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アメリカ・スシ事情

2012-07-18 | アメリカ

「クリック」
という映画で、日本人ビジネスマンと商談に入る主人公に、上司が、
「彼らを待たせるな。生の魚を料理する時間も待てない連中だぞ」と言うシーンがありました。

昔、留学でアメリカに住んでいたとき、インド人のクラスメート夫妻を、
「日本人認定ジャパニーズレストラン」に招待したことがあります。
スシには喜んでいた二人ですが、TOが注文したサシミには、出てくるなりとたんに
「いや、もうお腹がいっぱいで・・・・」
インドという風土にはありえない料理ですから、スシはともかく刺身は、
おそらくインド人にとってハードルが高過ぎたのだと、その表情から理解しました。

とはいえ、ここアメリカではスシは普通に人気のエキゾチック料理。
ニューベリーストリートの角のお洒落なイタリアンレストランが、今年行ったらスシになっていて、
ランチ時、外のテラステーブルでアメリカ人が箸を使って寿司を食べてる様子はシュールでした。


今日は、アメリカで大人気、現在のスシ事情をネタにお送りします。(文字通り)

全米展開のオーガニックスーパー、「ホールフーズ」にはどの店にもスシ・コーナーがあります。
新しくオープンすると、当初こそ本物の日本人がいるのですが、いつのまにか
「見かけは東洋人だが日本人でない人」に交替しています。
はっきり言ってここのスシは、カリフォルニアロール(ノリが中に巻いてあって、具がツナとアボカド)
くらいしか食べる気もしないのですが、鮭とマグロを刺身にしてくれるので利用していました。

でも、高いんですよね。
食べ物の全般的に安いアメリカで、ここは小さなトレイに数切れのマグロが10ドル以上するのです。
といって、魚売り場に置いてあるのは生臭くて、とてもサシミなどで食べられません。
仕方なくこれを買っていたのですが、去年から、多分エコロジーへの配慮とか言う理由で、
サシミのトレイの受け皿が紙成型に(蓋は透明プラスチック)なってしまいました。
バランも敷かずに魚身を直接紙の上に乗せてしまっているわけ。
どうなるかわかりますよね?

エコかなんか知らんが、日本人ならこんな売り方は、まずしません。
何度も、底にくっついた貴重な魚身を、受け皿ごと捨てなければいけなくなって、
業を煮やしたわたくしは、ついに「お客様の声」というボックスに、次のような手紙を投入しました。

「毎年夏、日本からここにやってきて一カ月滞在する者です。
お宅のスシコーナーでは、一年前から紙のトレイをサシミに使うようになりましたが、
日本人に言わせると、これは全くありえないことです。
紙のトレイは魚の水分を吸収し、その結果、魚身がトレイにくっついてしまうからです。
受け皿もプラスティックに戻すか、魚身の下に、
プラスティックシートを敷いた方がいいと思います


しかし、この夏中の改善はありえないとしてサシミを諦めかけていたら、
このスーパーの冷凍庫にこんなものを見つけました。

 

ウオリキというニュージャージーの会社が出している「新鮮より新鮮」な「スシクォリティの魚」。
名前は日本風だけど、ニュージャージーというあたりがアヤシイ。
なぜなら、日本のブランドを利用して日本の会社の名前を名乗り商売している多くは
ここアメリカでは、日本人ではなく、コリアンであるという話があるからです。
(ニュージャージーはコリアン系の移民が多い)




これが中身です。
量的にはたっぷりですがこれが14ドル。
紙パックにほとんど身を取られてしまうサシミの値段を考えるとこんなものかもしれません。

魚が高いせいか、勢いスシも「高級料理」にカテゴライズされることが多いらしく、
ニューヨークの超高級スシレストランのイメージから、スシバー=オシャレということになっていて、
映画でもよく「スシバーでデート」というシーンを見ますね。
(ex.キャットウーマン、モンスターズ・インク)


ところで、日本では高級なすし店とはまったく対極の位置にあると思われる回転ずし。
「高級回転ずし」
という店の看板を見たことがありますが、これは「善良な悪人」「裕福な貧乏人」みたいなもので、
「回してる時点で高級じゃないし」と日本人であれば誰しも思うでしょう。

ところが、この「回転ズシ」、フランスや、ここアメリカでも、
結構「クール」なものとして認識されているようです。

今住んでいるところの地域に、唯一「ノードストローム」(超高級デパート)があり、
「ニーマン・マーカス」(高級デパート)があり、モールのアーケードにはアップルストアがある、
という、このあたりでは最もアッパーなショッピングモールがあります。
ルイ・ヴィトン、フェラガモ、ボッテガ・ヴェネタ、オメガにバーバリーという高級品が並び、
地元の富裕層の奥様などがショートパンツにビーチサンダルで訪れます。
(アメリカ人って、どこでブランド物を着たり持ったりしているのでしょうか)

