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ICRPは公衆放射線防護レベルを緩和した 記事追加

ICRPは公衆放射線防護レベルの勧告基準に関して、事故後の基準を作成しました。
この勧告は、北茨城・福島などの現在の原発事故被災地の現状に合わせて、許容できるぎりぎりの基準として緊急に提唱されたものと考えられます。
従来の年間1mSvまでという基準よりもゆるいものになっています。年間20mSvは職業被曝のそれと同じレベルです。

訳文
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/rb-rri/ICRP.pdf
原文
http://www.icrp.org/docs/Fukushima%20Nuclear%20Power%20Plant%20Accident.pdf

この新しい勧告が許容する発ガンリスクの増加が以下の緑字の引用のように吉岡先生によって公衆疫学的に議論されています。


先に私は少しこの新基準の意義を私なりにコメントします。
まず、1940年代に始まったAtomic ageは70年後になって核災害時の基準をもうけなければいけないところまできてしまったということ。
次に、ICRPの基準緩和(正確には核災害時の新基準というべきです)は、次の核災害の可能性に備えた非常に現実的な基準であることです。


ひとは何れ死にます。それが過食であれ、成人病であれ、癌であれ、文明と切り離しては健康(繁栄)と死の関係を論じられなくなりました。
原子力時代での、私たちの死に方も、リアルな基準をもって受け入れなければならなくなったようです。
幸い、癌は、治療の方法のある病気ですし、私たちのような高度な技術を持つがん治療医ももっと育ってくるでしょう。
がん治療にはお金がかかりますが。

これが私たちの作った世の中です。私たちはこれからさきどのような社会を作ればいいのでしょうか。

新基準は次のことまで想像させてしまいます。以下は私の勝手な解釈です。
 人々はその土地が核(微)汚染地域<核(微)汚染地域と敢えて表現します>と認定された場合は年間20mSvの被爆範囲内であれば、住み続けられる。
 このことは核(微)汚染地域への評価は、自由経済が決定することを意味しています。
 大変なことかもしれません。
 そこでもう少し考えます。

 被災者の立場から考えます。
 A.自由経済が決定した内容に対する国家からの補償は通常ありません。株式の評価損みたいなものです。
 現在、退避を進めている土地は国家の買い上げが予定されるでしょうけれど、新基準に日本が追随した場合に1mSV以上の所はさらに広大になる可能性があり、金額が巨額すぎて、すべて買い上げの対象、とはならないかもしれません。これはいつ原子炉からの排出が止まるかによっても変わっています。政府の考えではとまる目標時期は数カ月後です。シミュレーションは未だです。
 
 土地の利用という観点から考えます。
 B.国家の土地が大量に発生します。あるいは自由経済がその価値を決めた土地が大量に発生します。これらの土地の利用は、例えば私たち医療関係者でも職業被曝線量が年間許容基準の20mSvだということを考えると、私たちにはどうってありません。つまり、居住用から産業用地への転換が進む可能性を示唆します。

 A.とB.は折り合う点がありそうです。
 しかし、産業用地にうまく転換されなかった土地は、居住用に使えますので、依然そこに住む人たちも出てくるかもしれません。かれらあるいは私たちの発癌リスクの増加分というのは以下の吉岡先生の計算でも3500万人の内、10mSVで1.75万人、でしかしそれは、もし10mSvでの自分の発癌リスクの不条理な増加とすると、0.0875%の増加でしかすぎないという計算をした場合、なんら気にせずにうけ 入れる人たちは多いかもしれない。それらの計算が、核(微)汚染地域への自由経済的評価のひとつの決定因子となるように思います。
 このとき、妊婦や子供へのリスクの見積もりは非常に重要になります。妊婦や子供のいない社会なんてありません。年間被曝線量の高い地域でのデータや高い空の上で被曝している航空添乗員のデータを検証して安全を確認することが、この先の重要な作業となるかもしれません。それが検証されなければ安心ではないという評価がうまれる可能性があるかもしれません。
 
 

吉岡先生の議論の全文を引用します(引用・転載許可済)(内はブログ主の注記)
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公衆の放射線防護レベルの緩和についての国際放射線防護委員会ICRPの忠告(3月21日)について

九州大学教授・副学長
吉岡斉(よしおか・ひとし)

2011年4月3日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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国際放射線防護委員会ICRPは3月21日、Claire Cousins議長らの名で、およびChristpher Clement科学事務局長の連名で、福島原発震災における放射線防護レベルの緩和に関するコメントを発表した。その骨子は、緊急時の放射線防護の「参考レベル」を20~100mSv(/年)とし、また事故終息後の汚染地域からの退去の「参考レベル」を1~20mSv(/年)とすることを忠告recommend する、というものである。

 日本の放射線防護関係者の中には、それを支持する者もいると聞く。しかし筆者はそれに賛成しがたい。筆者はICRPによる放射線の危険度(リスクと表現する者もいる)の見積りが過小評価であると思っているが、それについて今回議論する気はない。かりそめにICRPの評価が妥当だとしても、今回の忠告を日本政府が受け入れることは賢明ではないというのが筆者の意見である。

 その理由は、この忠告が暗黙の前提としているのが、局所的な少人数の被曝だという点である。そうした範囲内ではこの忠告は一定の説得力がある。しかるに福島原発震災は、巨大都市を巻き込んだ広域的な被曝をもたらすおそれが濃厚であり、そうした事態に対してICRPの考え方は危険である。

 日本政府は、ICRPの勧告に準拠して、国内の放射線防護基準を定めてきた。具体的には原子力安全委員会の原子力防災指針などに、そうした基準が示されている。そこにおける公衆の線量限度(平常時)は年間1mSvである。ちなみに放射線の危険度に関しては、ある集団が20000mSvを浴びると、その集団でのがん死が1名増加すると見積られている。これは言うまでもなく「直線仮説」に基づいた見積りである。これが正しいとすると、今回の福島原発震災による放射能が首都圏に飛来し、その住民3500万人が1mSvずつ被曝した場合、1750人のガン死者増加がもたらされる。これは相当に大きな数字である。

 他方、緊急時においては、平常時よりもはるかにゆるい基準が、公衆被曝に関して適用される。現行の基準では屋内退避の目安が累積10mSv、避難の目安が累積50mSvとなっている。これを首都圏に適用すると恐るべき結果が出てくる。首都圏の人口は3500万人である。この集団が一様に10mSvを浴びた場合、首都圏でのがん死の増加は17500名となる。50mSvでは87500名となる。このような大量死を容認するような基準の適用は妥当ではない。平常時と同じ年間1mSvを厳守することが望ましいだろう。

 ところがICRPの今回の忠告は、これよりもさらにゆるい20~100mSvという「参考レベル」を推奨している。これは地方の都市・農村を念頭に置いた基準であると考えられる。それをそのまま巨大都市に適用するのは大胆すぎる。同じように、恒久的な移住の基準を年間1~20mSvにしてはどうかというICRPの忠告も適切ではない。

 なお首都圏の基準と、福島第一原発周辺の基準を、ダブルスタンダードにして使い分けるのは、理論的にはありうる方式であるが、現実的には立地地域に犠牲を押しつけるものだという批判を浴びることは必至であり、実施困難である。一律に年間1mSvを適用するしか、取りうる方法は無いかもしれない。
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