らいちゃんの家庭菜園日記

家庭菜園、家庭果樹栽培及び雑学日記

格言「背美の子持ちは夢にも見るな」

2023-01-18 | 雑学

1月9日早朝、大阪湾の淀川河口付近に鯨が迷い込んできました。
SNS上で「よどちゃん」と呼ばれて親しまれていたのですが、11日の夕方からほとんど動かなくなり、13日に大阪市の調査ですでに死んでいることがわかりました。

「マッコウクジラ」
この鯨はマッコウクジラで、体長は凡そ8㍍の子供の鯨のようです。
マッコウクジラはクジラの中でも最も大きな種類であり、雄の標準的な体長は16~18㍍、体重は約50トンあります。
メスは体長、体重共にオスより一回り小さいですが、それでも、体長は12~14㍍、体重は25トンあるそうです。
大阪市はこの子鯨の死骸を紀伊水道に沈める方針を固め、18日から処理作業を始めるようです。

・セミクジラです


「セミクジラ」
ところで、鯨には大小さまざまな種類がありますが、この鯨と同じような大きさの鯨にセミクジラがあります。
セミクジラも体長は13~18㍍、体重は約60 ~ 80トンある大型の鯨です。
頭部が大きくて全長の4分の1~3分の1ほどを占めており、口は大きく湾曲し、最大2㍍を超す長大なクジラヒゲが生えています。
この鯨は皮下に厚い脂肪層を有するために鯨油採取の目的から 11世紀頃より捕獲の対象となり、19世紀には全世界の温暖な海洋において捕鯨船で多獲されました。
日本でも江戸時代に、南は三重県から高知県まで、日本海側では山口県から長崎県にかけて、網取式捕鯨で捕獲されていましたが、現存数が激減したため、 1936年に全面捕獲禁止となり、現在では絶滅危惧種に指定されています。

「名前の由来」
セミクジラの背中には背びれがなく、浮上した時に見せる背中が美しい小山のように見えることから「背美(セミ)」、或いは長時間にわたって背部を海面上に出して遊泳し続け、その背中の水が乾き上がる「背乾(せび)」が、名前の由来となっています。

「セミの子持ちは夢にも見るな」
鯨の町、和歌山県太地町にはセミクジラについては次のような言い伝えがあります。
   格言・・・「セミの子持ちは夢にも見るな」
この意味は、「子持ちのセミクジラは子供を守るため、昔から気性が荒々しく危険であり、捕鯨を 行わない」という戒めの格言です。
この背景に次のような遭難事故がありました。

・「大背美流れ」太地町観光協会HPより


「捕鯨遭難事故(大背美流れ)」
太地町観光協会のHPに「大背美流れ(おおせみながれ)」という捕鯨遭難事故の説明があります。
それによると、明治11年12月24日早朝、太地の鯨方は小雨まじりで、強風による荒れ模様の海へ19隻の船団を組み、総勢184名で出漁しました。
この年は近年にない不漁だったことから無理な出漁をさせたのです。

沖に出て準備を整え待っている船団に未だ嘗て見たこともない大きな子連れの背美(せみ)鯨を発見したとの合図がありました。
このような巨鯨は当時の技術では仕留めるのは難しく、子持ち鯨は気性が荒く危険であることから、この鯨を捕るか否かについて激論しました。
その結果、「直ちに捕獲にかかるべし。」と断が下されました。
急いで燈明崎の前に網が張られました。
鯨は湾内の方に向ったため更に張り替えたところ母鯨がわずかに網にかかり、驚いた鯨はすさまじい勢いで暴れた後、東南の沖へと逃げ出しました。
船団も懸命に追い、その巨鯨との激闘は夜を徹して続けられ、翌朝10時についに仕留めることができたのです。

仕留めた時には船団は遥か沖に出ており、その上、食料と水は絶えていました。
精魂使い果たした男達は再び必死の力をふりしぼって獲物を持双船に繋ぎ帰路に着いたのですが、見上げるばかりの巨鯨のため力漕しても船は進むどころか逆に潮流に引かれて沖に向い、遂には黒潮の流れに入ってしまい、熊野の山は遠くなるばかりでした。

お互いに声を出して励まし合い渾身の力を込めて漕ぎ戻そうとしましたが、飢餓に陥った体には既にその力を失っていました。
このままでは助かる見込はなくなることから、一同緊急協議の結果、命懸けで仕留めた獲物を切り離すことにしたのです。
そして、それぞれの船を繋ぎ固め、再び必死の思いで漕ぎ帰ろうとしましたが、船は強風怒涛に巻き込まれ、遂に、漂う木の葉のように海中に沈みました。

記録によると、出港して7日目に九死に一生を得て伊豆七島の神津島に流れ着いた8名を含め、生存者はわずか13名、餓死者12名、行方不明89名という未曾有の大惨事となったのです。

鯨の町、太地町に残る格言「セミの子持ちは夢にも見るな」は、この悲惨な事故が教訓となっているようです。

コメント (1)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする