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いずも甲板〜2019年度観艦式中止に伴う一般公開

2019-10-20 | 自衛隊

朝9時からまず乗艦予定だった「あけぼの」の停泊している
船越岸壁のある一般公開会場に乗り込み、傘を差したり差さなかったりして
全ての見学を終えたので、今度はお馴染みの逸見岸壁です。

基本楽をしたいわたしはタクシーに乗ってしまいたかったのですが、
全く通らなかったので、てくてく京急田浦まで歩き、二駅乗って
もう一度メルキュールのある横須賀中央まで戻って、そこから
さらにヴェルニー公園横を歩いて横須賀基地まで行きました。

逸見岸壁には母港が呉である砕氷艦「しらせ」がいたようです。
「しらせ」といえば、今年の春頃、自衛隊が運用を止めるかも、
というニュースが流れましたね。

その理由は一にも二にも海上自衛隊の人手不足。

海自が運航し、研究者らの観測隊員を乗せ約5カ月かけて、
日本と南極を毎年往復しているのですが、乗組員は約180人、
護衛艦1隻分に匹敵する規模で、隊員の定員割れや、
南シナ海などの任務に対応するという考えによるものです。

しかも任務が任務だけに優秀な人材を必要とし、特に
艦長経験者を3〜4人乗艦させないといけません。

ただ、わたしはかつて「しらせ」の乗員自らが

「南極に行けるなんて海上自衛隊だけじゃないですか。
わたしはそのため海自に入ったようなものです」

と行っているのを聞いたことがあります。
人手不足に対応するために、海上自衛隊でしかできないことを
求めている人に対してまでその可能性を閉ざすことになり、
これは完全に本末転倒のような気がするのですが・・・・。

まあ、今のところ自衛隊法でも南極観測への自衛隊の協力は
明記されているので、これを改正するかから議論せねばならず、
今日明日の問題ではないわけですが、こんな法律改正だけは
さっさといつの間にか行われていた、ということがないように、
なんとか打開策を含め検討していただきたいものだと思います。

ヴェルニー公園沿いを歩いていくと、まず「いずも」が見えてきました。
対岸の公園からは、今日観艦式のチケットを持っていない人たちも
いつもより多くが集まって写真などを撮っているように見えます。

基地に入ると、いつもするように金属検査のゲートを潜り、
鞄の中を開けて中身を自衛官に見せ、さらにこの日の
チケットを見せて入場を行います。

自衛隊の金属探査ゲートは空港などよりゆるいらしく、
わたしは今まで止められたことはありません。

余談ですが、今回ローガン空港で、金属片を一片も身につけていないのに、
あの頭上で腕で菱形を作り足を開くポーズの探査機で、
なんと革製のサッシュベルトが引っ掛かり、身体検査で
女性係官に太腿から足の付け根までを触られるという辱めに遭いました。

こういう時の空港の女性職員は例外なくサディスティックで、
偉そうで居丈高で嫌な思いをさせられます。

もちろん我が自衛隊でゲート検査において嫌な思いをしたことは
ただの一度もありません。

もちろん最初に「いずも」から見学することにしました。
左のテントに列ができていますが、これは何かというと、
確かアンケートに答えるとかいうコーナーだったと思います。

なぜ自衛隊のアンケートにこれだけ並んでいたのか謎ですが、
もしかしたら入隊志望の人たちがたまたま団体でいたのかもしれません。

「いずも」の舷門には当直の隊員たちが並んで
∠( ̄^ ̄)で一人ひとりをお迎えしてくれます。

この段階ですでに気付いた方もおられると思いますが、
「いずも」には女性乗員が大変目立ちました。

就役時には自衛隊初となる衛生士(准看と臨床検査技師の資格あり)
として女性が乗り込んだ大型艦だけあって、
女性隊員のための区画も充実させていると聞きました。

「いずも」に乗ると最初にして今回は最後にもなるイベントは
艦載機用エレベーターで甲板に上がることです。

今エレベーターは甲板階にあり、乗る人たちが待っている状態。

エレベーターが降りてきました。

これから乗る人も、乗っている人も、そのほとんどが
スマホを構え動画を撮っているという・・・・・。

二回前の観艦式ではまだ見られなかった光景です。

昔「かが」で見学者がエレベーターの隅を覗き込んで下に落ち、
当時の艦長らが刑事責任を問われるという不条理な話がありましたが、
それから以降、ヘリ搭載型護衛艦の見学の時にはエレベーターの周囲に
ご覧のようにネットを張り、端に近づけないようにしています。

