先日、仲間20名ほどで仏像鑑賞会と銘打って京都の千本釈迦堂に行ってきました。快慶作の十大弟子立像、定慶作の六観音菩薩像などの重要文化財の仏像彫刻を拝見させていただきました。いずれも鎌倉時代のものですが、「いま」という時の流れとは異なる時間と空間の中に身を置いて、ただただ見入る私がいました(下の写真「十大弟子立像」は千本釈迦堂のHPから)。
その帰り道、北野天満宮、平野神社を散策して帰りました。梅の花の季節を終えて、枝垂桜には微かに開花の兆し。ここ大阪でも、きのう桜の「開花宣言」があったばかりです。でも、きょうは昼過ぎから雨模様、お花見はお預けです。明日は晴れそうなので、孫君はじめ長女一家を連れて京の街にお花見に行く予定です。
さて、今週のテーマは古典芸能です。実は、先週の土曜日と日曜日の両日、能楽堂にでかけました。半年ぶりのことですが、「能楽入門」の授業を受けて、少しずつ鑑賞の勘所のようなものが見えてきたように思います。
まず土曜日は、大槻能楽堂自主公演:能の魅力を探るシリーズ「邪と悪と激」(その3)を観にいきました。「悠久の歴史の中で人々はこれらの世界をどう生きてきたのだろうか」という副題が添えてありました。
狂言「鈍太郎」は、訴訟のために京の都から西国に下った男が、その3年間何の知らせも寄せなかったことから、本妻とお妾さんの両方から責められるというお話しでした。終始笑いを誘うお気軽な舞台でした。
能「鉄輪」は、男に捨てられ嫉妬に燃えた下京の女が、怨念を募らせ鬼の姿となって、男が頼んだ陰陽師と対峙するという悍ましいお話しでした。最後には、鬼と化した女は三十三番神によって神通力を失い、呪いの言葉を残して姿を消しますが、見方を変えれば、身勝手な男に対して真実の愛を求める哀しい女性の一途な思いを描いたと言えなくもありません。なんとも不思議な時空間をさ迷った一日でした。
翌日は、大槻能楽堂から徒歩15分ほどのところにある、船場・谷町の山本能楽堂に行きました。家内ご推薦の企画で、テーマは「流されて~能と落語と文楽と」。能楽師・山本章弘さんによる仕舞「鵺(ぬえ)」。落語家・桂南光さんの古典落語「質屋蔵」、浄瑠璃・豊竹英太夫さんと三味線・鶴澤清介さんによる義太夫「平家女護島~鬼界が島の段」が演じられました。こちらの能楽堂は、椅子ではなく畳桟敷で、舞台との距離・高さも近く臨場感あふれる舞台でした。
共通のテーマである「流されて」について、案内チラシにはこう記されてありました。「鵺とは、頭は猿、尾は蛇、手足は虎の姿をした怪獣で、源三位頼政に退治され、丸木舟に載せられて”流された”」「平清盛に謀反を諮った俊寛は丹波少将成経、平判官康頼とともに鬼界が島に”流された”」「大宰府に”流された”菅原道真公」。それぞれに「流された」ことをモチーフにした演題というわけです。
人形浄瑠璃はなんどか観たことがありますが、義太夫だけを抜き出しての出し物は今回が初めででした。客席からの掛け声に応える英太夫(はなふさだゆう)さんが、鶴澤さんの三味線に併せて「鬼界が島の段」をドラマティックに語っていきます。言葉の意味はほとんどわからなかったのですが、その熱演ぶりに前のめりになってしまいました。
アフタートークの時間には、能と浄瑠璃の声の出し方の違いが話題になりました。能は「歌う」、浄瑠璃は「語る」、そして落語は「話す」、そんなまとめ方に妙に納得したものです。ちなみに英太夫さんは、このお名前で舞台に立たれるのはこの日が最後、4月には6代目豊竹呂太夫(ろだゆう)として襲名披露(菅原伝授手習鑑)です。修行生活50年、70歳を迎えてますます円熟度を増す英太夫さんでした。
