日常のぼやき

引きこもりレベル上昇中。そろそろ必殺技でも覚えそうです。

Darkness 1

2007-10-17 | 自作小説
貧困の差がはっきり分かれている昨今、貧しい人間はスラムと呼ばれる貧民地帯で暮らしている。上流階級の人間には想像もできないであろう、生きる事だけに全てをささげた毎日。犯罪は日常茶飯事、むしろ犯罪をして生きている人間がほとんどだ。昨日まで上に立っていた者は明日は地べたに這いつくばっているかもしれない、裏切りと理不尽が当たり前のように起きる。
そんなゴミ箱のような所だ。

しかし誰もが絶望しそうなスラムで、そこが生きるのに丁度いいという人間もいた。表世界では生きていけない者だ。犯罪者や戸籍のない子供、裏家業で生きている者。理由は様々だが、キレイな世界で生きていけない人達が生きるには住みやすい場所。そんな場所に一人の青年がたどり着いたのは数ヶ月前の事だった。
もともと金などない、体一つで来た。失うものなどなかった青年は、思ったより住み心地のいいスラムで今生きている。
働かせてもらっている店の主が言っていた。
「スラムが住み心地がいいと言う人間はクズ以下だ」、と。
その通りだと妙に納得してしまうほど説得力のある言葉だった。こんな所が住みやすいなど狂気の沙汰だ。
それでも彼にとってはこんな場所でも人間らしい生活を出来る所なのだ。食べるものがあって寝るところがあるなんて今まで考えられなかった。それほど酷い生き方をしてきたから。
彼は一箇所に留まって生活する事ができない。だからここもいつか出て行かねばならないのだろう。常に回りに気を張らせ、異常を感じたらすぐ出て行けるように荷物などは一切ない。店の主にも「突然いなくなるかもしれない」とは伝えてあるが、「人が突然いなくなるのなんかここじゃ当たり前だ」と返された。それもそうか、と思う。

そう、一箇所に留まる事はできない。
親しい人も作る事ができない。そもそも誰が信用できるのかわからないような状況で生きてきた。そういった意味でもここは都合がいい。
店のゴミを外に出すと、数人がわらわらと集まってきた。ゴミを漁りにきたのだろう。大人から子供まで年齢はさまざま。スラム内でさえ生活に差がある。
この地自体がゴミ溜めのような場所だ。道はゴミや人が転がっていて清潔感のカケラもなく、排ガスの影響で空は泥水のように汚い。星や月が見えたのは遠い昔の話で、明かりがなければ夜は深い暗闇だ。

ずっと暗闇の中で生きてきた。一度でいいから、「月」を見てみたい。そんな想いが、いつの頃からか生まれていた。

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