日常のぼやき

引きこもりレベル上昇中。そろそろ必殺技でも覚えそうです。

カミカツギ その後2

2014-01-26 | 自作小説
しかし祇緒が気味の悪い虫のような物を咥えたまま、しかもソレは暴れまわっている光景というのはいつまでも見ていたくない。無論それの抵抗は祇緒本人にも当たっていて、髪がボサボサになってきている。
そしてとうとうそれは祇緒の頭から首に巻きつき締め上げようとする。祇緒は苦しむ様子も助けを求める様子もなく、先ほどと同じようにソレに噛みつき続けていた。

「やば・・・!」

慌ててそれをどうにかしようと近づこうとしたが、先に近くにいた柊がそれの尻尾を掴みかかる。しかし尻尾に触れた途端ビクリと手が震え手放してしまった。見れば手のひらが大きく裂け血が出ている。尻尾の部分の鱗が逆立っており、どうやら刃物のように鋭いようだ。
柊が小さく舌打ちをし、もう一度動こうした時だった。入り口から小さな影が勢い良く飛び込んできたかと思うと、一瞬でそれを掴み引っ張る。祇緒から引き剥がされ、暴れようとしたそれの潰れかかった頭部を踏みつけ動きを封じた。あっという間の出来事で胡蝶は呆然とするしかないが、ようやくそれを大人しくさせた正体がわかった。

「言芭」

ビチビチと暴れるそれを踏みつけながら、言芭は特に気持ち悪がるでもなくじっと見下ろしている。
突然、それがかん高い声で鳴いた。すると背中部分が裂け、管のような物が勢い良く飛び出してくる。
それを見た言芭は頭部を鷲づかみにし外へと飛び出した。少し体が自由になったそれは言芭に絡みつき首を締め上げようとしているようだった。・・・が。

ドォン、という物凄い衝撃と音が鳴り響き、神社全体が揺れた。外を見れば地面に巨大な穴が開いており、その中心に言芭が立っている。そしてその回りにはあの生き物が四方に飛び散り原型をとどめていなかった。胡蝶はようやく、言芭がアレを地面に叩きつけ押しつぶし為だと理解する。たった一匹叩き潰すにしては十分すぎる破壊力だ。そんな光景を目の当たりにして、改めて言芭の実力の凄まじさを痛感する。
破片となってもビクビクと動くそれらは、言芭が右手を軽く振ると炎に包まれやがて消滅した。
本殿へと戻った言芭の右手には緑色の粘着質な液体がついている。それを見て丹弧と胡蝶が一歩後ずさった。

「ちょっとこっち来ないでよ!気持ち悪い!」
「お前の着物で拭いて欲しいのか」

淡々とそういえば丹弧は大きく言芭と距離をとる。

「お前よくそんなのついてて平気だな!」
「お前こそ平気か、あんなの体の中に入れておいて」
「うわああああ!」

頭を抱えて座り込む胡蝶を無視して祇緒の前に来る。傍にいた柊がその粘着質な液に触れ・・・触れた瞬間丹弧の「ばっちい!」という悲鳴が聞こえたが無視をしながら・・・指で擦ってじっと見つめた。

「少し力を感じるな・・・式、いやこれも一つのモノか。ずいぶん拙い生き方だな」
「俺達とは違う生き方を選んだだけの話だろ」

柊と言芭はよくわからない会話を続ける。それを聞いていた胡蝶はなんだか仲間はずれにされているようで面白くない。

「結局さっきのなんなんだよ?」

やや口を尖らせて言った瞬間、ぞわりと寒気を感じ慌てて部屋の隅へと逃げる。この感覚は間違いない、いつもの嫌な気配・・・振り返るとそこにはいつの間にいたのか、篝が立っていた。

「要するに、それも僕たちと同じ存在ってことだよ。人ではない、神でもない中途半端なもの」

篝は今まで寝ていたらしく、白い寝間着を着ていた。祇緒の目を通して何が起きたかは把握しているらしい。腕を組みながら入り口に寄りかかっていた。

「で?一応聞こうか。どうしてこうなったのかな」

こう、とは外にできた巨大な大穴の事だろう。きれいに整備されていた参道と植木が辺りに飛び散り、それは悲惨な光景となっていた。
篝の言葉に一斉に胡蝶へと視線が集中する。事の始まりは胡蝶だったはずだ。

「猫が爆発した」
「ああそう。それで?」
「・・・突っ込んでもいいよ、篝」

すかさず丹弧が言う。しかし篝は小さく首を振ると、祇緒へと顔を向けた。

「祇緒はどう見た?」
「胡蝶が見つけた猫にさっきの虫が住んでたんだと思う。猫を宿主にこの神社に入って、次の棲家を探しに来たんじゃないかな。そこに丁度胡蝶が来たからまず胡蝶に入り込んだ。幼虫・・・卵かもしれない、力を最小限にした状態で入り込んで中でゆっくり育つつもりだった・・・たぶん」
「たんぽぽの綿毛というか、まるで寄生虫だね」

やれやれ、と肩をすくめる篝に胡蝶は不思議そうに聞いた。

「キセイチュウ?」
「違う生き物に住み着いて暮らす生き物、かなあ。敵に見つからないから一生安全に生きられるし、時には住み着いた宿主を食べちゃうのもいるんだよ」
「・・・」

先ほど自分の中にいた物を思い出し言葉を失う。面の下は青ざめているに違いない。それを見た篝はくすくすと笑みをこぼした。

「今度ネットでハリガネムシとかレウコクロリディウムとか調べてごらん」
「ネット・・・パソコンか。まだ使ったことないから楽しみだ」

外に出かけた者達が興奮気味に神社に持ち帰ったのがパソコンだった。地元住民の力を借り、ネットをつないだのがつい先日。皆娯楽の一つとして楽しんでいる。
胡蝶も使いたかったが、正直機械類はまったくわからないので手が出せずにいた。何せ神社には電化製品はなかったのだ。鳥居が開かれ、ようやく外と繋がった。神社に電線を引く工事が終了すると、皆機器として電化製品を購入してきた。
中でも必要としていたのは娯楽だ。気が遠くなる程長い間神社の敷地内に閉じこもって過ごしてきたので暇つぶしなどたかがしれている。まず自分達の好奇心をくすぐる物を持ち帰った結果、パソコンと携帯ゲーム機とテレビを買って来たのだ。ちなみに胡蝶はそういった物以前に、懐中電灯に感動していた程度のレベルなのでパソコンは高嶺の花だった。
何が見られるんだろうとわくわくしているようだが、それを見た柊がため息をついた。

「止めておけ。篝の言う事だぞ、絶対ろくでもないのが出るに決まってる」
「え?あ、そうか」

篝からいつもいいように丸め込まれ遊ばれているというのに、胡蝶はいまだに篝の言動を把握しきれていない。そこが子供故の純粋さなのだが。

「えーっと話を戻すと、胡蝶に寄生したアレを主様が気づいて引っ張り出したって事?」

首をかしげて言う丹弧の言葉に祇緒は頷く。

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