ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

サバイバル番組「Naked and afraid」~"fire"

2014-10-07 | アメリカ

アメリカの「変なTVショー」をここでいくつかご紹介しました。

子供のビューティコンテストに血道を上げる人の姿や、
ゴミを溜め込んでしまった人の救済プログラム。
どうしても痩せられない人を痩せさせるビフォーアフターや、
自分が引っ越しした後の家に後から入ってきた住人が
かつての自分の家にリフォームしたのにケチをつけたり、
二つの家族の主婦だけを一週間交換する企画。
公開で子供のDNAテストをして父親が誰か明らかにする企画。

それこそ、視聴率に喘ぐ日本の番組プロデューサーが

「もしそれが日本で許されるならぜひやりたい」

と膝を乗り出すような、きわどい番組がてんこもりです。
しかも、プライバシーやら恥やら恥ずかしい体型やら、
いろんなものが世間様に明らかになるという趣旨が殆どなので、
たとえ番組そのものが顰蹙を買わず社会問題にならなかったとしても、
それに出演してくれる人が日本ではまず見つかるまい、
というものばかり。


なかでも、2013年から始まったこの番組は



その強烈さにおいてすべてを凌駕しています。

Naked And Afraid、ネイキッド&アフレイド。

「全裸と恐怖」ってなんですか?ってことですが、
この内容は読んで字のごとく、文明社会に生まれ育った人間が、
一糸まとわない姿のままで、恐怖と戦うのが趣旨。



しかも、彼らが全裸で放り出されるのは、アマゾンやアフリカ、
国内のジャングルや無人の荒野、山間地帯。

これは怖い。

服を脱がなくては行けない場所、お風呂に大きな蜘蛛が出たとき、
着衣のときの数倍怖い、という感覚ってありませんか?

これはそれどころではなく、虫やらヘビやら得体の知れない草やら、
暑さ寒さ荒天雨天に、全裸で挑戦しなければならないのです。



挑戦の期間は21日間。3週間です。
3週間の間、何の装備もなく自然の中で食べ物を探し、
寝るところを確保して、とにかく生き抜かねばならないのです。



今までこの手の「自然挑戦もの」は、アメリカのテレビ業界において
さして珍しいものではありませんでした。
誰も頼まないのに一人でジャングルやなんかに挑戦して、
その辺の虫やらなんやらを食べる男のサバイバルものは、
思いつくだけで数種類の番組を挙げることができます。

ところが、この番組の画期的だったことは



全裸で自然に挑戦するのが、見ず知らずの男女であることです。
皆さんこれ、信じられますか?

独身だったりすることもありますが、たいていは
パートナーがいる挑戦者ばかりなのが驚きです。

本人がいくら割り切っていたとしても、
だいたい彼らのパートナーは、
自分の恋人なり伴侶なりが
赤の他人の異性とそういう状況で
3週間も過ごすことに
耐えられるのでしょうか?



番組の冒頭で、それぞれの男女は「出会いの地点」から離れた場所で
全ての衣服を脱ぎ捨てます。

そして、出会い地点に向かって歩いていき、ジャングルなり山中で

いきなりネイキッドなパートナーと初対面となるわけです。

人によってその出会いのテンションは全く違いますが、
この二人はいきなり初対面の相手と全裸でハグしあっています。
これはどちらかというと少数派で、大抵は握手か、挨拶だけか、
・・・・いずれにしてもお互い遠慮があるのが普通です。

皆さん、それにしてもあらためてアメリカ人っちゅう連中は、
と呆れてしまいませんか?
いくら放送時には肝心なところにぼかしを入れてもらえるとはいえ、
こういう映像を世間に曝して平気という意味で。

じつはこの写真は、ぼかしが入っておらず、ブログに乗せるのも
ためらわれたため、後から画像処理をしたものなのですよ。



身につけて良い、あるいは携帯してもよいものは
ディレクターから渡されたアクセサリーを除き、たった一つだけ。

男性はサバイバルナイフを持ってくることが多く、
女性はライターや磁石などであることもあります。
番組から渡された一つの布袋に、その大事な道具を入れて持ち運びます。