その二回前の観艦式でわたしは「ひゅうが」に乗りましたが、
その時にはこのようなネットは貼られていなかったと記憶します。

雨が降るとエレベーターのウェルにはこんなふうに
激しく雨水が落ちてくることを知りました。

大雨の時にはパレットは使わないと思いますが、
それにしてもこの水はどこに溜まりどこから出ていくのでしょう。

エレベーターのパレットは四隅に4本まとめたワイヤーで吊られ、
上げ下ろしがされています。

甲板階にいるこの海曹がおそらく手動でエレベーターを動かしています。
稼働中は何があっても対処できるように受話器を耳に当てて。

甲板階に到着〜。
アナウンスで傘を差さないようにと注意されていましたが、
言われずともこの頃には傘が必要ない状態になっていました。

その時、「いずも」左舷にYO40、つまり油船40号がいるのを発見。
今から燃料を補給する作業を行うようです。

油船40号は、まず艦隊から垂直にまっすぐロープを引いていきます。

そして半円を描くようにロープを引っ張って艦首に向かいます。

給油作業の際には油が海面にこぼれることがあっても
それが広がっていくことがないように柵を貼りますが、
油船が自分でこんなふうに準備をするのを初めて見ました。

これをオイルフェンスといいますが、「いずも」では一度、
ヘリコプターの昇降機の油圧系と思われる故障で、停泊中に
油圧作動油が海上に流出するという事故が起こったことがあります。

この時には事故発覚後にオイルフェンスを張って拡散を防ぎ、
吸着マットで漏れ出した油の大部分を回収したそうです。

「いずも」の見学は甲板とハンガーデッキだけでしたので、
それだけではサービスが足りないと思ったのか、
「いずも」ではホースを持った耐火スーツマンが登場。

八戸の航空基地で見たので知っているのですが、このスーツ、
靴とパンツが一体化していて、非常時には足を突っ込み、
そのままパンツをグイッと引き上げて瞬時に着用が可能です。

カメラを向けるとポーズをとってくれました。
自衛艦旗をバックに決まってるぜい。

思いっきり脚を開くのはホースを持つ時の基本姿勢?

自衛艦では火災が起こった時全員が対処できるように、
乗員は須く消火訓練を受けることになっています。

また機関科の第3分隊に配置されている応急士たちの
いざという時の全滅を避けるために、応急待機所は
艦体の前、中央、後部と三箇所に分散させているそうです。

彼の横にずらりと並んでいるのは広い甲板を持つ
「いずも」ならではの艦載型消防車のようですね。

「いずも」甲板後部からはこの日公開されていた護衛艦たちが
このように一挙に望めて壮観です。

手前から話題の「あさひ」「たかなみ」「はるさめ」

岸壁を挟んで艦首をこちらに向けているのは

「むらさめ」「こんごう」「あたご」

です。
岸壁のこちらと向こうで艦首を向けていたりいなかったりは、
おそらく観客サービスではないかと思うのですがどうでしょう。

護衛艦の見学もあることだし、と退艦することにしました。
お?もしかしてこの一段はアメリカ海軍の皆さん?

今日見学をしているってことはチケットを持っていたのよね。

黄色い車、片方は3人乗り。
ヘリをトウイングする車?にしては大きいような。

そこに艦長らしき自衛官が海曹に案内されるように出てきました。
一緒にいた方が、

「話しかけてみます?」

「いや・・・なんかお忙しそうですし

「ありあけ」の艦長のように皆とお話しするために立ってくれたら
近づいてみようと様子を窺っていたら、そのまま艦橋に入ってしまいました。

「通過しただけだったんですね」

「そもそも『いずも』の艦長かどうかもわかりませんよね」

さて、というわけであまり待つこともなく昇降機に乗ります。 

今回も受話器を耳に当てながら昇降機を作動させていました。

ハンガーデッキも基本的に観艦式の時にはすっきりと片付いていて、
展示用のヘリが一機、そして荷物の積み下ろしに使う
「カーゴスリング」というものが展示されているだけです。

このヘリ、なぜ尻尾がない?と思ったのですが、
よく見ると向こう側にたたんでありました。

究極の省スペース。

荷物の積み下ろしなどを行う艦体横のハッチから外を眺めたところ。

退艦です。
乗艦側では相変わらずお迎えの敬礼をしている自衛官たちがいますが、
女性自衛官が一気にいなくなり、全員男性に変わっていました。


ところでKさんの写真で潜水艦のブリッジに立っていた乗員の敬礼が
どうも陸自っぽい?というcoralさんのご指摘がありましたが、
「いずも」舷門での敬礼はご覧のようにお手本のような海軍式です。

