若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

税金支出を増やす名誉市民 ~ 他人の金でパトロン気取り2 ~

2016年12月29日 | 政治
タダより高いものはない ~ 他人の金でパトロン気取り ~ - 若年寄の遺言

の続編。
今年の最後に、私にとって最大級の馬鹿馬鹿しいニュースが飛び込んできた。

増田美術館:公設へ 館長が行橋市に土地・建物を寄贈 /福岡 - 毎日新聞
======【引用ここから】======
 行橋市は26日、同市行事5にある増田美術館の館長、増田博さん(93)=同市神田町=が、同美術館の土地・建物を市に寄贈したことを明らかにした。増田さんは約60年間にわたって収集してきた横山大観や東山魁夷ら著名作家による日本画など194点(購入時総額約4億4600万円)を7月に市に寄贈し、22日の定例市議会最終日に同市の名誉市民第1号に決まっている。【荒木俊雄】
 増田さんは30歳ぐらいのころから美術品の収集を始め、建設会社経営の傍ら、2005年に増田美術館を開設。近代日本画では九州有数の展示内容・保管数を誇り、同美術館を管理する公益財団法人「増田美術・武道振興協会」(理事長=増田さん)所有の約150点を除く個人分を7月に市に寄贈していた。
 今回の寄贈は法人所有部分を除く、三つある展示室のうちの一つと事務室を含む鉄筋コンクリート造2階建て(延床面積約360平方メートル)と、駐車場を除く敷地約500平方メートル。関係者によると、同物件の今年の固定資産税評価額は建物が2850万円、土地が1370万円とされる。  増田さんと親交のある松本英樹副市長によると、土地・建物の寄贈を思い付いたのは美術品を寄贈したころから。「市民に気軽に美術品に接する機会を増やしてほしい」という気持ちからだという。
 増田美術館の運営は当面現状のままで、松本副市長は「大変ありがたい贈り物。早ければ来年3月議会に公設施設として使用するための条例案を提案したい」と話している。 〔京築版〕

