ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

だだだだ~んとだだんだんだだん

2010-06-29 | 音楽



サンフランシスコ空港で買ったおみやげTシャツです。
このGOVENATORという単語を辞書で引いた人はまさかいませんね?
これは

GOVERNOR (知事)+TERMINATOR(アレ)=GOVENATOR

ですので念のため。

サンフランシスコにいると、州の広報番組で知事の演説なんかもよく目にしたのですが、
映画の場面でもないのにこの人が映ると「まじですか?」という目で見てしまったものです。
だって、お肌なんか異常ににつやつやぴかぴかで、ちょっと作り物めいてるんですよ。
やっぱりターミネーターなんじゃないかってくらい。
なんか、途轍もなく不自然なホルモン療法やらなんやらをやってるのかも・・。

さて。

だだだだ~ん


この曲はなんでしょう。
そう、ベートーベン作曲、第五交響曲「運命」第一楽章の第一主題ですね。
運命はかくのごとく戸をたたく、という
知らない人はいないテーマです。

いきなり余談ですが、あるオケ関係者から聞いた話。
そして、クラシック音楽関係者なら誰もが知っている話です。
もう亡くなられたある指揮者が、あるオケでこの曲を振る(指揮をする、という意味)ことになりました。
この指揮者、一般にとても有名な方だったのですが、音楽関係者の中ではその音楽的能力についていろいろな(よくない方の)伝説がございました。

中でも、「絶対音感がないのではないか」という噂が。

 音楽家にとって絶対音感が必ず必要なものか、については諸説あるのですが、少なくても指揮者という商売には、曲の解釈やその音楽運びそのものに加え、オーケストラという大所帯を一本の棒で引っ張っていくための「将器」、カリスマ性というものもまた要求されます。
絶対音感がない、ということは、ひとりひとりが独奏者でもある、うるさい音楽家集団であるオーケストラと渡り合うのには、ともすればかなり不利なポイントでした。

そして、意地の悪さでもかなりの楽団員たち、この指揮者の絶対音感を試そうとして、みんなでこんな打ち合わせをしました。

この指揮者のゲネプロ(総練習)のとき、あまりに有名なあの一楽章を嬰ハ短調、つまり本来のハ短調から半音だけ上げて演奏しよう、というのです。
絶対音感どころか、この曲を聞きなれている程度の人でも、もしかしたらすぐに気がつくのではないかという悪戯です。

はたして、この指揮者は、指揮者であれば当然最初の一音で気づくはずの音の違いに全く気付きませんでした・・・(T_T)
指揮者以外が笑いを噛み殺しながら、第五交響曲は嬰ハ短調のまま進んでいったそうです。嗚呼。

結局どうなったのかというと・・・
「オーケストラのメンバーの移調能力(この場合音を半音上げて演奏すること)にバラツキがあり、
しばらくたったら音楽が崩壊した」
ということでした。
「運命が崩壊」した後、全員が爆笑したそうです。
そのときの指揮者氏の様子までは伝わっていません。


この、あまりに有名な運命のテーマ、だだだだ~ん、の4音です。

それでは

だだんだんだだん

これは何でしょう。
そう、「ターミネーター」のテーマですね。

このたった5音の、それも音程もないリズムだけのテーマ。

この5音を聴くと、瞬時にシュワルツェネッガーが「あいーるびーばああーく」とドイツなまりで言いながら溶鉱炉に沈んでいくお姿が浮かんできます。
この5音の持つパフォーマンスの力はものすごいものだと思います。

わずかの構成音で多くを表現している、ということも、その音楽の持つ能力を左右する一つの要素であるならば、このターミネーターのテーマには、運命のだだだだ~んに通じる偉大さを感じます。

この記事を書くために調べたのですが、このだだんだんだだんの作曲をしたのがエリック・フィーデルということしかわかりませんでした。
この人は他にも映画音楽を作曲しているものの、たいした実績をターミネーター以外にあげていず、そのターミネーターもシリーズ3以降は別の作曲家に変わっています。

しかし、これが(曲と呼べるとして)近代における映画音楽の傑作だと思うのはエリス中尉だけでしょうか。

・・だけでないといいなあ。
(いつになく弱気)