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HMAS「スタルワート」の観艦式進行表〜フリートウィークに伴う外国艦公開

2022-11-09 | 軍艦

オーストラリア海軍の艦艇に乗った話をしようと思ったら、
今まで全く知らなかったRAN(ロイヤル・オーストラリアン・ネイビー)
の艦尾旗の歴史、赤いカンガルーとその他の徽章など、
面白いネタが次々と出てきてしまい、一項を費やしてしまいました。

今日は気を取り直して、HMAS「スタルワート」に乗るところからですが、
その前に、前回部隊章、インシグニアの特集をしたので、
ニュージーランド海軍の徽章についても言及しておきます。


これが今回参加したRNZNのHMNZS「アウテアロア」の徽章。
真ん中にあるのはおそらく昔の錨なんだろうと思います。
ニュージーランド海軍の正式なマスコットが「錨」だからでしょう。

錨がマスコットというのもなんか違う気がしますが。

今回一隻だけの参加となったニュージーランド海軍。
海軍全体の人口は2,334人、艦隊は、

フリゲート2隻
洋上巡視船2隻
陸上哨戒艦2隻
水陸両用戦艦 1隻
補給艦 1隻
潜水支援船 1隻

が全てという規模ですので、
逆によく貴重な補給艦を送ってこられたなと思うくらいです。

(ただし、第二次世界大戦の時には全部で60隻保有していたそうです)

元々、ニュージーランドは1840年から大英帝国の植民地であったため、
海岸線の防衛はずっと英国海軍が責任を持っていました。

第一次世界大戦の時も正式なニュージーランド海軍は存在せず、
イギリス連邦軍のニュージーランド部門として参加していました。

第二次世界大戦の時にはニュージーランドは自動的にイギリス側として
ドイツに宣戦布告を行いました。
ニュージーランド海軍がHMNZSのプレフィックスを戴くようになったのは
1941年、第二次世界大戦中のことです。

軽巡洋艦HMNZS「リアンダー」は、この時
ニュージーランド遠征軍を護衛して中東に向かい、
その後帝国海軍の「神通」の撃沈を支援しています。

「神通」を攻撃するHMNZS「リアンダー」とUSS「セントルイス」

そして戦争が終わった1945年から、ニュージーランド海軍は
同じくドミニオン(被占領国)海軍だったオーストラリア海軍と同じように、
イギリス海軍のホワイトエンサインを使っていました。↓



オーストラリア海軍が独自の艦尾旗を制定したのと同じ1968年に、
ニュージーランド海軍もオリジナルを制定しました。

RANの艦尾旗変更の理由は前回お話ししましたが、
RNZNの変更理由も、

あるドミニオンと敵対関係にある国が、
別のドミニオンとは敵対していない
という状況が
独立した国家の外交政策の足を引っ張るから

というものでした。

オーストラリア海軍が独自の軍旗を制定したのと同じ1968年、
ニュージーランド海軍も艦尾旗を独自のものに変更しました。

ユニオンフラッグのトップクォーターはそのままに、
英国海軍旗にある赤いセントジョージクロスを、
国旗にも使われている南十字星に置き換えたものです。


つまり国旗を白くしただけという話も


余談ですが、ニュージーランドは核を持たない国の一つで、
同時に左派政権下では明らかに反核思想を持つ国でもあります。

1973年、フランスがムルロア環礁で核実験を行った時、
ニュージーランドはフリゲート艦HMNZS「カンタベリー」と「オタゴ」
核爆心地に送り、それぞれの艦に核実験の間近での監視を命じました。

まさかニュージーランドともあろう国が、自国海軍に特攻を命じたのか?

とこれだけ書くと勘違いされそうですが、ご安心ください。
HMNZS「カンタベリー」Canterbury F-421は、
当時最新鋭のフリゲートであり、RN 監視レーダーと ESM を備え、
核汚染からも効果的に隔離されうる機構を持ち、
遠隔操作で無人化できるビームレアンダー蒸気プラントを装備していました。

つまり、核爆発地域での作戦において、
密閉した城塞を提供できる軍艦だったのです。

ニュージーランド政府が「カンタベリー」を核実験場に送った理由は
核実験に対する抗議行動でした。

「カンタベリー」は搭載したコンピュータで付近の放射線レベルを測定し、
電子機器はすぐさまフランス軍のP-2ネプチューンが
付近を「掃除」しているのを検知しました。

また、1971年の「メルポメーヌ」実験も観測し、それを公表。

ニュージーランド海軍は、「カンタベリー」の存在は
フランス政府に政治的・作戦的に大きな困難をもたらしたと信じています。

それが本当だったかどうかはともかく、これ以降、フランスは
大気圏内における核実験をやめ、地下実験に切り替えたのは事実です。



クック海峡のRNZN艦隊

ニュージーランド海軍はペルシャ湾でのアメリカの不朽の自由作戦に参加し、
アフガニスタンでのアメリカおよび同盟国の活動を支援しました。
海軍は正規軍と予備役で構成され、それぞれの人数は
2014年6月30日現在でRNZNは正規軍2,050名、海軍予備役392名です。

民間人が RNZNVR に参加できるのは行政、海務(陸上巡視船への勤務)、
海上貿易組織(旧海軍船舶管理)の部門に限られています。

特殊なのは、RNZNの財政で、国会の「投票」で資金調達が決まることです。
それでは軍事装備取得などの大型プロジェクトはというと、
やはり国防省が行っているようです。

