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動揺〜砕氷艦「しらせ」艦上レセプション

2017-09-29 | 自衛隊

 砕氷艦「しらせ」艦上で行われたレセプション。
甲板にはここぞと「南極の石」がディスプレイしてあります。
ディスプレイ用の台は、石の形状を考慮して設計された模様。

レセプション開始の時間になりました。
案内の自衛官に連れられて、わたしたちは一列になり、

待機していた食堂から格納庫までの通路を歩いていきます。
立ち止まるわけにいかないので写真はこれしか撮ってません。

なんというか、究極の無機質な空間という感じ。
普通の自衛艦と違うのは、薄いブルーの壁の色かもしれません。

顔にマスクをかけなくてもいいように、カメラの設定を工夫して
画像をボケさせてみました。(大嘘)

格納庫のレセプション会場入り口では呉地方総監夫妻がお迎えしてくださいます。

海軍軍人というのは上に行けばいくほど外交官のような役目を期待されます。

この席上、海将が昔英国の王立国防大学に留学した時の話を伺ったのですが、
その当時ヨーロッパの若い各国軍人たちの中での日本という国の知名度は大変低く、

「日本?それ中国の一地方?」

みたいな反応をされ、ショックを受けた海将は、これではいかん!と
皆の前で例えば天ぷらを揚げたり着物を着たり(これは聞いてないけど多分)して
日本文化のアピールにこれ努められたということです。

「じゃあその頃の学生たちは今ではそれぞれの国で偉くなって・・」

「その時のドイツからの留学生は、今防衛大臣です」

今ではこんなアピールの必要もないくらい、日本文化は「イケてる」とされ、
例えばそのドイツなどでも「ヤーパンターク」は大変盛況であると聞きます。
息子がオンラインゲームで「日本人だ」というと、
返ってくる返事は必ず

「COOL !

しかし、海将の留学時代にはインターネットも普及していませんから、
今思う以上に文化の断絶というのは大きく、 日本という国の存在感そのものが
特にイギリスでは小さかったのだと思われます。

(イギリス軍人のくせに、初めて自分とこの戦艦を沈めたアジアの国を知らない、
ってのはさすがに当人に問題があるような気がしますが)

そんな中、若き日の海将が一介の軍留学生の身ながら、「日本の代表」
であるという
自覚と責任感の元に外交的役割を果たしてくださったことに、
わたしは今更ながら感謝の念を抱きました。


余談ですが、当然国際プロトコルにおける社交は全て夫婦単位になりますから、
将官はもちろん、駐在武官になるような優秀な自衛官は、それ相応の女性を
奥さんに選ばないといけないんだろうなあ、といつも一緒にこういう場に立たれる
呉地方総監夫人のお姿を拝見するたびに思います。

さらにいうと「奥さんがどんな人か」でその自衛官に対する評価というのは
微妙に変わってくるというのは周りの話を聞いていて感じることです。
 

格納庫に並べられたテーブルの周りに人が集まっていますが、
「ぶんご」や「かしま」と比べて全体的に人が少ない気がします。

「しらせ」の厨房で作られたご馳走の数々。

お刺身の船盛には「しらせ」と旗を立てるのは海自のお約束。
もしかしたらこの「艦名船盛」、海軍時代からの伝統だったりして。

格納庫には紅白の幕が張られ、国旗と自衛艦旗が中央に掲げられています。

格納庫の天井の高さには驚かされました。
「しらせ」は砕氷艦としても世界最大クラスなのだそうです。

甲板に「南極の石」が置かれているほかは何もないスペースになっていました。
甲板越しに高速道路とポートライナーの線路が美しく浮かび上がります。

甲板からは探照灯を真上に向けて4つ照らし、光の「柱」を形作るという、
自衛艦らしい派手ではないけれども小憎い演出もありました。

そしてレセプション開始。
呉地方総監池海将が、ご挨拶と「しらせ」の紹介を行いました。

最初に、

「しらせは『砕氷艦』です。『砕氷船』ではありません」

とおっしゃった時、横にいたTOが

「砕氷艦と砕氷船って何が違うの」

と聞くので

「自衛”艦”だから砕氷艦ってことなんじゃない?」

と答えましたが、そういうことですよね?

