どこの出身だ?と
私より3つ歳の若旦那が聞く。
東京は下町生まれで
父は伝統工芸を生業にする江知左衛門です、と
私は小さな声で返す。
なぜここに?
というもんだから
吉原の女子たちとは身分が違うのですが
社会勉強のつもりが
人間の性や業をみる毎日に
ときどき戸惑っておりやす、と胸のうちを明かした。
次の日、若旦那の虎之助が迎えにきてくれた。
おとっさんも一緒だ。
私が客を取るほかの女子とは身分が違ったが
そう簡単にここから出られるわけでもなかった。
虎之助の匂いは懐かしかった。
虎之助の声も温もりも知っていたものだった。
私より3つ歳の若旦那が聞く。
東京は下町生まれで
父は伝統工芸を生業にする江知左衛門です、と
私は小さな声で返す。
なぜここに?
というもんだから
吉原の女子たちとは身分が違うのですが
社会勉強のつもりが
人間の性や業をみる毎日に
ときどき戸惑っておりやす、と胸のうちを明かした。
次の日、若旦那の虎之助が迎えにきてくれた。
おとっさんも一緒だ。
私が客を取るほかの女子とは身分が違ったが
そう簡単にここから出られるわけでもなかった。
虎之助の匂いは懐かしかった。
虎之助の声も温もりも知っていたものだった。