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ビスマルク砲台弾薬庫を爆破せよ〜映画「青島要塞爆撃命令」

2020-07-06 | 映画

映画「青島要塞爆撃命令」、最終日です。
飛行機を不時着させ山中を彷徨っていた真木と二宮両中尉は、
牢獄から出されてどこかに連れて行かれることになりました。

なぜか純白のチャイナドレスを着た楊白麗が
ちゃっかり助手席に乗り込んでおります。

「存在と非存在」の将校がなぜか自ら車を運転しています。

まさか裁判もせずに処刑するつもりなの?
軍人なら死刑にはならないし、スパイだと判断されたのなら
その前に情報を聞き出そうとするはずなのですが・・・。

しかし、そこで異変が起こりました。
白麗が何を思ったか横から足を出してアクセルを踏み込んだのです。

崖から乗り出した車を引き上げるために将校は
二人に綱を持たせ、よりによって白麗に自分の持っていた
機関銃を作業の間預けたりします。

ありえねー。白麗、一体どう言う立場?
ってか、車を暴走させた女に武器を預けるって何考えてんの?

知恵の足りない将校のおかげで、二人は無事綱を放して
車もろともドイツ兵たちを谷底に落とすことに成功。

そこでなんと白麗、将校から預かっていた機関銃を二宮に手渡したのです。

もしかしたら二人を助けるつもりだった?

奪った銃で無事全員を射殺し、三人は逃げ出しました。

とにかくこの映画のいかんところは説明が全くないことで、
二人と白麗の間になんらかの意思疎通、

「助けてくれるつもりで牢獄であんなことを言ったのか」

とか、

「兄さんを殺したのはともかく、わたしを死刑にしなかったお礼あるよ」

とかいう会話があって然るべきだと思うのですが、
全ては無言のうちにことが運んでしまいます。

リアリティ?・・・・・それはないか。
おそらく単に尺が足りなかったのだと思われます。

谷間の吊り橋を渡ろうとしたら、渓谷の上からドイツ軍が撃ってきました。

最後の二宮が橋を渡りきらないうちに機関銃の弾が切れ、
橋の向こうにはドイツ軍が迫ってきています。

二宮は橋の上から手榴弾を投げますが、

なんと自分がいる橋を破壊してしまいました。
うーん、二宮、うっかりさんなのかそれとも二人を救うためか。

谷底の水のない渓流に真っ逆さまに落ちていく二宮・・・。
(-人-)

こちら艦隊司令。

「明朝午前8時、朝陸軍の攻撃に呼応してビスマルク要塞にむかって総攻撃を行う!」

ちょっとお待ちください。
なぜビスマルク要塞限定?

それに海軍軍人なら

「明朝マルハチマルマル」

って言わなくちゃ。(お節介)

加藤長官の苦渋の決断で航空攻撃は外されることになり、
呆然とする大杉少佐。
おまけに艦隊幹部がよってたかって

「飛行機など役に立たん」

「役に立たんどころか邪魔になる」

と笑いものにするのです。

「空軍の父」ビリー・ミッチェルも、航空機導入については、
海軍からえらく反対されて邪魔をされたということですが、
第一次世界大戦時にはまだまだ航空機は有効な武器として認められず、
とくに大艦巨砲主義の海軍軍人たちには全く相手にされませんでした。

大杉少佐、飛行機推進派の加藤長官からは

「いや、すまんかった」

とか謝られてしまい唇を噛みしめ涙を浮かべるのでした。

実際には青島に航空機は偵察任務のために投入されていました。
カメラは搭載できないので(ドイツと違ってカメラが高杉で)
偵察員が空から見た図面を書くのですが、陸軍将校に見せても
まったく信用されなかったということです(涙)

しかし、そのとき絶望かと思われた真木がひょっこり、
ジャンク船で「若宮丸」に帰還してきました。
(あれ?白麗はどうなったの?)

