夫婦別姓の誤り 編集委員・大野敏明
最高裁が、一般的にいわれている「夫婦別姓」について違憲かどうかを判断することになった。婚姻によって、「改姓することで、人間関係やそれまでのキャリアの断絶が生じる可能性がある」ことが、問題とされているらしい。
だが、ここで使われている「改姓」といういい方は正しいのであろうか。今回、問題にされている民法750条には「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」とあって「姓」とは書かれていない。
戸籍法13条の戸籍記載事項にも「氏名」とはあるが「姓名」と書かれていないし、同14条にも「氏名の記載順序」となっていて、「姓名」と書かれていない。
これは一体どういうことなのか。われわれは「姓」と「氏」を混同して使用しているのではないか。しかし、実は、この2つは全く異なるのである。
簡単にいうと、「姓」は遠い先祖から承け継がれている「血族」を表し、「氏」は現在の家族集団を表している。
具体的にみてみよう。「姓」も「氏」もともに「名字(苗字)」である。「名字」は個人名(名)ではなく、「血」や「家」の集団を示すものである。日本では、その「名字」に「姓」と「氏」の2つの概念がある。
中世以降の日本では藤原、平、源、橘、安倍、清原、菅原といった大血族集団を表すものを「本姓(原姓)」あるいは「姓」と呼び、より細かな家族的集団を「氏」としたのである。例えば足利尊氏は「姓」は「源」で「氏」は「足利」であり、北条時政は「姓」は「平」、「氏」は「北条」である。
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