その日も朝ぐもり、茹だるような暑さだった。
夕方、涼しいときを選んで、ラグは散歩に出る。おきまりコースは三通りくらいあるが、どれも先導できるほど熟知している。
「いってらっしゃい」 いつものように見送った。
10分もしないうちに、「クッ、クッ クーン」
「キャン、キャン」 玄関のあたりが騒がしい。
いま出たばかりじゃない、絶対よその家だと決めてかかる。
それでも止まず。 ここ開けて!と、必死に叫んでるんだ。
おそるおそるドアを開けると、小さな彼がぶるぶるしながら待っていた。
「どうした? 父さんは?」 「…・・・…?・・」
「おいて来ちゃったの?」 「…!!・・!」
待てど暮らせど夫は帰らない。一体、どうしたのよ! 何があったの? 無口な犬では埒があかない。
しばらくして連れがヨレヨレになって戻ってきた。
rugbyに代わって言うことには
靴ひものほどけを直す間にいなくなったこと。何度も名を呼び、草むらやいつも通る道を、必死に追い、探し歩いたこと。
「なんだ、真っ直ぐ帰ったのか」 と苦笑する。
rugbyは素知らぬ顔で、ぴちゃぴちゃとミルクなんか飲んでいる。
思えば、車が行き交う大通りを二つも横切ったことになる。 綱をひきずり、猫ぐらいの犬が横断する姿を想像すると、「よくぞ、ご無事で」
蛙は目頭が熱くなるのだった。
追っかけ、稲妻がやってきたことは言うまでもない。
犬は舌をだらんと出して、ハアハアしながらひたすら祈る。涎で床がびしょびしょだ。
蛙も一緒にくわばら、くわばら。 雷、大っ嫌い!