欠伸をすると光の球が飛び出る 驚いて口の中に指をさし込み
腹筋を波打たせると 塊がつっかえながら気管支を迫り上がり
口から数珠繋ぎになって吐き出される
「シャボン玉だよ お母さん」 ぼくの小さな指先のその先では
球と球がぶつかり 瓢箪のような形に合体したかと思うと
途端に破裂し 光の微粒子が飛び散り 一瞬に消え去る
風に翻弄され くるくる舞いながら上昇した球も
さすがに自身の重さに耐え切れず急降下し
欠伸する母親の口に吸い込まれる
それは 喉で破裂したらしく 透けた光が微かな七色を見せる
ぼくが存在しなかった 遠い記憶
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