から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

女神のみえざる手 【感想】

2018-04-15 08:00:00 | 映画


新作DVDレンタルにて。邦題の付け方にセンスあり。
凄腕女性ロビイストの活躍を描く。「ロビイスト」という仕事の実態を知ったのは「ハウス・オブ・カード」で今やオスカー俳優となったマハーシャラ・アリが演じていたキャラだ。企業や団体のために、政治活動に影響を及ぼす活動家である。表裏に渡り政治家たちを動かすコネクションとスキルを持っている。主人公は「勝利」によってその業界で名を馳せるロビイスト。弁護士事務所同様、ロビイスト事務所があって、企業や団体は大枚をはたいて案件を依頼し、それだけでビッグビジネスになっているから驚きだ。日本ではほとんど馴染みのないロビー活動のお仕事ムービーとして見ても面白い。物語は「銃規制」法案を巡るロビイスト活動が描かれる。この間も銃乱射事件があったばかりでとてもタイムリーな話だ。銃団体はあくまで「銃を銃によって守る」と信じて疑わない。もはや、麻薬問題と並ぶアメリカの病気といえ、「銃と女性を仲良しにしたい!」という銃団体会長の迷言を「馬鹿馬鹿しい」と笑って一蹴する主人公が痛快。主人公が「銃規制却下」側から「銃規制強化」側へと移った当初の理由は、彼女の銃に対する信念よりも、負け知らずで積み上げたキャリアを継続するため、勝率にこだわったからだろう。勝つためなら手段を選ばない主人公の非情さが、こちらの予想を超えて描かれる。利用できるものは何でも利用する彼女のやり方は多くの敵を作り、多くの人を傷つける。その代償と向き合っていくなかで彼女の弱さが初めて露呈する。
銃規制を巡るロビー活動から見えるのは現代アメリカの実像であり、社会派ドラマとして色が強い。政治活動とは権力を保持することなのか。まさかのラストは、銃規制の必要性を自覚しながらも、決断することのできない政治家たちに対して痛烈なメッセージとして響く。同時に本作は特異な女性キャラクターの生き様を描いたドラマともいえる。原題のタイトルは主人公の名前の「ミス・スローン」。バッチリメイクをずっと落とさず、濃いルージューの口紅、いつでもスタイリッシュなスーツを見にまとい、戦闘態勢を崩さない。眠らず、仕事にしか興味をもたない。精神のバランスを保つために錠剤を服用し、金で買った男で夜の暖をとる。誰を相手にしてもひるむことなく明け透けな言葉をよどみなく発する。演じるジェシカ・チャスティンがカッコイイの何の。「姐さん!」と思わず呼びたくなる。彼女のヒロイズムにおぼれることなく、けじめをつけた脚本が良い。最後のカットまでドライだった。
【70点】