から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

パッセンジャー 【感想】

2017-03-30 08:00:00 | 映画


「イミテーション・ゲーム」に続くモルテン・ティルドゥムの新作。北欧映画時代から続く、成功キャリアを駆け上がっていた最中、水を差すように酷評の的になってしまった本作。あまり期待してなかったが、そこまで悪くなかった。ツッコミどころは多く、話の進行を邪魔するけれど、主演2人のスターパワーと究極のエゴイズムに関心が持続した。劇場鑑賞ならではの、宇宙疑似体験も存分に楽しむ。

人間の冬眠技術によって120年もかかる惑星渡航が実現する未来。その渡航中である30年の時点で、機械トラブルにより冬眠から目覚めてしまった男を描く。宇宙船に乗りこんでいる乗客は5000人、クルーは約240人。人間の寿命を80年とすれば、主人公が生きているうちに惑星に渡航することは叶わない。主人公の男の悲劇は、残り90年の時点で目が覚めてしまったことと、目の前の乗客たちは冬眠したままで、自分1人だけが目覚めてしまったことだ。

劇中、ずっと想いを巡らすのは「自分だったらどうする?」。

一度、目覚めてしまったら、この宇宙船にいる限り、2度と冬眠することはできない設定だ。「解決策は必ずあるはず」と、主人公も、見ているこっちも期待するがその糸口がまったく見つからない。主人公は宇宙船のなかで死を待つしかないようだ。そんな希望の見えない状況のなかで、次に襲いかかってくるのが孤独だ。

1人ぼっちキャラは、同じ宇宙映画でも「ゼログラ」や「オデッセイ」でも登場するが、彼らは孤独よりも希望を追うことに夢中になっていた。本作の主人公は、宇宙船のなかで衣食住が揃っているのがポイント。生きるのには不自由のない状況だけに、他者と関われない孤独の感情が高まっていく。その一方で、目の前には寝ているだけの「4999人」がいるため、その問題を解消することは難しくない。主人公は我慢できなかった。主人公の決断に、わかっていたけど色めき立ってしまう。

昔、学生だった頃、こんな妄想をした。片思いの人との恋愛を成就するための方法として、誰もいない無人島に2人きりになるのが有効ではないかと。。。本作で描かれたのはまさにその状況であった。そして、妄想通りの展開になる。

とても幼稚な展開であり、主人公の身勝手なエゴが目立つ。しかし「自分だったらどうするか」と思うと、1年も孤独を感じていたら同じ選択をしたかもしれない。問題は主人公がその秘密を隠すのにヘマをしたことだ。ここは、映画を面白く見せるための味付けのような気がするが、本作のツッコミどころのなかでも一番大きいといえる。

エゴに奔った自己中なキャラクターは、それを演じたクリス・プラットのチャームに救われている。雑にいえば、クリス・プラットだから赦される映画でもあり、本作の成功ポイントであり失敗ポイントだ。今や堂々と大作映画の主演を張れるクリス・プラットだが、彼を初めて見た「ウォンテッド」から、まさかここまでのスターダムにのし上がるとは誰が予想しただろう。ジェームズ・マカヴォイに顔面をキーボードでブン殴れらて、歯が飛び散ってたのに。

明らかにクリス・プラットが主演なのだが、キャスト紹介のクレジットは、ジェニファー・ローレンスが先だった。結構な違和感。オスカー印ってそんなに大きいものなのかな。クリス・プラットはそれを見て何も文句を言わなかったのかな?などと勝手な想像をする。ジェニファー・ローレンスは確かに巧いのだけれど、最近ずっと続く「強い女性キャラ」にいささか飽きてきた。本作も同様。

宇宙映画としての醍醐味は一定水準をクリア。吸い込まれそうな宇宙空間の再現に、宇宙船内の精緻なセットと、ユニークなガジェットの数々。そしてお約束の無重力体験も盛りだくさんだ。近い将来、訪れるかもしれない宇宙事故のケーススタディとしても、実は参考になったりして。宇宙には何があるかわからないのだから、どんなに技術が発達したとしても、機械任せではリスキーだなと真面目に思った。

【65点】
コメント
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