から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

ノマドランド 【感想】

2021-04-04 09:35:29 | 映画


今年のオスカーの大本命を見る。
「ホームレス」ではなく「ハウスレス」。自らの意思で家を持たない暮らしを選んだという自尊が込められているが、本作の主人公の場合、実際は生活困窮ゆえの選択だろう。「アベンジャーズ」が華々しく公開されていたなか、リーマンショックによって、こうした生活者の人たちが多く生まれ出ていた事実を知る。1年半前、自身がロサンゼルスのコダックシアターに行ったとき、賑やかな観光地から一歩道を外れるとホームレスのテントが並んでいた風景を思い出す。

社会派映画の入り口だが、本作はノマドな人たちの精神性にフォーカスする。ノマド初心者の主人公と観客の視点が重なり、新しい価値観に触れる。彼らに「別れ」はなく、「再会」のために旅を続ける。その相手が故人であってもだ。最愛の夫を亡くした主人公の孤独をノマドという生き方が埋めていく。そして、アメリカの雄大の自然が主人公の旅路の伴侶となる。その美しさに目を奪われ、アメリカという国の複雑さと共に、懐の深さを見る。撮影監督「ゴッズ・オウン・カントリー」と同じなんだな。

あくまで彼らの「生き方」だ。しかし、その生活の過酷さも見逃さない。主人公をはじめ、多くの人たちがシニアであり、生活を身軽にしたところで身体は身軽にはならない。風呂に入れず、排せつも車内。短期労働で食いつなぎ、何かトラブルがあっても自力で解決。本作で透けるノマドの人たちへの敬意と共感みたいなものに、豊かな生活に甘んじている自分は距離を感じてしまった。

主要キャラ以外、実在の個人を起用するなど、フィクションとドキュメンタリーの間を行く本作だが、物語としてエンタメ度があまりに低い点も自分の好みではない。つまらなくはないが、面白くもない。「家は心の中にある」、自分もいつか理解する日が来るのかな。

【65点】
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