なぜこう読んでしまうか

 前のエントリーの最後に出て来た指摘は重要だと思います。これはたぶんあたってます。移民層だけしか見ていなくてはダメで、フランス全体の階層分化が背景にあることを理解しないといけないということですね。

 またJeune Afrique l'Intelligentの記事を読むまでもなく、郊外の低所得者用住宅が「移民のために」つまり隔離するために作られた、というような一部の報道における理解は間違っていますね。それなら「元からのフランス人」の低所得者層はそこに住めないことになるわけですから。

 先に「同化主義」という言葉の危険について述べましたが(黒猫亭主人さんのご指摘によるとフランス大使のブログでもこの日本語が使われているとのことです。フランス人には、この言葉が日本人にどう受け取られるかがピンと来ないんでしょうね)、ここに出て来た「隔離」とでは方向性が全然違うはずですね。でも、なんだか「同化主義」も「隔離」もフランスに併存してあるかのように見てしまう心理が多くの日本人にはあるようにわたしには感じられるのですが、みなさんはどう思われますか?

 事態をついそういう風に見させてしまうのは、われわれ日本人がフランスに対して持っている偏見のせいではないでしょうかね・・・

 こんなことを言うのは、わたし自身フランスのことを特に勉強していなかったならおそらくこのような見方を採用した可能性が高い、と思うからです(考えてみると、わたしはそんなに「フランス好き」でこの業界に入って来たわけではない人でした。単に英語の次はフランス語でもやってみようと思っただけでした。でも「アルジェリア好き」になれたのは、これはまったくわたしのフランス語能力のおかげでした)。

 「植民地主義」をやっていた国で、「旧宗主国」であり、未だに「海外、特に北アフリカにおけるフランスの存在の積極的役割」le role positif de la presence francaise outre-mer et notamment en Afrique du Nord などということを言っていて、なんの反省もしていないらしい。日本人はかつての植民地主義を深く反省しているのに。結局自分達の価値観の押しつけが「良い」ことだったと思っているのだ。「普遍主義」とか「文化国家」とか難しげなきれいごとを言うが、それらはまやかしで汚い現実を隠すためのものだ、臭いものに蓋をするのが性の人たちだ・・・というような・・・。

 だから移民労働者という「臭いもの」に蓋をするために、「彼等を押し込む目的の」住宅を都市郊外の、ハイソな人の目には入らないところに作った、というオハナシが頭の中で出来上がってしまうのでは・・・

 フランスは、そんなに大多数の日本人(とあえて言ってしまっていいように思えます・・・)の想像に都合よくぴたりあてはまるような姿は、たぶんしていません。まあ100%違うとは言いませんけど、 (X_X;) でも少なくとも全てのフランス人が一枚岩的になってこういうフランスを形成しているわけではありません。それは絶対に違います。

 それにまたフランスはどんどん変わって行く国でもあるのです。
 日本ではアカデミーフランセーズみたいな「ものめずらしい」存在ばかりスポットが当てられて報道され、反芻されるので、ついこれは数百年なにも変わらん国なのだ、と思わされてしまいますが。

 本当は、報道機関はそういう一般の偏見を正しながら報道しなければならないはずです。しかし日本のマスコミは(と一枚岩にくくるとやっぱり間違いになりますが)あまりそういう役割を果たしているように思えません。大多数の人の持つ偏見に乗っかるような報道が大半を占めていると言えるのではないでしょうか。

 これってやっぱり、新聞は売れなきゃいけない、テレビは視聴率を上げなきゃいけない、という資本主義の大原則から帰結する現象なのでしょうか・・・

 フランスは対日直接投資が米国についで世界二位の国ですよ。そんな重要な国の実情は商売のネタにされるより先に、もっと正確に分析され、周知されてしかるべきだと思うのですが。
 ・・・ニッポン大丈夫か?


 今日はなんだか書き過ぎたかもしれません。
 ご批判、ご意見たまわりたく思います。


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