二人のバッグの中にはこのような地図もあります。
いつ見ても漠然としすぎてこんなのでわかるのかと思うのですが。



取りあえず二人は第一日目を過ごす場所を求めて移動。
アメリカ人は初対面同士は大変友好的ですが、だからといって
気が合う確立は日本人と同じようなものでしょう。

まだこの段階では何も分かりません。

というか、そういう相手に自分の全てをいきなり見せるこの状況って。



このレイティングですが、今までの人生における経験値とか
タフネスとかを10段階評価して、それがサバイバル後に
どのように変化するかが再評価されます。



全員がどういうわけか、この形のネックレスを着用しています。
推測ですが、これにはICチップが埋め込まれているのではないでしょうか。

決してこの番組はやらせではないので、万が一の事態に備えて
このような保険をかけているのかと思われます。



初対面の相手に対する感想などをハンディカムに録画します。
第一印象はたいがいそう悪くはなく、海兵隊出身の男性の
パートナーは、そのことについて

「何だかロマンチックな期待をしてしまったわ」

と述べています。
もっとも彼女の

「ソルジャーなら自分のことを極限の状態でも守ってくれるかも」

という期待は、後に粉々に粉砕されることになるのですが。



互いに知恵を出し合って、とにかく生きていかなくてはいけません。
なにしろ、衣服のみならず、水も食料もなく、サバイバルの為には
まずそれらを確保することが先決です。

こういった行動が始まるや否や、彼らは相手に対する
最初にわずかに芽生えた異性としての興味を失います。
それは画面で見ていてもはっきり分かるほどで、
生きていく為の能力の高さに男女はありませんから、
案外だらしない男性に女性が苛立つケースは多いのです。

そうなってくると最初から服を脱いで現れている相手には
何のセクシュアルな欲求も起こらなくなってくるようです。

いかに人間の初期的な性的欲望が、
空想力で補われたところに構築されるかがわかる実験ですね。



上手くやっていけるかどうかは全く相性です。
あとはどんなときにも落ち込んでしまわない明るさでしょうか。

さて、酷暑の島に流された二人と違ってジャングルや砂漠組は、
何らかの方法で火を起こすことから始めます。
ライターを持ってきているカップルはあまりいないようで、
夜に気温が下がったり、あるいは猛獣が出るような地域では
火を起こすことが最初のイベントとなります。



最初の仕事は今夜のシェルター、そして、火。



こういう作業もある程度娑婆で経験を積んでから来る男性も多く、
ごくごく少数のカップル以外は案外簡単に火を手に入れます。



火を起こすことに成功した二人。
すっかり和やかな雰囲気に。



ハンディカムに語りかけながら、思索的な命題に
自分で迷い込むサバイバーもいます。
極限状態におかれ、生きていくこと、そのために
他の命を奪うことについて考えずにはいられなくなるのです。



パートナーとそのような話をする人はいません。
なぜなら、パートナーとは根源的な生への疑問や、
平時なら起こるかもしれない相手への興味ですら、もはや何の意味もない、
サバイバルの為の同志であり、この原始生活では
形而下の空想に遊ぶより先にすることがあまりにもたくさんあるからです。

もっとも、アメリカ人でなければそういう人もいるのかもしれませんが(笑)



この二人も火を起こしています。
適当な木が見つからず、かなり苦労したのですが、

 

火を手に入れたぞー!ということでこちらも抱き合う二人。
アメリカに住んでいると日本人であるわたしも普通に挨拶には
ハグをするのですが、
何も着ていないのに彼らはしょっちゅうビッグハグします。

いつもの習慣であることに加え、互いが裸体であることなど
この段階では何とも思わなくなってくるのかもしれません。



下にごちゃごちゃと字がありますが、このとき見ていたのは

ニューシリーズ、つまり再放送ではないバージョンで、
そのときには番組宛に同時進行で感想が送られるのです。

みんなでツッコミを入れながら楽しむという趣向ですね。



ちなみに黒地に白字は、わたしが聞き取りの為につけている
ディザーブルモード、すなわち身障者用の字幕です。
ネイティブの発音などなかなか聴き取れないので、
わたしはアメリカにいるときにはいつもこれのお世話になります。

彼女は言っています。

「やっと火がついたわ。
これからわたしたちのために何か食べ物を考えないと」

そう、食べ物。
生きていくには食べ物がないと。

しかし、この大自然の中では大変なんだ。これが。




続きます。