ここで話はがらりと変わりますが、大阪城を横目に大槻能楽堂に向かっているとき、目の前に真新しい大きな病院が現れました。看板をみると大阪国際がんセンターとあります。敷地内には2018年の竣工をめざす「大阪重粒子線がん治療施設」の建設も進んでいました。 重粒子線がん治療の優位性について、工事現場の看板にこんな説明がありました。(1)切らずに、痛みなく治療ができます(2)がん細胞をピンポイントで照射しますので副作用が少ない治療です(3)重粒子線は照射エネルギーが大きく、治療回数・日数が少なくすみます(4)身体機能を温存できる可能性が高く、社会復帰が早くなりますーー放射線治療の先進医療機関なんだろうと思います。大いに期待したいところですが、一方で「先進医療の技術料は全額自己負担」の文字。この世は病気も金次第ということのようです(-_-;)。
看板を見ながら家内に言いました。「ぼくには関係ないね」「延命措置は要りません」と。実は数年前、職場の健康診断で、大腸がんと前立腺がんの「要精密検査」判定を受けたことがあります。両親も祖父母もみんながんで亡くなっているので、ことさらに恐怖心というものはなく、来るべきものが来たと冷静に受け止めている私がいました。
ただ、そのときに強く思ったのは、仕事中心の生活で人生を終わりたくない、ということでした。それが私のリタイア時期を早めたのでしょう。きっと。........相応のポジションを与えられて仕事に雁字搦めになっている自分を、その呪縛から解放したい。あれから、もう8カ月が経とうとしていますが、時間の「質」がおおきく変わりました。そして、それを良しとする私が、いまここにいます。毎朝お散歩するお不動さんの境内で今朝、桜の開花を確認することができました。
そうそう、きのうは年に1回のがんドックに行ってきました。胃がん、肺がん、大腸がん、前立せんがんの定期検診です。「生老病死」は自己責任です。与えられた「生」の意味を自分なりに考え、自然の摂理に従って生きていく。そんな生き方ができればと思っていますよ。
きょうは3月31日。年度替わりのこの時期にリタイアされる方もいらっしゃるかもしれませんね。長いお勤めお疲れ様でした。新しい人生の門出に乾杯です。
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埼玉も寒くって冬に逆戻りの様でした。
今回も古典芸能を楽しまれた来たのですね。
能楽もとても難しいと思っていましたが動きとか~あら。セリフってあまりなかったんですよね。
私の様に何も分からないものは能楽を見たときには
初めはピンとこなかったんですが笑うところもあったように思います。
好きな方はも熱心に足を運んでいる様ですものね。
退職後は毎日歩いてお遍路さんにも出かけ~健康的です。
癌があったとしてもそのパワァ~には負けるでしょう~
絶対大丈夫です。毎回検査していますものね。
感心しています。
我が家はどっぷりと癌患者として今闘って(ちょっと大げさですけどね)
前を向かなければと思っています。
明日の皆さんとのお花見~楽しんでくださいね。
お天気になりそうですから良かったですね。
暖かいと良いですね。
きょうは、雲ひとつない快晴の朝を迎えました。ただ、少しひんやり感が残るためか、桜の開花はゆっくりしています。気温があがる午後には、開花のスピードも速まるかもしれませんね。
お能にはある種の緊張感のようなものが漂いますが、狂言の方は口語体なので意味もわかりやすく、気楽に滑稽さを楽しむことができます。授業では、能は歌舞劇(舞踏と音楽)、狂言はセリフを主体とする口語劇、喜劇。そんな説明を受けました。
きのうは午後から晴れてきましたので、みんなで京都にでかけました。桜花爛漫とはいきませんでしたが、孫たちは広~い原っぱで走り回っていました。さすがに子供たちは元気です。
関東地方は、そろそろ満開の時季を迎えるのでしょうか。春の暖かい日差しの下で、ご主人ともども英気を養ってください。「闘って」そして「勝ち取って」ください。
わたしは今週後半、春の四国遍路の旅にでかけてきます。