去年の夏、このモールの、アップルストアの前のスペースが工事中で
「カミング・スーン!ジャパニーズレストラン、『ワサビ』!」とお報せがしてあり、
できたら行くのを楽しみにしていたのですが、オープン前に移動になってしまいました。
昨日、アップルに行ったついでに、息子とさっそくチャレンジ(本当にそんな感じ)してきました。



この、全く日本人の関与していなさそうな店の佇まいをご覧ください。
冒頭の写真が「スシ流し機」ですが、日本のベルト式とは違いますね。
さて、どんなスシが流れてくるのか。ドキドキです~!(←嘘)

冒頭の「ツナ・ニギリ」は、マグロ好きの息子がさっそく取り、わたしも一つ頂きましたが、
ん・・・・?これは・・・・・・もしかして、

すし飯に酢を使っていないのではないだろうか。


どんな場末の回転寿司でも一応酢の味くらいはするのが、
腐っても(腐らないように入れるんですがね)日本人の作るすし。
そして、いくら不味いすしでも、日本人のスシなら、すし飯が多すぎで崩れてしまうってこともない。

アメリカでインチキジャパニーズレストランにいくと「だしの味がしない味噌汁」を出されるので、
とたんにオーナーがコリアンかチャイニーズであることが我々にはわかりますが、
「さっと昆布を通しただけ」でも変わる出汁の味が、どうやら連中にはわからないらしい。
このスシも、もしかしたら酢くらいはわずかに使っているのかもしれませんが、
少なくとも昆布を混ぜて飯を炊くなどということは全くしていない「ただのご飯」でした。

「・・・・・なっとらん」
「そう?オレ結構好き」と息子。

小倉で超一流ずしを食べさせて勉強させたつもりでも、所詮は子供。
いまだに「スシロー」と聞くと目を輝かせるような奴なので、そういうものかもしれないけど、
息子よ。これは寿司ではない。ご飯と刺身だ。

しかし、こんな間違ったスシを出すわりには、回転ずし会計システムは、日本と全く同じ。



ツナ・ニギリは4ドル、つまり今は320円ってところですか。

 

タマゴ、キューカンバー・マキ。
このあたりは見かけだけは日本の回転ずしレベルです。

 稲荷。「イナリポケット」。

アメリカ人はこの甘いスシが大好きで、スーパーにも必ず売っています。

 このあたりから怪しいものが続々と登場。

カニカマ・クラブスティック。
日本じゃカニカマって、巻くことはあってもにぎりにはしないですよね。
それと、このカニカマとノリのコンビネーションが、イケてない気がするの。

 レインボー・マキ。

何がレインボーだよ、と思わず突っ込んでしまうわけですが、
三種類のネタをグラデーションさせてアボガドを入れたスシに巻きつけてあります。
わたしはこれを食べてみました。(コメントなし)

 スプリンクル・ロール。

チョコレートじゃないんだから、スジコやらトビコを色付けするのやめてくれんかな。



スプリンクルロールの中に巻いてあるのも、キュウリではありません。
これはすべてアボカド。
アメリカ人はなぜかスシというとアボカドを多用する傾向にあります。
日本ではそんなスシ見たことない、というと、さぞ彼らは驚くでしょう。
わたしはアボカドそのものは好きですが、すしネタとしてはいかがなものかと思います。

 カリフォルニア・ボルケーノ・ロール。

どうもウニ状のものを火山の溶岩に見立てているらしいのですが、
「見た目が汚いんだよっ!」(怒)

 

トーキョーサラダ(海藻入り)にドラゴン・ニギリ。
まったく、どれもこれも、ネーミングがいちいち日本人のセンスとはかけ離れておりますね。
とくにこの「ドラゴン」、見かけの汚さもさることながら、食べ物に「ドラゴン」と使うのは、
そりゃ日本人やない、中国人のセンスや。
上に乗っけたきゅうりの細切りをドラゴンの髭に見立ててございます。
そして上からマヨネーズをかける。
もう、何から何までカオスです。

 シュリンプ・テンプラ・ロール。

スシ、テンプラのコンボです。
確かに日本にも「天むす」っていうのがありましたね。スシじゃないけど。

 タイソンズ・ロール。

「タイソンって、マイク・タイソン?」(わたし)
「シェフの名前だとおもう」(息子)



