包み、いつも以上に厳粛かつ感情的な抑揚をつけながら、「すべての同胞の大きな傘だった。思いがけない死は、革命に大きな損失だ」など総書記を称える最大級の形容詞を重ねながら、ニュースを読み上げた。
ときに体を震わせ、嗚咽(おえつ)まじりで悲しみを全身で表現。スタジオの背景には、北朝鮮が“金総書記の出生地”と主張する白頭山とみられる雄大な山岳が掲げられていた。
リ氏は、これまで金総書記の動静など重要報道を担当。「人民放送員」や「労働英雄」の称号を持つ看板アナウンサーとして知られている。
10月19日夜の定時ニュースで、ロシアのタス通信の書面インタビューに対する金総書記の回答を読み上げたのを最後に50日以上出演が途絶えていた。このため“失踪”や“粛清”“闘病”など諸説が飛び交っていた。
金総書記の活動はこれ以降もニュースとして報じられていたが、リ氏と交代で担当してきた男性アナウンサーらが読み上げていた。