======【引用ここまで】======

このニュースの登場人物に対し、「タヒねっ」をはじめ、思いつく限りの悪罵を投げかけたい。
一つ一つ見ていこう。

======【引用ここから】======
 行橋市は26日、同市行事5にある増田美術館の館長、増田博さん(93)=同市神田町=が、同美術館の土地・建物を市に寄贈したことを明らかにした。
~~~~(中略)~~~~
 増田美術館の運営は当面現状のままで、松本副市長は「大変ありがたい贈り物。早ければ来年3月議会に公設施設として使用するための条例案を提案したい」と話している。
======【引用ここまで】======

地方消滅、人口減少社会、インフラ老朽化など、地方公共団体は様々な問題を抱えている。右肩上がりの高度経済成長、人口増加時代に作った施設やインフラを全て現状のまま維持することはできない。地方公共団体は、今後の人口推移や税収見込み、維持管理経費の発生時期を勘案しながら、残す施設、解体する施設の選別や、残す施設の改修のタイミングに頭を抱えていることだろう。公営施設を指定管理にしたり、民間へ売却するという選択肢も考えなければならない。

そんな中、この市は、わざわざ民営施設を譲り受けて公共施設を増やすというのだ。時代の流れに逆行する狂気の沙汰である。

公設施設とすることで、市は既存のインフラや公共施設の維持管理費に加えて、この美術館の維持管理費をも負担しなければならなくなる。
美術館の光熱水費、空調やら放送設備やら自動ドア等の機器類の保守、美術品の保険、清掃業務委託、雨漏りや外壁の修繕、そして施設に駐在する職員の人件費etc・・・いったい幾らかかることやら。

しかも、

======【引用ここから】======
 増田さんは30歳ぐらいのころから美術品の収集を始め、建設会社経営の傍ら、2005年に増田美術館を開設。近代日本画では九州有数の展示内容・保管数を誇り、同美術館を管理する公益財団法人「増田美術・武道振興協会」(理事長=増田さん)所有の約150点を除く個人分を7月に市に寄贈していた。
 今回の寄贈は法人所有部分を除く、三つある展示室のうちの一つと事務室を含む鉄筋コンクリート造2階建て(延床面積約360平方メートル)と、駐車場を除く敷地約500平方メートル。

======【引用ここまで】======

お分かりいただけるだろうか?
記事によると、この建物は

「増田氏個人名義(展示室一つ+事務室)」
「増田美術・武道振興協会名義(理事長=増田氏)(展示室二つ+駐車場)」

で構成されているのだが、これを

「市名義(展示室一つ+事務室)」
「増田美術・武道振興協会名義(理事長=増田氏)(展示室二つ+駐車場)」

にするというのだ。

従来は理事長名義の部分と法人名義の部分だったので、実質的には建物全体を同一人が所有していた。これであれば一括して管理運営できる。ところが今後は、市と法人の名義の部分が同一建物内で混在することになる。管理運営が複雑になるのは間違いない。
例えば、展示室と展示室の間の壁の補修はどちらがするのか。利用方法によっては、建物の維持管理経費に加え、法人に対し二つの展示室や駐車場の賃借料まで払うのか。また、建物全体の修繕が必要となった場合に、その費用分担はどうなるのか。

======【引用ここから】======
 増田さんと親交のある松本英樹副市長によると、土地・建物の寄贈を思い付いたのは美術品を寄贈したころから。「市民に気軽に美術品に接する機会を増やしてほしい」という気持ちからだという。
======【引用ここまで】======

などと言っているが、個人名義の部分を法人に譲渡せず市に寄付し、法人名義のものはそのまま残すあたり「高齢の理事長の相続税対策なんじゃないの?」という下衆の勘繰りをしたくなる。通常、こんな込み入った寄付を役所は受け付けないだろうが、何せ、市の副市長が「増田さんと親交のある」人なのだ。副市長が知恵を貸し、市職員に指示して便宜を図った・・・と疑われても無理はない。実際に、市に寄付した場合と法人に譲渡した場合とで、税金に幾らの差が出るか計算してみたいところだ。

増田氏と親交のある松本英樹副市長が、死ぬまで法人と交渉を担当し、複雑な権利関係を整理し続けるとともに、自腹で維持管理経費を払うなら、市にとってありがたい贈り物と評価できるかもしれない。
しかし、維持管理経費は役所持ち=住民負担。当の本人は、副市長の任期を終えれば無関係で、残された市職員が法人と交渉しなければならない。住民が美術品に接する機会は、民営であろうと公営であろうと変わらない。市に美術品展示のノウハウが無いのだから、美術品展示の質は落ちるだろう。

こんな無責任な話があるか。

======【引用ここから】======
増田さんは約60年間にわたって収集してきた横山大観や東山魁夷ら著名作家による日本画など194点(購入時総額約4億4600万円)を7月に市に寄贈し、22日の定例市議会最終日に同市の名誉市民第1号に決まっている。
======【引用ここまで】======

「市民に気軽に美術品に接する機会を増やしてほしい」という建前のもと、節税対策に成功。美術品や建物の維持管理経費を住民に押し付けた。おまけに、名誉市民第1号の称号まで得たという。

死ぬまで民営の美術館長だったなら、「民間の立場から、芸術作品に触れる機会を市民へ提供してきた」ということで表彰しても構わないが、現状では「税金負担を増やした公務員の共犯者」でしかない。

これで、副市長が辞任後にこの法人の理事や美術館の館長などに就任したり、副市長の身内がこの法人から利益を得ていたりしようものなら、住民や職員はこの二匹の狐に一杯食わされたということになる。




~~ 追記(2017年2月) ~~

この名誉市民第1号については、市議会が全員一致で可決している。甘いというか、人がいいというか、節穴というか。

~~ 追記(2021年2月) ~~
訃報:増田博さん 97歳(ますだ・ひろし=増田美術・武道振興協会理事長 /福岡 | 毎日新聞
======【引用ここから】======
増田博さん 97歳(ますだ・ひろし=増田美術・武道振興協会理事長)15日、死去。死因は非公表。葬儀は17日午後1時、行橋市南大橋4の2の24の行橋斎場。自宅は行橋市神田町6の24。喪主は養子の林剣司郎(はやし・けんじろう)さん。
======【引用ここまで】======
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