日常のぼやき

引きこもりレベル上昇中。そろそろ必殺技でも覚えそうです。

大禍時・千歳

2007-10-27 | 自作小説
真っ黒な世界にポツンと一人佇む。
何もない、聞こえない、におわない。ただひたすら「無」という空間に佇んでいる。

ここは優しい場所だ。千歳に干渉するものが何もない。
他の人間だったら寂しいとか怖いとか思うかもしれない。
しかし千歳にとっては優しい場所だ。
ここには何もない、誰もいない。

雨が好きと言ったら変だと言われた。
ご飯を食べるのが遅いと怒鳴られた。
顔を見るとイライラすると言われた。
車の音が嫌い。
犬の鳴き声が怖い。
色鮮やかな新築の家が嫌い。
全てモノトーンになればいいのに。

そう思っていた。

絵を描く授業で思いついたものを描いてみた。
紙一面真っ黒に染めた。黒い世界、闇だけの世界。
それを見た他の人間はいろいろな事を言い、
いろいろな目で見てきた。

誰もいなくなった夕暮れの教室で黒い絵をじっと見る。
西日が差し込み、もうすぐ日が暮れそうだ。

見ていた黒い絵に波紋が走った。
まるで黒い水に一滴の水が落ちたかのように
円を描いて広がっていく。

赤い夕日と黒い世界。
あの日から千歳は黒い世界にいる。



「雨が好きです」
大粒の雨は全てを覆い隠してくれる。
「ご飯はゆっくり食べるのは好きです」
世の中は早すぎる。ゆっくりでいい。
「お母さんには会いたくないです」
文句しか言われない。痛いのは嫌だ。
「車は嫌いです」
耳障りだ。
「犬の鳴き声も嫌いです」
何ていっているのかわからない。
「色は嫌いです」
目が痛い。
「黒は好きです」
それは自分に優しい色。


黒い世界に何もせずにいた。ただただ優しい時間を過ごしていく。
ふと、あの人の存在に気づく。
とても危ない、とても怖いと思うのにとても優しいと感じる。
君は敵なの、敵じゃないの。わからない。わからない。
怖い、優しい、怖い、温かい。
だから聞いてみた。確かめてみても、

「いい?」

確かめてみても、


「もういい?」


君は敵なのか見定めてみても?


「もういいかい?」



いいと言われて追いかけた。途中アレに邪魔されたけど。
「それで、彼は敵?」
「・・・どっちでもいい」
正直に答えるとクロハはちょっと微笑んだようだった。

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