臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

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今週の朝日歌壇から(10月10日掲載・其のⅠ・桃太郎が山車におさまるまでを見つ)

2011年10月18日 | 今週の朝日歌壇から
[佐佐木幸綱選]

○  桃太郎が山車におさまるまでを見つえのころ草のなびく空地に  (久慈市) 三船武子

 「えのころ草のなびく空地に」という下句の表現に因って、題材が津波でやられた被災地の人々が行っている秋祭りの準備であることが解る。
 〔返〕  頼光も足柄山も流されて今年の山車は桃太郎のみ   鳥羽省三


○  せっかくの青空入る隙間なし望遠レンズの中で走る子  (水戸市) 川上若奈

 “何が何でも可愛い我が子だけを写したい”、という親心があればこそ、被写体となる「子」は画面いっぱいに走り回り、「せっかくの青空」を撮影画面に入れる余地を与えないのである。
 でも、元気で素直なお子様というものは、大概そうしたものです。
 青空の下にピースサインを出して笑顔で画面に納まっているような優等生もおられましょうが、そんな子ばかりが可愛い子だとは言い切れないのである。
 〔返〕  よそ様の目をもて見れば悪餓鬼も親からみれば可愛い我が子   鳥羽省三


○  福島に住むこと忘れ穏やかな日なかとなして障子貼る病妻(つま)  (本宮市) 廣川秋男

 「今日の日和が『穏やか』であるかどうかの基準は、被災者としての我が心中に在り」といったご心境でありましょうが、ご心中お察し致します。
 表現上の問題点について申せば、「日中となして」とせずに「日なかとなして」と表記した点や「病妻」を「つま」と読ませた点などは評価が二分されましょう。
 〔返〕  久々の秋晴れなれば病む妻も障子を貼れる被災地の午後   鳥羽省三  


○  軽トラの荷台の籾の重ければ喘ぎ喘ぎて農道行けり  (村上市) 北里牛蔵

 長距離ドライブをして居て、自分の乗った車が国道を外れて地方道に入るや否や、其処は「軽トラ」の天国のようなものである。
 特に、山形や秋田に於いては、「軽トラ」は一家に一台の生活必需品のようなものである。
 それから、対向車が「軽トラ」だからとて侮ってはいけません。
 「軽トラ」の運転者の中には、「道路交通法など糞食らえ!」といった無謀運転車が多いからである。
 彼らの中には、“無免許運転歴半世紀”といった古強者さえいるのである。
 〔返〕  軽トラの積載量は三百キロあんまり積むとエンスト起こす   鳥羽省三
      軽トラの積載量は三百キロそれ以上積むとサツの目怖い


○  ま、いいかが口癖だった麻痺の友せつなかったね言った数だけ  (さいたま市) 伊藤麦緒

 手足が不自由な事を理由に馬鹿にされたり差別されたりしても、その都度「ま、いいか」と呟いて、我慢して過ごして来たのでありましょうか?
 〔返〕  クラクションを鳴らされても「ま、いいか」と呟きながら我慢の歩行   鳥羽省三


○  満月の光の中にわたくしの影が土塀にくの字に映る  (名古屋市) 松尾利男

 「何だか、忍者の蜘蛛の陣十郎になったような気分だ!」などと呟きながら、満月に照らされた夜道をゆっくりゆっくり彼女と一緒に歩いたのでありましょうか?
 〔返〕  時折りはあらぬ思いの陣十郎その気になれば彼女もその気   鳥羽省三
      満月が胸の中までお見通し調子に乗ってはならぬ陣十郎


○  ペットにも王子様にもなりながら大きくなってゆくわが息子  (和泉市) 星田美紀

 まるで、“某経済大国の一人っ子政策の申し子”みたいな「息子」さんですね。
 お名前は「大輝」くんですか?
 それとも「拓翔」くんですか?
 〔返〕  娘なら奏音(かのん)と名付けるはずだった当てが外れて拓翔(たくと)になった   鳥羽省三


○  少しずつ母のどこかがこはれゆく歌壇俳壇ひらかずなりぬ  (長野市) 縣 展子

 “朝日歌壇”や“朝日俳壇”は思わぬ所で大きな役割りを果たしていたのである。
 認知症の進行に伴って、「歌壇俳壇」の頁を開かなくなったのでありましょうか?

 〔返〕  縣とふ文字に寄せたる思ひ述ぶ賀茂真淵の旧居・縣居   鳥羽省三
 国学者・賀茂真淵翁の旧居「縣居」の跡は、東京都中央区日本橋浜町に在ります。
 大正七年四月に東京都(当時は東京市か?)指定の重要文化財となり、現在も旧居の近くの道路に面して、「あがた居の茅生の露原かきわけて月見に来つる都人かも」という真淵翁作の和歌を刻した記念碑が建っております。


○  勉強のねえちゃん飛んで来ないよう静かに静かにぎょうざを包む  (富山市) 松田わこ

 小学五年生にして、かくまでの心憎い御心配り。
 さぞかし気疲れなさって居られることでありましょう。
 餃子は、週一回、ご近所のスーパーで特売販売している、“味の素の冷凍餃子”や“大阪の王将餃子”でも十分に賞味に耐えられますよ。
 お勉強の時間を割いて、敢えて手作りするには及びません。
 それにしても、「ねえちゃん」も「ねえちゃん」である。
 妹のわこちゃんが「ぎょうざを包む」お手伝いをしていると、お勉強を止めて「飛んで」来ると言うんですからね。
 妹さんが「静かに静かにぎょうざを包む」訳ですよ。
 〔返〕  お勉強嫌いなのかな梨子さんは? 短歌だけでは食べられません   鳥羽省三


○  奈良漬けの守口大根もち上げてあらあら長いと背伸びする母  (四街道市) 佐相倫子

 「守口大根」の「奈良漬け」は、長いと言うよりは高過ぎます。
 いくら長くても1メートル足らずでありましょう。
 だとすると、10センチ当たり100円以上に付くに違いありません。
 一切れ100円もする「奈良漬け」を食べるような経済的な余裕は我が家にはありません。
 〔返〕  奈良漬の守口大根買う前にあらあら安いと見栄張るママよ   鳥羽省三
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