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海幕長巡閲〜平成29年度海上自衛隊遠洋練習艦隊帰国

2017-11-05 | 自衛隊

練習艦隊の帰国行事というのは、岸壁にいた実習幹部が「かしま」に乗り込んで、
帽触れをして出航していくというものと違い、理論的にはもう少し前から
帰国して帰港して乗員はすでに家族とも邂逅を済ませているわけですから、
形としては

1、岸壁でまず帰国行事を行い

2、もう一度「かしま」に乗り込んで

3、「かしま」乗員と練習艦隊司令に敬礼しつつお別れ

4、陸の上から帽触れ

5、「かしま」乗組員で下艦する乗員たちが乗組員と練習艦隊司令にお別れ

6、陸の上から帽触れ

7、なぜかもう一度新任幹部たちが乗り込んでいく(荷物を降ろすため)

側からは何回も乗ったり降りたり乗ったりおりたり乗ったり、
を繰り返しているように見えるものです。

なぜ「かしま」から降りてくるところから始めないのかという気もしますが、
それだと式典(海幕長への儀仗礼や挨拶)の前に帽振れをすることになり、
いきなりクライマックスがきてしまうからでしょう。

この形式が海軍時代からのものだとすれば、式次を考えた昔の中の人も
「乗ったり降りたり」を致し方なしと断じたに結果に違いありません。

さて、式典開始の時間が近づいてきたため、アナウンスによって
「かしま」から新任幹部と見学の人たちが降りてきました。

家族たちはテントの下などの観覧席に戻り、
岸壁では儀仗隊と音楽隊が定位置に着きました。

式典の音楽演奏は横須賀音楽隊。
何があったのか、全員がニコニコ笑ってますね。

まず、岸壁から練習艦隊司令真鍋海将補が乗艦します。
皆が岸壁に整列した後、一人下艦してくるという演出?のためです。

大きな自衛艦旗を持って参加している人も。
後ろの駆逐艦の満艦飾の彩りと合わさって大変華やかな雰囲気です。

儀仗隊は一度艦首部分に移動し、改めて行進して元の位置に戻って行きます。
これも昔からそう決まっているからやっているんでしょうね。

伝統墨守の海自にはいたるところに合理性より形を重んじる部分が残っていそうです。

儀仗隊と音楽隊が定位置に着いたところでアナウンス。

それによると海幕長が入場し儀仗礼行うのは10時半ということでしたが、
時計を見るとまだ10時になったばかりです。
30分この状態で待つのかと思ったら、音楽隊が演奏開始。

最初の曲は確か「ナショナル・エンブレム」であったと記憶します。
ナショナルエンブレムとはつまり国家を象徴する紋章や徽章のことで、
翻訳するならばそのものズバリ「国章」でいいはずなのですが、
どういうわけかこの行進曲の日本名は「国民の象徴」となっています。

せめて「国家の象徴」くらいにしてくれないと、国民の象徴という言葉から
日本の国章である「菊の紋」を想像することは全くできなくない?

と最初に原題を知った時には思ったものですが、元々この曲は
1902年にアメリカ人のエドウィン・バグリーによって
「国家の紋章」、
つまりアメリカのあの、ワシが左足にオリーブの枝、右足に矢を掴み、

「E Pluribus Unum(ラテン語: 多数から一つへ)」

が書かれた布をくわえているマークに敬意を評しているものです。
そして曲の第一テーマにはアメリカ国歌そのものが使われています。

国民の象徴 バグレー作曲 海上自衛隊東京音楽隊


つまり、この曲名の「国章」はアメリカのそれであり「星条旗よ永遠なれ」と同様の
アメリカ讃歌であるわけですが、
「国民の象徴」というタイトルは曲訳しすぎて
元々の意味から乖離してしまい、
自衛隊でも頻繁に演奏されるようになったのでしょう。


深読みをすれば、本式典には第7艦隊のフェントン司令官もご来臨していたので、
在日アメリカ軍に敬意を評してこの曲を選んだとも考えられます。

音楽演奏が終わると、スネアドラムのリズムに乗って、遠洋航海を終え、
帰ってきた新任幹部が行進してきました。

 