■ HMAS 「スタルワート」

自衛隊の案内には「ストールワート」と表記してありますが、
発音が「スターウォー」なので、あえて「スタルワート」とします。

どちらにしてもカタカナ表記は言語と全く違うので、どっちでもいいかと。

ちなみに前回書いたように、「スタルワート」は
「サプライ」級給油艦の二番艦ですが、それでは一番艦はというと、
やっはり「サプライ」というそうです。

艦名が、「補給」。
うーん、それってどうなの。



「スタルワート」には、隣の「アウテアロア」の甲板に掛けられた
階段を昇って移乗していきます。

「スタルワート」はニュージーランド海軍最大である「アウテアロア」より
これだけ甲板が高いということになります。

幅が狭く一人しか通過できないので、係が常駐していて
向こうから来る時には反対側を通行止めしなくてはなりません。

わたしがここを最初に渡ったときには全く待ちませんでしたが、
帰りには多くの人が下で待つ事態になっていました。
その時まだ10時頃だったと記憶しますが、昼頃にはどうなっていたことやら。


さすがはオーストラリア海軍の給油艦。


この作業艇も、



この救命艇も、階段の上から撮ったものです。



甲板にはテニスコートが二面くらい取れそうなスペースがあります。

補助艦であって戦闘艦ではないからということなのか、
甲板から続く細くて険しいラッタルを昇ったり降りたり、
(運動靴で来なかった人は絶対無理なハードモード)
なんと艦橋の高さまで昇らせてもらえました。



ふう、やっと艦橋のウィングにたどり着いたぜい。

日頃歩いているので階段を登るのは全く平気ですが、こういう時は
カメラが重いし、iPhoneも手に持ったままで大変なのよ。



ウィングにあるパネルは出入港時に何かを操作するものですが、
このパネルに書かれている「NAVANTIA」ナバンティアというのは、
「サプライ」級給油&補給艦のシップビルダーです。

スペインのマドリードに本社を持つ造船業者で、
2005年に会社を立ち上げたばかりなのに、既に
最新鋭のイージスシステム搭載フリゲートや潜水艦の開発、
大型強襲揚陸艦の建造が可能な技術水準を持つ実績をあげています。

オーストラリア海軍のためには、今回一緒にきている「ホバート」の
「ホバート」級駆逐艦、「キャンベラ」級強襲揚陸艦を建造しています。

元々「サプライ級」は、ナバンティアがスペイン海軍のために建造した
「カンタブリア」型補給艦をベースにしています。

スペイン海軍「カンタブリア」A-15

と「スタルワート」・・・あまり似ていないのだが

というわけで、「スタルワート」も隣の「ホバート」も、
実はスペイン生まれであったことがわかりましたね。

でっていう話ですが。


生まれて初めてオーストラリア海軍艦のブリッジに足を踏み入れる

なんと「スタルワート」、なんでも見てくださいとばかりに、
ブリッジですらどんどん人を入れて見学させているではありませんか。


ところで正面のパネルには、12.9mという数字が見えます。
これは、つまり岸壁からの距離ということでよろしいか。


こちらiPhoneの写真。
見張り?も二人だけというおおらかさです。



そして、この艦橋の広いこと。
そして操舵システムとパネルが一列に並んだコンソールの美しさを見よ。

色は全体的に黒で、インテリアはシックです。
パネルの配置もとにかくまず見た目がすっきりしていました。

椅子も黒革調でスマートで、事務的だけではない、
スペインらしい華やかテイストがそこはかとなく匂うゴージャスな作りです。

最近の建造ですから、コクピットは全て最新式のコンピュータ搭載、
その分ミニマイズされているということでしょう。


「フリート・エクササイズ」つまり観艦式のことですが、
プログラムが几帳面な字で書かれ掲示されていました。

ところでその下にあるヘッドセットの赤の色使いがとっても素敵です。



せっかくなのでこのプログラムを公開してしまいましょう。

艦隊航行プログラム

HMAS
「スタルワート」

1000-1100 READY FOR SEA(出航準備)

CHECKS(点検)

1100−1130 EN EMBARK(出航)

1130 DEPARTURE BRIEF(出航後ブリーフィング)

1500 PILOTAGE(水先案内)

1415 PROCEDURE ALPHA(アルファ進行)

1500 BERTH(バース・着岸)

CN DEPARTS(誰かが下艦)

1600 DRESS SHIP(満艦飾)

2030 SELF DEFENSE FLEET RECEPTION
(海上自衛隊艦隊レセプション)

時々わからない用語がありますが、概ね了解しました。
CNというのは「Chief of Navy」のことぢゃないかと思うがどうか。



環境からは隣の「ホバート」が見えます。
こ、これは駆逐艦・・・・っ!



Y-3桟橋のパキスタン海軍の艦が見えています。
なんて盛りだくさんな眺めなの。



艦橋レベルから甲板まで降りてきました。
ところどころに木製ベンチがしつらえられていてちょっと和みます。

乗員の休憩に使うらしく、これが結構あちこちにあるのですが、
縄で繋いで倒れないようにしてある光景は自衛隊では見られないものの一つ。

そしてベンチの右側のメッシュのバッグには紙コップが装備されていました。

ところで、Kさんは観艦式本番前日、横須賀での抜錨を見てから
車で先回りして観音崎展望園地でお見送りをされたそうです。

送っていただいた写真に「スタルワート」もいました。



赤いカンガルーと南十字星のホワイトエンサインが確かに。
この甲板を歩き、艦橋に足を踏み入れたのか・・・・。

この時艦艇の皆さんは本番前に相模湾で一晩待機したようです。


続く。