ホッケの岩下くん。

逃げる僕らに、追い駆ける岩下くん。

記憶では、黒いズボンで、白いシャツだった。
中学1年生の頃だったんだろう。

岩下くんの右あごに、小豆(あずき)大、小豆がわからないか、
小粒納豆大の黒子(ほくろ)があった。

その黒子から、毛が2cmほど曲線を描いて生(は)えていた。
僕らは、その黒子から生える毛を“”ホッケ“”と呼んで、からかっていた。

岩下くんは、中学になって、東京から引っ越して来ていた。
僕らの中学校は、ふたつの小学校をあわせて、成り立っていた。

岩下くんにとっても、知らない同士が交わる時だったから、
時期としては、良かったと思う。
それでも、東京から地方の街にやって来た感はあったはずである。

そういうことを、解ったうえで、
僕らは、岩下くんを、ホッケとからかっていた訳じゃない。

岩下くんは、頭の良い子だった。
成績が、飛び抜けて良い訳ではない。

追い駆ける度合いも、追いついて、捕まえるまでいかない。
怒って追いかける振りをして、僕らを喜ばせていた、
といった方が、正しいかもしれない。

成績を、1番にしない、追いかける振りをする、
ホッケの毛を抜かない。

この辺りに、岩下くんの頭の良さがあったんだろう。

中学3年になる時に、
岩下くんは、お父さんの仕事の都合で、転校して行った。

岩下くんの黒子からの毛は、
転校先でも、友だち造りに、活躍しただろうか。


なぜか、そういう類(たぐい)の毛は、
ある一定に伸びたら、不思議と、成長が止まるんだろう、か。

岩下くんは、きっと、今頃、世界で、
ホッケと共に、活躍しているんだろう。
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