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地獄でなぜ悪い

2013-10-01 | 劇場映画れびゅー
鬼気迫る映画が得意な印象の強い園子温監督が、今度はコメディーを撮った?!『地獄でなぜ悪い』を観てきました。
★★★★★

これは確かにコメディーで、邦画では今年最高に面白かった。
やっぱり園子温カラーとして鬼気迫るところは外せない、そこを逆に笑いに繋げて楽しませてくれる。

コメディーで有りながら、最初から『仁義なき戦い』へのオマージュをプンプン匂わせつつ、さらに『仁義なき戦い』へのオマージュ映画『キル・ビル』へのリスペクトも感じさせる場面で盛り上げる。
加えてもうひとつ別の角度、映画監督を夢見る青年の熱すぎる情熱から広がる映画愛に満ちた映画としての側面も。
この二つの、まとまらなさげなテーマを笑いでひとつに融合させてしまった園子温監督、「今回はおバカ映画ですよー」的に自ら宣伝しているけど、映画の作り自体が面白いし笑いのポイントも計算され尽くしていて、やはり只者ではないと唸らされました。

ほんの少しネタバレ
メインの役どころの中では、唯一『ヒミズ』に続いて園子温監督作に出ている二階堂ふみ。
これまでの他の映画と比べてもイメージが激変し過ぎで、はじめ誰だがわからなかった位に過激な役柄を熱演。
やっぱり安定して芝居は上手く、益々期待が高まる女優として確実にステップアップしていっている。

他のメインどころの役者に関しては、初めて園子温と絡んだとは思えないはまり具合。
きっと脚本はアテ書きされたんでしょう、各々の持ってる個性に特化した十八番の演技を魅せまくってくれます。
あまりに個性の強い役者ばかりで、一人一人がその場面のオイシイところを全部持っていく事の繰り返し、というか奪い合いみたいになっていますけれど、良い意味で。

大注目だったのは、大人計画の役者で、SAKEROCKリーダーで、人気ソロシンガーで、エッセイストで、個人的にファンの星野源。
ここ数年で地味な脇役俳優と、コアなファンに支えられるインストバンドのリーダーと言う立ち位置から、全面的に一気に個性を伸ばして表舞台に躍り出た彼ですが、人気が出ても基本的に草食系で大人しい路線は変わらないところがほんと良い。
本作で発揮する顔からにじみ出るお人好し過ぎの個性と、昔からちょくちょく出していた顔芸と小技が前面に出た演技は、舞台芝居以上にビジュアルでやりたい放題で楽しませてくれたTVドラマ版『アキハバラ@DEEP』を思い出させる。
気になったのは、昨年末から入退院を繰り返した膜下出血の原因が、この映画に有ったんじゃないかと思ってしまうほどに乱暴な扱いを受けるシチュエーションが多かった事。

もう一人、レアなキレキレの演技で楽しませてくれたのは、テレビドラマで人気を博する前に蜷川シェイクスピアで何度か観て「こいつ来る」と思っていた長谷川博己。
テレビではあまり見せない舞台経験を前面に押し出した、大袈裟すぎる発声と早口の長台詞がおかしすぎて面白い。
キレッキレでイッちゃってる役だけど、蜷川シェイクスピアで培ったオーラを映像メディアで初めて感じさせてくれた。

國村隼は強面で口数が少なそうだけど、実は楽しい人。その両面を生かしたヤクザの親分役。
仁侠映画がほぼ絶滅したこの時代に、この人程親分が似合う人居ないかもねって人がコメディーで本気ヤクザやってるからまた面白い。

堤真一は今回あくまでクラウン的な役柄に特化しつつも、これまた実はヤクザの親分を演じ、ギャップで和ませる。
やたら鼻の穴にズームするカメラワークが多かったり、オ○ニーシーンが有ったりもうやられたい放題なのに、締めるところは締めるのはこの人の力と演出の上手さのバランスが絶妙に噛み合ってるから。

唯一、コメディー色ゼロで真っ向から仁侠の妻を体当たりで演じきり、真面目に恐ろしい芝居をしていたのがコメディアンの友近というキャスティングの妙。
彼女が真面目な顔で語ったり、鬼の形相で包丁片手にヤクザを追いかけ回していてもクスクス笑わしてしまう序盤のシーン。
真面目に演じれば演じる程に何故か面白いという空気を、友近の特性を利用してはじめに作り出してしまった監督天才。

他に、これまで散々園子温映画を盛り上げてくれていた園子温組役者さん達は、今回完全に脇にまわって重要なポイントで世界観を支えているところも要チェック。
出番自体は少ないけど、やっぱ園子温監督の映画ではみんなインパクトが凄い。



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