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あんまりな菅野大尉

2010-12-09 | 海軍
菅野大尉について散々マンガで描いてきたのですが、まともな肖像を描くのは初めてです。

昔、私の好きなネイビーシリーズ「鴛渕孝大尉」の記事で、
「菅野大尉には強引に口説かれてみたい」
などとお叱りを受けそうな妄言をついぽろりと出してしまったエリス中尉ですが、実在の人物であった海軍搭乗員に対し配慮して不埒なことは妄想といえども控えているにもかかわらず、このようなことを菅野大尉にだけは書いてしまうというのは何故なんでしょうか。

菅野大尉があまりにもキャラクターとして大きくなりすぎ、却って現実感が薄くなっているのでしょうか。


先日200日を迎えたこのブログですが、100日記念サマリーで
「菅野大尉の検索が毎日一つは必ずある」
と書いたのを覚えておられますか?
いまだに毎日誰かが「菅野大尉」を検索してこのブログに来られます。

一度、菅野大尉を画像検索したら、なんと自分なりのイメージでキャラクター化した菅野大尉(ワンピースの登場人物風味)を画像バンクで売っている人までいて驚いてしまいました。

なぜこんなに菅野大尉がこれほど愛されるのか、そのうち語ってみることにやぶさかではありませんが、今日は菅野大尉の容姿について語ってみたいと思います。

鴛渕大尉や白根斐夫少佐のように皆が口を揃えて「美青年だった」
という人物には押し並べて特徴があります。
彼らはその前に「長身の」とつくのです。

写真というものは、実物を伝えているようで伝えきれない部分が必ずあるように思うのですが、特に団体写真や素人写真しか残っていない軍人については、真実の容姿はなかなか後世に伝わりにくい気がします。
(軍人の容姿だあ?と怒らないでくださいね。単に事象として述べているだけですから)

「美男子だった」「いい男だと皆が言っていた」と言われる伝説の軍人さんも、素人写真では特に秀でた美青年に写っていません。

しかし、実物の、生きて動き出したときに醸し出す雰囲気が美青年のそれであったというのは、紛れもない事実なのだろうなあと思います。
長身であった、というのは全体の雰囲気に「美青年度」を加味する上で重要なエレメンツであるのかもしれません。

TОの知り合いの女性の顔写真を見ていて
「わあ、この人美人!」というと
「うーん、でもね、写真が綺麗でも実物がきれいに思えないってことはあるもので」
と言われました。

逆もまた真なりで、写真でしか知らない人物の魅力というのは、本当に100%伝わっているかどうかは怪しいものだとおもうのです。

これは、別に海軍とは何の関係もない一般論ですが。




さて、菅野直大尉です。

遺された写真から見ても、虻のような紫電改を見て
「隊長みたいだな」と隊員の誰かが言ったという話から考えても、菅野大尉が小柄で「ブルドッグのような」男であったことは確かなようです。

確かに、菅野大尉に「美青年だった」という評判はありません。
顔だけ見ると結構整った、端正な顔をしているのですが。

しかし、魅力があります。
大尉であった頃、つまりまだ23歳の戦死直前の写真はどれも悪戯っ子のようで、
特におにぎりを頬ばって食べている有名な写真はいかにもこんな男の子がいたのだろうなあと思わせるビビッドな存在感を強烈に放っていて、こんな人物と一緒にお酒を飲んだら楽しいだろうと(飲めませんが)思わされます。

菅野大尉は周りの証言によると、ずいぶん人によって受ける印象も、おそらくは接し方すらも違っていたようです。
あるものは「飲みっぷりと言い粗野な態度と言い、まるで与太者みたい」
といい、別のものは同時期に
「颯爽として溌剌、凛然たる若武者の風格というか、気品すら感じた」
という真逆の印象を残しています。

繊細な精神の持ち主が戦争という事態の中で自分をどう遇するかについてさえも若く柔軟なその心を極限にまで追い込んでいたのではないかと思わせる証言です。







さて、ここで、この画像を見ていただきたいのですが、
これは、戦記マンガの永遠の名作、「紫電改のタカ」からのスケッチ。
こういうの、描くのは楽なんですよ。
菅野大尉の画像は一時間かかりましたが、こちらは十数分で描けてしまいました。
もっとも、滝城太郎の方はちばてつや独特のタッチまでマネられないので微妙にパチもの臭がするスケッチですが。

御存じない方のために説明しておくと、この漫画は松山空剣部隊という実在の部隊に、
坂井三郎、源田実、白根斐夫、そして菅野直という実在の人物が登場します。
実在の人物は出てきても、全てが史実とは全く異なります。
それも、マンガであるからには当然といえば当然なのですが、もっとも
「あんまりだ・・・・」
とおもったのが、この菅野大尉。
なんですかこのヒゲダルマはっ。

敢えて主人公の滝城太郎と並べてみたのも、
いかに冒頭の菅野大尉が滝城太郎と似ているか
ということを皆さんに言っておきたかったからなのですが、
知らない人が見たら搭乗員服が菅野大尉だって思いますよね。

私なぞ、菅野大尉の名前を知ったのもこの漫画が最初だったので、てっきりこんなオヤジなんだと思ってましたよ。
菅野大尉が戦死したとき二十三歳なんて、信じられませんでしたよ。
ついでに言えば、白根少佐は「美青年」ということは忠実に表わしているようですが・・。
なんだってあんなに髭が濃いんですか。
見分け易くするためですか。


・・・・・あ、そうか。


白根少佐も、菅野大尉も、実物に忠実に表現すれば滝城太郎になってしまうからなんだ。
つまり、三人ともキャラが被ってしまうということなんでしょうね。


実物の菅野大尉は容姿もさることながら、向こう見ずで一本気、ファイトあふれる熱血漢と、伝えられる性格はまるでマンガの滝城太郎のようです。
敢えて作者が描き分けをしたということなのでしょうが、

それならなぜ、創作の人物を使わなかったのでしょうか。

さっきも言いましたが、この漫画の魅力は戦記上の実在する人物が絡むこととは切り離せないのです。
多少(かなり)実物とは違っていても、それが作品の魅力となっていることは否定できません。

少なくともわたしは
「本当にいた人物」が出てくるから、この漫画が好きだったような気がします。