日常のぼやき

引きこもりレベル上昇中。そろそろ必殺技でも覚えそうです。

カミカツギの夜T-8

2014-01-14 | 自作小説
神の使い、地元住民を除く全ての人間たちの魂は祇緒に喰われ消滅する。肉体が砂のように融解し、浴衣や荷物がドサドサとその場に落ちた。
それを見ていた神の使い達は笑い続ける。自分達の主が戻り、十分な供物は捧げられた。神輿を担いでいた者達が再び歩き始める。向かった先は鳥居、神社の入り口だ。

この神社はずっと閉ざされていた。神が不在となり、その力により生まれた神の使い達はたちまち衰弱し人間と同じような能力しかなくなってしまった。これ以上の衰退をしないよう、鳥居を閉ざし守護者を置く事で神社内に神の残した力の残りを閉じ込めた。それは結果として神の使い達を神社内に閉じ込める事となったが、そのおかげで皆安定した力を保つ事ができた。
しかしずっと願っていた。神が戻り自分達の力が完全に戻ってまた自由に外へ出る事を。一年に一度、祭りの日しか食事ができない耐える日々が終わる事を。それが今日すべて開放される。
鳥居の前に行くと碑乃と銅那がいた。二人とも面を外し恍惚とした表情で微笑んでいる。
神輿が下ろされ、柊の手を取って地に降りる。そして、鳥居の前にいた二人に声をかけた。

「開けろ」

その言葉に二人は微笑み、両脇に避けて道をあけた。すると二人の間を通るようにふわりと風が頬をかすめる。今、中と外が繋がった。
そして、祇緒が皆を振り返る。皆飢えた獣のような様子で祇緒の言葉を待っている。

「いいよ、好きにしておいで」

その言葉に全員一斉に飛び出した。碑乃と銅那はかん高い声をあげその場に崩れ落ちる。
嵐のように飛び出していった者達を見送り、祇緒は鳥居に背を向ける。倒れた二人は放置した。
見れば外に行かなかった者もいた。柊、篝、丹弧、胡蝶、そして言芭。柊たちは全員面をつけたままだ。

「乗るか?」

柊が神輿を見るが、祇緒は首を振る。その口元にはわずかに苦笑している。

「それ、誰が担ぐの」
「まあ確かに、この面子じゃな・・・」

神を担げるのは神の使いのみ。地元住民を除けば今この場にいる者しか触れられない。

「私一人でも担げるけど?」
「俺だってそれくらいできるぞ!」

丹弧と胡蝶が自信満々に言うが、祇緒は小さく首を振った。信じていないわけではない、おそらく本当にできるのだろう。ただ、その必要がないだけだ。

「いい、歩いて戻る。そういえば、祭りもじっくり見てないし」

その言葉に住民達は慌てて屋台へと戻った。祭りを楽しみたいという主の望みを叶えなければと必死だ。

「皆はいいの、外行かなくて」

ふと問えば、全員気にした様子もない。外へ出る事にあまり興味がなさそうだった。丹弧に至っては腕を組んでふん、と息をつく。

「その鳥居潜るの嫌」
「ああ、うん、そうだね」

鳥居は「こちら」と「あちら」を結ぶ門。ここからでなければ出入りができない。しかしそんな事をすればあの二人を喜ばせるだけだ。何のことなのかわからないらしい胡蝶は首を傾げる。

「さて、じゃあ少し見物していこうか。来年からはカミカツギもなくなるし、普通の祭りを楽しもう」

篝の言葉に全員が動く。胡蝶はそわそわと辺りを見渡しながら歩いていた。どうやら祭りを楽しむのは初めてらしい。丹弧もどこか浮かれているように見える。綺麗に飾られた髪飾りや根付などを見ているようだ。



提灯に明かりが燈り、やや静かだが再び辺りに活気が戻る。祭囃子が流れ、何事もなかったかのように賑わう。

「なあ、祭りって今年で終わるのか?」

篝に問う胡蝶は綿飴やリンゴ飴を持ち、首からは薄荷をさげている。あちこちの出店を回っているらしくいかにも祭りを楽しんでいるといった姿だ。

「いや、祭り自体は来年以降もやるよ。住民達の楽しみの一つだからね。今ままでやってた演目がなくなるだけ」
「やった!」

嬉しそうにそう言うと、別の屋台へと走って行く。言芭はそんな胡蝶の後について行った。まるで弟の面倒を見る兄のようだ。見た目の年齢からは全くの逆なのだが。

「あれどうするんだろう」

胡蝶が手に持つ食べ物の数々。神の使いは人間と同じ食料は食べないはずだ。

「飾っとくんだってさ。珍しいのとかキレイな物好きみたい」

やれやれといった様子で丹弧が肩を竦める。綿飴やリンゴ飴を飾っているのを想像すると何だかおかしい。しかし、確かに食べ物ではなく装飾品と考えればキレイかもしれない。

「さすがに食べ物はやめて欲しいんだけどねー。前は団子に蟻がたかって落ち込んでたし」
「何事も学ばないとわからないよ。それにああいうちょっとお馬鹿なところが可愛いんじゃないか」

くすくすと笑う篝に丹弧は「まったく・・・」と呟く。

「胡蝶はまだ子供・・・というより赤ちゃんじゃない。ちゃんと面倒見てよ、いっつも言芭に押し付けて」
「こういうのは言芭のが適任なんだよ。丹弧、君もね。ほら、アレ止めないと絶対持って帰るよ?」

篝が指をさした先には西瓜を食い入るように見つめる胡蝶がいた。

「げっ!やめてよ腐るから!っていうか言芭どこ行ったの、もー!」

慌てて丹弧が走って行く。胡蝶の襟首を掴むとずるずると引きずり始め、胡蝶が騒ぎ出した。その姿はまるっきりデパートの玩具売り場で母親に引きずられる幼い子供だ。

「あはは、やっぱり仲良いなあ。じゃあ僕らも何か貰おうか。柊、何か選んであげるよ」
「やめろ」

楽しそうに笑う篝に柊は冷たく言い放つと、そのまますたすたと先に行ってしまった。その後を篝が追う。今までの二人のやり取りを見る限りでは、間違いなく柊が嫌がるものを与えるつもりな気がする。
祇緒はこれと言って楽しいという感情はないが、つまらないというわけでもない。辺りを見回せば、楽しそうにする人達や鮮やかな売り物が眼に入った。

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