社会保険労務士雑記帖

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政府が生活保護捕捉率を公表したが・・・

2010-04-10 | 貧困とセーフティネット
 9日、生活保護の捕捉率が政府(厚生労働省)から発表されました。3党連立政権発足以来、貧困率や子どもの貧困率を相次いで公表してきた政府が、今回は生活保護捕捉率を推計しました。
 捕捉率というのは、生活保護基準以下の世帯のうち、実際に生活保護を受給している世帯数の割合をいいます。日本の捕捉率は、これまで8~25%程度と考えられて、研究者の推計方法によってかなり幅がありました。

今回の発表によると、
①厚生労働省自身が実施している国民生活基礎調査(2007年実施のもの)から
 収入が生活保護基準以下で、預貯金が少ないため生活保護の要件を満たしている世帯  337万世帯
   うち、生活保護受給世帯 108万世帯   捕捉率32.1%
   (参考までに、337万世帯のうち)母子世帯 22万世帯(母子世帯全部の30.2%に該当し、低所得率が非常に高いことが示された)
②総務省が6年前に実施した全国消費実態調査から同様に、142万世帯、97万世帯、捕捉率68.4%

  これまた、かなり幅のある数字です。また、研究者たちの推計ともかけ離れています。
  以下、少しコメントしておきます。
 
 この①と②の2つの調査による格差や貧困水準の推計に相当の開きがあることは以前から指摘されているところですが、ひとつには、国民生活基礎調査の調査方法(所得票)は福祉事務所が中心になっていて、地区内全員を調査するといっても、福祉事務所の仕事の対象になっている世帯(低所得者、障害者、保育所、高齢者福祉など)の回収率が高くなりやすく、これらは低所得者に該当する世帯が相対的に多いと思われます。

  いっぽうの消費実態調査は、家計簿をきちんとつけるという協力を求めるもので、生活に余裕のない貧困層では回収率が低いのではないでしょうか。しかも、一人暮らし高齢者などが多くを占める単身世帯の調査は限定されており、単身世帯の学生は対象とされていません。これらのことは、消費実態調査では貧困層の実態が十分反映されていないことを示唆しています。
   消費実態調査の方法については、総務省統計局を参照して下さい。

 実態は、2つの調査の間にあるということでしょうか。
   なお、住宅ローンがあると生活保護基準以下世帯でなくなりますが、国民生活基礎調査には住宅ローンがある世帯も生活保護基準以下世帯に含まれていて、それだけ捕捉率を下げていることは確実です。

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