別所沼だより

詩人で建築家 立原道造の夢・ヒアシンスハウスと別所沼の四季。
     

くわばら

2005-07-21 | 犬のブロンコ・ダン

 その日も朝ぐもり、茹だるような暑さだった。
夕方、涼しいときを選んで、ラグは散歩に出る。おきまりコースは三通りくらいあるが、どれも先導できるほど熟知している。

「いってらっしゃい」 いつものように見送った。
 10分もしないうちに、「クッ、クッ クーン」
「キャン、キャン」 玄関のあたりが騒がしい。

 

いま出たばかりじゃない、絶対よその家だと決めてかかる。

 それでも止まず。 ここ開けて!と、必死に叫んでるんだ。 
 おそるおそるドアを開けると、小さな彼がぶるぶるしながら待っていた。
  「どうした? 父さんは?」  「…・・・…?・・」
  「おいて来ちゃったの?」 「…!!・・!」

 待てど暮らせど夫は帰らない。一体、どうしたのよ! 何があったの? 無口な犬では埒があかない。

  しばらくして連れがヨレヨレになって戻ってきた。
 rugbyに代わって言うことには

 靴ひものほどけを直す間にいなくなったこと。何度も名を呼び、草むらやいつも通る道を、必死に追い、探し歩いたこと。
 「なんだ、真っ直ぐ帰ったのか」 と苦笑する。
 rugbyは素知らぬ顔で、ぴちゃぴちゃとミルクなんか飲んでいる。

 思えば、車が行き交う大通りを二つも横切ったことになる。 綱をひきずり、猫ぐらいの犬が横断する姿を想像すると、「よくぞ、ご無事で」 
 蛙は目頭が熱くなるのだった。
 
 追っかけ、稲妻がやってきたことは言うまでもない。
 犬は舌をだらんと出して、ハアハアしながらひたすら祈る。涎で床がびしょびしょだ。
  蛙も一緒にくわばら、くわばら。 雷、大っ嫌い!
 
コメント (6)
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