練習艦隊司令官始め幹部が「かしま」艦上から見守る中、
艦尾から艦首方向に向かって一列の行進です。

5人ずつの列になって順に整列していきます。

気がついたのですが、これから部隊に配属される彼らの胸には、
自衛官がつけている名札などのバッジが全くありません。
何人かの胸に見えているのは体力徽章のみ。

つまり今の彼らを工業製品にたとえるならば、江田島の幹部候補生学校で
自衛官として「製造」され、遠洋航海による厳しい耐性試験と品質チェック後、

出荷前の出来立てほやほや、真っさらな状態でここにいるわけです。

彼らはこれまでの慣習どおり、遠洋航海を終えて日本に帰国する途上、
自分の配属先を告げられ、あるものは志望通りになったと意気揚々、
あるものは希望にそわず意気消沈と、悲喜交交で今ここに立っているはず。

それらも毎年、繰り返されてきたおなじみの光景です。

彼らの何もない胸にはすぐにその配属が書かれた名札が、そして
何年か経つにつれ体力徽章の代わりに?防衛徽章が増えていくのです。

男性幹部に続き女性幹部と最後尾にタイ王国からの留学生がいます。

一番右側の女性自衛官はこの右側の曹士の小隊を率いる隊長で、
行進止まれの号令も彼女がかけていました。

全員が帰国式典を受ける位置で整列を終えると、司令官が
「かしま」から降りてきます。

練習艦隊司令官真鍋浩司海将補は防衛大学校第28期卒業、84幹候。

平成28年12月付で 第62代練習艦隊司令官に着任しました。
昭和59年海上自衛隊入隊以来の配置は以下の通り。

海上幕僚監部人事計画課制度班長兼要員班長
海上幕僚監部人事計画課人事調整官兼企画班長
第3護衛隊司令第一護衛艦隊幕僚
統幕運用第1課運用調整官
佐世保地方総監部防衛部長
自衛艦隊司令部作戦主任幕僚
第3護衛隊群司令

(防衛省HPより)

胸に勲章?がいっぱい・・・。

「かしま」艦長、堀川雄司一佐、「はるさめ」艦長、樋之口和隆二佐、
そして練習艦隊司令が隊列の前の位置に着きました。

まずテントの下の来賓や家族に向かって簡単に帰国挨拶が行われます。

ここまでで30分が経過しました。
音楽隊指揮者は正面を向いて待機、儀仗隊隊長は
指揮刀を抜刀、儀仗隊は「捧げ銃」を行います。

総員敬礼をしながら儀仗礼に正対。

航空自衛隊、陸上自衛隊から一人ずつ、あと二人海自が赤絨毯にたちます。
そして儀仗隊の栄誉礼を受けます。

その後「巡閲の譜」が奏楽される中、巡閲を行う村川海上幕僚長。
抜刀した儀仗隊長に先導されて、儀仗隊の列を順番に巡り、
一人一人の隊員の顔をしっかり見つめながら歩みを進めます。

栄誉礼受礼者は指揮官の誘導で部隊の前方を右から左に向けて通過し、
部隊は通過時に気をつけの姿勢の後「頭右」の敬礼を行います。
(通過する動きに合わせて頭を右から左に動かし最大45度の位置で止める)。

部隊は受礼者が通過した後に指揮官の「直れ」に合わせ頭を正面に戻し、
「整列休め」の号令で整列休めの姿勢を取ることになっています。

執行者が観閲台等の位置に戻ったのを見計らい音楽隊は演奏を終了しますが、
どこで終わらせるかが指揮者の「腕の見せ所」というか気をつかうところです。

今回は

そらど〜ど〜ど〜れどれみ ど〜ど〜ど〜
どれみ〜み〜み〜 ふぁみふぁそ れ〜れ〜れ〜〜〜〜〜
(移動ド)

で終わりました。

こういった式典出席者の中で、音楽隊の儀礼曲がどこで終わるかということを
ハラハラしながら聴いているのは、もしかしたらわたしだけかもしれません(笑)

 

続く