パンフレットの「しらせ」構造図より。

万が一氷山が外側を傷つけることがあっても大丈夫なように
船殻構造が二重構造になっています。
またビルジキールがないことで先代の「しらせ」の動揺が激しかった、
という話をしましたが、これを見ると、二代め「しらせ」には

「減瑶タンク

と称するものが装備されています。
このタンクによって船体の重心を移動させ、揺れを抑える仕組みだそうですが、
彼らの目的地である南極の周りには数多く暴風圏が出現するので、
こんなものではとても実際の揺れを防ぐというわけにはいかないとのことです。

「しらせ」は本年度、11月(14日)に日本を出発し、12月に昭和基地付近に到着。
そして半年後、帰国します。

神戸市長久元喜造氏のご挨拶。
今プロフィールを見たら地元灘高卒東大での官僚出身政治家でした。

続いては第六代「しらせ」艦長宮崎好司一等海佐の挨拶兼決意表明。

宮崎艦長は今年の7月に艦長に着任したばかりで、当然ながら
今度の任務が艦長としての「初南極体験」ということになるそうです。

「家族とは今でも半年に一回会えるかどうかです」

海上自衛官の奥さんって、ほんと大変だ・・・。
前回書いたように、

「南極に行ったら人生観変わりませんか?」

という質問に対して、変わります、と答えた宮崎一佐ですが、
それはどのように?とさらに聞いてみると、

「まず、一人では何もできないということを思い知ります。
人間一人の力なんて小さなものなので、協力し合わないと何もできません」

「それから、日本で暮らしている時の悩みなんてものが
いかに小さいことであるかを実感します。
特にテレビなんかでやっているニュースの類ですね。
本当にあんなものはくだらない、という境地になります」

あれ?
でも7月に艦長就任ということはまだ南極行ったことがないんじゃあ・・。

実は艦長の前職は海幕で、

防衛部運用支援課
南極観測支援班長

という役職についています。
「しらせ」の歴代艦長の前歴を見るとほぼ全員が同じこの配置なので、
艦長として南極に行く下準備みたいなことを行うんでしょう。

つまり南極のなんたるかはすでにバーチャル実感されているということのようです。


この艦長もそうですが、「しらせ」の乗組員は希望を出して配置される人が多く、
乗組が決まった時には「やった!」という気持ちになるんだそうです。

「やっぱり、南極行ってみたいじゃないですか」

レセプション会場でお話しした三尉もこのように言っていました。
一般人は一生行くことのできない南極に南極観測員以外で行けるのは、
実は自衛官だけである、というこの事実にわたしは今回初めて気がつきました。

というわけで、

一生に一度は南極に行ってみたいという君、ぜひ自衛隊へ!

(宣伝)

艦長にはペンギンさんのことも聞いてみましたよ。

「近寄ってくるってほんとですか?」

「きます。でも5m以内に近寄っちゃダメなんです」

じゃあれか、近づいてきたらニゲロ!って追いかけっこになったりするのか。
あーうらやましい。うらやましいぞおお!

地元である中部方面隊総監、岸川陸将がご挨拶されました。
存じ上げている陸将補とついこの前まで防大教官という配置で一緒だったり、
そのほかにもいくつか偶然でニアミスしていることがわかって少し盛り上がりました。

陸自からは兵庫地本の本部長である一佐も来ておられました。
本部長は最近の自衛官応募状況について

「求人有効倍率が高くなったのでなかなか難しいものがあります」

とおっしゃっておられました(´・ω・`)

地本的には「しらせ」公開をなんとか応募に結びつけたいところです。

挨拶の間、床にこれがあったので撮りました。ってか何?

殻付きのウニなんてあったのか・・・食べればよかった。

パーティーのBGM担当は、呉音楽隊の有志によるジャズバンド、
おなじみ(わたしにとっては)「マリーン・ナイツ」(ナイトはKnightの方)。

何度か彼らの演奏jは聞かせていただいてますが、選曲が通好みでなかなか渋い。
「ST. THOMAS」とか、「THERE'S A SMALL HOTEL
」とか。

最後の方、さりげにご当地ソング「そして神戸」を演奏していたのにはウケました。

これが「しらせ」カレー!

