別所沼だより

詩人で建築家 立原道造の夢・ヒアシンスハウスと別所沼の四季。
     

ここに幸あり

2009-06-12 | 自然や花など

  公園の菩提樹   見あげると 花が咲いている
   クリーム色の風    仄かな香り   レストランの人影も揺れて
  金曜日の午後  美術館  噴水の音  親子のおしゃべり

 

薔薇の花びらと菩提樹の花

  落ちている花を 拾って帰る
  大きさ 約7ミリ。 シューベルトの菩提樹を口ずさんだ遠い日が
   懐かしく思いだされた

          泉に添いて 繁る菩提樹
         慕いゆきては うまし夢見つ
         幹には彫(エ)りぬ ゆかし言葉
         うれし悲しに 訪いしそのかげ

         今日もよぎりぬ 暗き小夜中
         まやみに立ちて まなこ閉ずれば
         枝はそよぎて 語るごとし
         来よいとし友 此処に幸あり

         面をかすめて 吹く風寒く
         笠は飛べども 捨てて急ぎぬ
         はるか離(サカ)りて たたずまえば
         なおもきこゆる 此処に幸あり
         此処に幸あり

   あらためて読んでみると なんといい詩だろう 訳詞 近藤朔風。 「野なかの薔薇」 「ローレライ」なども。  まやみは真闇と、 いまなら分かる。
 幹には彫りぬ ゆかし言葉…  当時中学生になったばかりか、 「幹に」「はえりぬ」と思い込み、 歌いながら意味も分からなかった。 楽譜は仮名ばかりだった気がする。 深く知ろうともしなかった。

 いま、 調べると 「える」 は 彫る、鐫る のこと。
(1)彫刻する。ほる。きざむ。
(2)かたいものをくりぬく。えぐる。

 してみれば  幹には…「は」は、ワと発音して係り助詞
 幹には、 え(彫)りぬ、 ゆかし言葉… だったのね。 幹に刻まれた ゆかしき言の葉…

 ああ うれしい。 蛙は今頃になってようやく 彫りぬ… えりぬに気づく。
 調べ虫まで移っている。 こんな時こそ 「存命の喜び…」 でいっぱいになる。 「せめて見れば」 だったし、「ひとり燈火のもとに文をひろげて」 「日々に楽しまざらんや…」 と、 古典から学ぶことが多い。

 雑誌「いきいき」の枕草子に続いて、 今月から
  清川妙さんの古典「徒然草」 連載も始まったので、 
 大間に合いは、 いっそう嬉しく 幸せである。   


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 紅いハナ | トップ | 次の記事へ »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
目からウロコ!☆” (ルピナス)
2009-06-13 13:59:48
菩提樹の詩、改めていい詩ですね!
蛙さんの調べ虫のおかげで、
ハッキリとわかりました。
ありがとうございます。
「はえりぬ」は、ワケも分からず
なんかヘンとおもいながら、○十年!
調べようともせずに・・・

「此処に幸あり」  ですか。
このようなゆるやかな思いは、今いずこ・・・私の中では遙かなものになってしまったのかしら。
蛙さんの記事にこころとどめて、
菩提樹のお茶と湯気の中に呼び起こされるものを、
せめて愛しみましょうーーーと。
返信する
来よ いとし友 ()
2009-06-13 21:56:35
ようこそ ルピナスさん
 ほんとうにすてきな詩です。言葉の流れ リズムがいい。 書いてから何回も読みました。ますます好きになりました。

 音楽の授業は、田舎の中学にしては画期的。コーリューブンゲンを練習し、四人揃えば必ず混声合唱ができるようになっていました。コンクール出場も(多くの学校のように)選ばれた人だけでなく、全校生徒を出場させる。 朝礼でも必ず混声四部合唱が運動場に響きました。公開授業もあり近隣から多くの先生方が視察に見える。 懐かしい思い出です。


 カラマツの花畑の調べ虫さんに、教わることがいっぱい。いつもありがとうございます。
 
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

自然や花など」カテゴリの最新記事