ヘリの尻尾を極限までたたむように、海自の敬礼は特に艦内では
省スペース型の、肘をたたんだ形になるようです。

さて、というわけで「いずも」を下艦しました。
なんと、こんなところに見学者が近寄らないように
見張りに立たされている乗員がいました。

油船はオイルフェンスを張り終わり、給油作業中です。

さて、それでは向こうの岸壁の護衛艦群を見にいきますか。

 

続く。




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2 Comments

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船越⇔吉倉は遠い (Unknown)
2019-10-20 06:44:51
船越地区と吉倉地区の間は結構ありますよね。部内では定期便(バス)が出ています。船だと掘割経由、内火艇で往復してます。

舷門当直員は海曹(当直海曹)と海士(当番)各一名なので、手前の女性は見習い(恐らく、教育隊を8月に修業したばかりの新隊員教育中)でしょうね。

>この水はどこに溜まりどこから出ていくのでしょう。

船は排水のためにキャンバーと言って、船体中央部が一番高く、左右両舷に行くに従って低く、丸みを帯びた形状になっています。溜まった水は両舷にある排水溝に流れて行きます。

エレベータを使わないと格納庫甲板から航空機を上げられないので、雨が降っても、槍が降っても、エレベータは使うと思います(笑)

DDHの、転ぶと紅葉おろし間違いなしの飛行甲板。雨水が溜まっても、拭き取らず、そのままにしてあります。普通の護衛艦なら、錆の原因になるので、雨が上がると直ちに掃布で拭き取るのですが、DDHはやりっぱなしなので、何となく気になります。DDHの飛行甲板は特殊な仕上げで、乗員整備(錆打ちやタッチアップ塗装)出来ないからまぁいいや、みたいな感覚なのかもしれません。

艦上救難員(消防士)の足を広げたポーズは、実際に放水したらかなりの水圧(10キロ)があり、ああしていないとうしろに倒れるからです。

>岸壁のこちらと向こうで艦首を向けていたりいなかったりは、おそらく観客サービスではないかと思うのですがどうでしょう。

サービスではないと思います。かつては出船係留しかしなかったのですが、入船も出来る技量が必要だということで、今世紀に入ったくらいからか、入船係留もするようになりました。

黄色い牽引車はヘリコプター用の標準装備で、陸上の航空部隊でも同じものを使っています。また、陸自(ヘリコプター)や空自(戦闘機)でも同じです。民間の空港に行かれると、いわゆるバゲッジタグ(預ける荷物を貨物倉に入れるために運ぶ牽引車)として同じ車両が活躍しています。

ヘリコプターがしっぽを曲げている写真に写っているU字型の機材はリモコン式の牽引車で、これはDDHだけの装備です。

地上支援機材と呼ばれる牽引車等の車両ですが、陸自と空自はOD色で、海自は黄色となっています。
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甲板上の排水 (お節介船屋)
2019-10-20 09:46:33
艦内に溜まる雨水、海水、清掃用水、浴槽水等と汚物処置装置で処理が必要な用便排水は分けています。暴露甲板の雨水、海水は舷側にガッターバーと呼ばれるコーミングを設け、溜まり易い部分数か所にスカッパー(排水桶)を設け舷外に排水します。これは舷側に雨水等を垂らすと汚れが付きますのでなるべく舷側に沿わないで数か所に集めて排水するためです。通常護衛艦等は1甲板は水はけのため幅10∼15mで船体中央部を200㎜高くします。これをCamberと言いますがヘリコプターを運用する飛行甲板は写真にも雨水がところどころ溜まっていますがキャンバーとしないで平滑となっています。キャットウォーク部分等の外側に雨水を排出するための排水管(汚水管と呼びます)をゴミ除けの格子を付けて設置しています。一旦艦内に導入し、舷側に沿って下側に導設、水密横隔壁を貫通しないで下の甲板(2甲板以下も平滑)の汚水管と数か所集め(洗面台等)、区画内で主管として水線部付近で舷外に排出します。汚水管出口には波の逆流を防ぐ波止弁が取り付けられています。エレベーター下のホール、調理室、浴室等水の溜まり易い箇所には汚水溜まりの大きなレセスを設けてその下部から汚水管を導設してこの汚水が動揺により甲板上を流れ動かないような考慮もされています。
参照海人社「世界の艦船」No798,809,824、岡田幸和著「艦艇工学入門」
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