どれがタイソンかはわからないけど、とにかくシェフの創作スペシャルということですね。
ご飯に裂いたカニカマをかけ、オカヒジキ、そしてマヨネーズがけ。
そもそもスシをわざわざ創作せんでもいい、と日本人は思うのであった。



まだ5時ごろでしたが、デートに来ているカップルあり。
なぜデートだと分かるかというと、女性が一応ワンピースを着ているから。
それにしても立派な体格の女性ですね。アメリカでは普通ですが。

 サシミメニューには、驚いたことにホッキガイがあります。



というわけで、お勘定。
ウェイトレスのおねえさんのスマイルマーク入り。
アメリカのレストランでは、テーブルにこういうビルを置いていきますので、もし現金で払うなら
チップを足した分を挟んで置いてテーブルを去ります。

カードで支払うと、サインを持ってきますから、そのときにチップを自分で請求書に書き足して、
やはりそのまま店を出るのです。
今回は23ドルを挟んでおきました。

やっぱり、食べた量にしては高いかな。



帰り道見つけた新しいスシレストラン。
日本人ならば決して使わない意味不明の漢字、その字体、
そして日本人であればてんぷら屋しか使用しないであろう「天一」という店名。
これはかなりの確率で中国人経営の店であろうとおもったら案の定、
Sushi Hotのあとに DimSum(点心)と言う文字が・・・・・。
いつも思うのだけど、アメリカ人には分からないからって日本の名前を使う。
彼らにはプライドがないんだろうか。ないんだろうなあ。

このあたりでどうやら日本人経営と思われるのは「Aoi」と「Oga's」いうレストラン2軒のみ。
「シェフ・オリエント」とか「トウキョウスシ」、ましてや「テンイチ」なんて、アメリカ人は騙されても、
日本人には名前だけでわかってしまいますよね。

まあ別に、何人が経営しても構わないけど、頼むからあんまり不味いスシを
「これがスシだ」とばかりに広めるのだけはやめてほしい。
日本人の心からのお願いです。







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2 Comments

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Unknown (リュウT)
2012-07-18 12:52:17
いつも購読しているメルマガの今週号のお話と通じる物がありました。
http://archive.mag2.com/0000000699/index.html
スシ・ポリス (エリス中尉)
2012-07-18 21:27:52
農水省の「スシ認定制度」通称「スシポリス」ですね。
日本側としては、わたしの最後の言葉のように「間違った日本料理を(しかも不味い)広められては困る、せめて、これが本当の日本風スシだということを知らせたい」という意図あって計画したことでしたが、ロスアンジェルスの某コリアンスシシェフが「我々のやっているのはすでに日本のものではなく、アメリカ風(コリア風?)に進化したものだから、そんな検閲を受ける言われはない」といって皆で猛反対、運動し、ついにこの企画は無くなったという話でした。

このいただいた記事にあるような「愚直に追及する『神事』としての料理、専門に拘り積み上げてきた技術と伝統」その日本の料理の歴史に対する敬意など全く持たないどころか、継続的に反日活動をし、心の底から憎んでいる国の料理をただ「簡単に儲けられるから」と言う理由で、看板だけ利用し、形だけ真似をする。
相手が死ぬほど嫌いな国(その異常さもこの記事にはありましたが)であってもです。
何の努力もせず、手っ取り早く結果を得るにはプライドを捨てることが一番。
厳しいようですが、中国、韓国、という国全体(特に韓国)の国民性全般に言えることではないですか。

日本人が最も嫌うのは、そういう研究と敬意なき模倣、なりふり構わない貪欲さなのだと思います。

しかし、イタリアで「唯一の高級料理としてのスシ」と言う話は興味深いですね。
アメリカ人は全く味のわからない人種ですから、インチキが蔓延りやすいらしく、従って「儲かるスシ」も増殖しているようです。
超高級ではない(高級だと、色々ばれるためと思われる)スシレストランが、本文でも申しましたように、この一年でどっと増えています。

余談ですが、パリで一番と言われるほど美味しくて人気の中華に行ったとき、店主の中国人(おじいちゃん)が声をかけてきて、長話をしましたが、きさくで知的な方でした。
やはり自国の料理に誇りを持ってやっているレストランはどこでも一流になれるのだと思いました。

料理は文化ですから、「看板を盗む」というのは文化を盗むことと同罪、というべき重大な問題だと、わたしはいつもこの「インチキ・ジャパニーズ問題」について考えております。

それにしても、このメルマガは面白そうですね。
わたしも購読を申し込みます。

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