大杉少佐、なぜか艦橋デッキでチャートと三角定規を机に並べ、
作戦会議をアウトドアでしている艦隊司令部にやってきて、
帰ってきた真木の情報から、

「ビスマルク要塞の弾薬庫を飛行機で狙うといいんではないか?」

というわりと誰にでも思いつく作戦を具申しました。

「わかった。総攻撃は予定通り行うので『若宮丸』は単独行動せよ」

それって、勝手にやってろって意味よね。

こちら航空隊。
明日8時の艦隊総攻撃が始まるまでに、たった一機の水上機で
どうやったらビスマルク砲台を叩くことができるのか。

「若宮丸」と砲台の間を二往復している時間はありません。
そこで砲台の近くで侵入した補給隊が待機、燃料と弾薬の補給を行い、
あらためて砲台を攻撃するという作戦が立てられました。

補給隊を指揮するのは大杉少佐。
海から上陸するとそこは断崖絶壁なので、それを突破して
敵の監視を掻い潜り合流地点に到達というものです。

これってノルマンディー上陸作戦の「オック岬の戦い」がモデル?

2隻の小船で上陸した補給隊、各自が武器弾薬を背負って
海岸線から進入を始めました。

各自が木の葉っぱを持って移動しているのを見て
映画「1941」を思い出すのはきっとわたしだけでしょう。

「オック岬」と違うのは、合流地点に到達するために
崖を上るのではなく降りていくこと。
これ、本当にやってるんですよね・・。

スタントマンを使っているとは思いますが、なかなかすごい。

 

さて、こちらは若宮丸。
早朝、艦隊の総攻撃の時間にならないうちに、「若宮丸」は攻撃され、
なんと1発の砲撃であっさり沈没してしまいます。

誰が砲撃してきたのか全く説明がないのですが、ビスマルク砲台かな?
砲台が艦隊ではなくわざわざこの船を狙ったのかは謎です。

「総員退艦!」

水上機なので船が沈む前に海上に出ることができます。

沈みゆく「若宮丸」を見守る乗員たち。
ここであまりにもベタな「海行かば」のBGMが流れます(´・ω・`)

そして最後の瞬間敬礼を・・・。
だが佐藤、貴様のその敬礼は陸軍式だ。

ちなみに佐藤充(まことって読むそうです。今までみつるだと思ってた)
の父親は
陸軍軍人で、久留米連隊に所属していたそうです。

ビスマルク砲台に戦闘機と会戦するために飛んだ国井・真木の飛行機。

ベルゲ中尉が銃手を務めるタウべと交戦します。

ところが案外あっさりと勝ってしまいました。
たぶんこれも尺の関係で空戦に時間を割くことができなかったのでしょう。

「引き潮だ!」

補給予定だった入江に水上艇が入ってこられるだけの深さがありません。
仕方なく全員が泥の中を沖に向かって歩いていきますが、海軍たるもの、
引き潮の時間くらい織り込んで作戦立案するべきだと思うがどうか。

ぬかるみをよたよた歩いているうちにドイツ兵に見つかってしまいました。

「ヤパーナー!」

上から攻撃されて何人かは倒されてしまいます。

それでも銃弾の飛び交う中、必死で補給を行う補給隊のみなさん。
∠( ̄^ ̄)

そのとき草むらから昼寝でもしていたようにむっくりと
起き上がる人影がありました。

あれ・・・たしかこの人吊り橋から谷底に真っ逆さまに落ちたはずなのに。
あれで生きてたってのも奇跡すぎるけど、なぜこんなところにいるの?
頭に包帯までして。

全体的にこの映画説明省きすぎ。

おまけに二宮、どこから調達してきたのか、ドイツ軍の背後から
マラカスじゃなくてパンツァーハレ、棒型手榴弾を投げて援護を行います。

急にドイツ軍の攻撃が止んだので訝しむ二人ですが、
まさか二宮が援護していたとは夢にも思っていません。

「それでは行ってまいります」(無言で)