ご飯が「コーヒーライス」か「ガーリックライス」が選べました。
コーヒーライスはおそらくコーヒーを入れて炊いているはず。
カレールーはまったり系で極まろ(やか)でした。

カレーをよそっていたのが女性隊員だったのでこの方に聞いて見ると、
「しらせ」には

「士官が三人、兵隊が八人乗ってます」(ホントーにこう言った)

だそうです。

広い甲板に参加人数が少ないので、甲板はいつもこの状態。

ところで、このレセプション席上、ある司令に名刺を渡した途端、
どうしてわかったのか、当方がネイ恋のブログ主であることを看破されました。

「ブログやってますよね?」

「いやー・・人違いじゃないですか」(震え声)

一応否定してみたのですが、なぜか司令ったら妙に確信的に会話を進めてくるので、
わたしもじきに観念して、

「ということはお読みになったことが・・・?」

「それどころかもう5年くらい前から読んでます」

 

当ブログ、開設して7年ですので、ほぼ初期からの読者ってことになります。
さらに、

「他の自衛官で『エリス中尉』の名前の由来を知ってる人はいましたか?」

と妙〜に踏み込んでこられるではないですか。
思わず動揺でクラクラしながら、(ちなみに艦の動揺は全く感じられませんでした)

「いえ・・(そもそもその話が出るのは初めてです)」

エリス中尉がTVドラマ「謎の円盤UFO」のルテナン・ゲイ・エリスであることを
わたしはこれまでコメント欄以外で説明したことはなかったのですが、
やっぱりわかる人はわかっておられるんですね。って当たり前か。

「なんでその名前にしたんですか」

中尉、とついた女性キャラなら実はなんでもよかったんです。

・・・・とは言えませんでした。
実は結構いい加減なネーミングなんです司令。

 

天ぷらも、並ばずに揚がるのを待って出来立てをいただく天ぷら屋カウンター状態。
キスとアスパラの天ぷら、美味しかったです。

ここで「しらせ」の調理長が紹介され、ご挨拶をされました。
記憶に間違いがなければ、もう10年くらい「しらせ」に乗っているそうです。

「しらせで調理長をなさるくらいだから腕が良いんでしょうね」

あとで艦長にお聞きすると、

「食事は特に大事ですから、特に優秀な調理長を引っ張ってきました」


海上自衛隊というところは、みんながみんな「うち特に食事が大事」といって
優秀な調理員を血眼で取り合っているのではないか、とふと思いました。

「しらせ」で食事が特に大事であることに異論はありませんが。

呉地方総監は天幕の向こうまで調理長を送っていかれました。
皆の見ていないところでもお礼をいっておられたようです。

そうしてあっという間にお開きの時間となり、
わたしたちは
飛行機の時間があるので最初に「しらせ」を降りました。

ラッタルの下には水兵さんたちが堵列を作ってお見送りしてくれ、
女性隊員が手を差し出して、最後の段を降りるのを助けてくれます。

「しらせ」の女性隊員については産経新聞が去年取材して記事にしていますので、
興味があればぜひご覧ください。

【砕氷艦しらせ 女性自衛官に聞く】


「しらせ」は11月15日に出発後、オーストラリアのフリーマントルに寄港して
燃料や生鮮食料などを搭載してから南極に向かいます。

航海中には海洋生物や水質の調査、実験の補助を行い、南極大陸到着後は、
観測支援に加え観測棟など建物の設営など、
観測隊とともに任務を行います。

自衛艦や海自の基地で行われるレセプションで振舞われるお酒は、
このような升でいただくのですが、これは記念にいただくことができます。

この日アテンドしてくださった一佐が、なくならないうちに、
とお酒を飲まないわたしたちに升だけ持ってきてくださいました。
海外レセプション用に英文でも艦名が刻まれています。

これ、名刺を整理しておくのに便利なんですよねー。

氷の中を進む「しらせ」の艦首と搭載ヘリ、
コウテイペンギンを対であしらったマークです。

こちらは飛翔する(というか泳いでる)アデリーペンギンを使用。
やっぱり「しらせ」のシンボルはペンギンなのね・・・。

9/21皇帝ペンギン昭和基地来訪1

映像に「やばいちょっと近づいて来たやばい」というのと

「怖い。ちょっと怖い」

という音声が入っています(笑)

というわけで南極で生ペンギンに遭遇したいという方も、とりあえずは自衛隊へ!(宣伝)

 

 

終わり