だから佐藤、その敬礼陸軍式だってば。

無事補給を終え出撃です。
この後補給隊の皆さんはどうやって、どこに帰還したのか。

0800、艦隊総攻撃の時間となりました。

「全艦湾内に突入せよ!」

マストにはZ旗が翻り、オーソドックスに「軍艦行進曲」が始まります。
映画で「軍艦」を使えた最後の時代だったんですよね・・・。

総攻撃が始まると、実際の青島攻略戦での海軍の援護は、
兵力:巡洋艦6、砲艦4、海防艦9、駆逐艦・水雷艇31、
特務艦艇18隻という陣容であり、さらに艦砲射撃は、

「周防」参加10回 発射弾数349発

「石見」9回 277発

「丹後」7回 160発

「沖島」5回 83発

「見島」2回 44発

「トライアンフ」8回 248発

というものでした。

「トライアンフ」は英海軍の戦艦ですが、他の日本艦は
すべて日露戦争の戦利品としてロシアから召し上げたものです。

それに呼応して火を噴くビスマルク砲台。
実際には砲撃ではなく、水雷艇の魚雷攻撃によって
巡洋艦「高千穂」が沈没しています。

こちら日本軍を迎え撃つドイツ軍陣地。

二百三高地再び。

米、英、仏、蘭、西の観戦武官が日露戦争でミラクルを起こした
帝国陸軍の突入を見守って(監視して?)いるので、実際は
この時歩兵は占領した前進防御基地に配されています。

英国陸軍も混じっていましたが、これは英軍の要請であり、
さらに日本の領土的野心を勘ぐられないための配慮だったといわれます。

青島攻略戦は、実際は二百三高地ではなく、砲撃戦となりました。

もちろん歩兵が突入しやられるといったこともあったと思いますが、
まず砲弾で敵要塞を破壊し、そののち歩兵が突入というやり方で
モルトケ・ビスマルク砲台を占領していったのが実際の作戦です。

ドイツの偉大な将軍の名前を冠した砲台をどちらも落としたドイツ軍は、
負けを悟って残りの砲台を自爆させていったということです。

それはともかく(笑)映画では飛行機が勝敗を決したことにするため、
弾薬を積んだ汽車を攻撃するという作戦が描かれます。

前回よりはアップグレードした爆弾投下装置をインストールし、
汽車を狙って投下していきますが、

敵(ちうかD51の機関士)も必死。
石炭をフルで焚いてスピードを上げ、トンネルに逃げ込もうとします。

彼らの所持する爆弾はたった5発。
この作戦が失敗したら日本が負ける!という背水の陣で、
狙いをすまして(というか当たる確率低そうな装置だけど)
慎重に投下して行った結果、最後の1発が・・・、

トンネルに入る直前の後部車両にヒット。
汽車は爆発を起こしながら格納庫に突入していきました。

格納庫内部に汽車が火種を持ち運んでくれたようなものです。
派手に誘爆を起こし、砲台は大爆発を起こしました。

それを海岸線から観ながら快哉を叫ぶ補給隊の水兵たち。

やるべき任務を果たし、感慨深げにその成果を眺める大杉少佐。
これで青島要塞爆撃作戦は成功し、日本の勝利につながりました。

そしてそれをどこからか眺めている二宮中尉。
彼ら全員がなんとか生還できることを祈るばかりです。

ちなみに日本陸軍の損害は戦死416名、英軍は61名。
これに対しドイツ軍の損害は戦死210名、傷病死等150名で、
残りは全員捕虜となり、対戦終了まで日本で収監されています。

日本軍の戦死者は陸海軍合わせると711名とドイツ軍より多く、
これだけやったなら青島の権益をもらったところで
なんの文句があるのか、といいたいところですが、ヨーロッパや
アメリカ にしてみれば俺たちの帝国主義は綺麗な帝国主義、
日本の帝国主義は領土的野心だってことで、このあと
日本を経済的に追い詰めるために動いて行ったわけですな。

パレ赤の終という文字で映画は終焉します。

ところで楊白麗、いったいその後どうなったの〜?!

 

終わり。