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バルンガの陽のもとで

2011-03-27 20:44:19 | 東日本大震災
ウルトラQ Vol.3 [DVD]
クリエーター情報なし
バンダイビジュアル



「こんな静かな朝はまたとなかったじゃないか。この気狂いじみた都会も休息を欲している。ぐっすり眠って反省すべきこともあろう」
「反省すれば救われるというのですか?」


~『ウルトラQ』第11話「バルンガ」より


東北関東大震災および原子力発電所事故、更にその後、首都圏で実施された計画停電とその影響による混乱──という一連の出来事から、『ウルトラQ』の「バルンガ」を思い出した人も少なからずいるようだ。
ウェブ上の書き込みをざっと見る限り、さすがにフレドリック・ブラウンの「ウァヴェリー」に言及している人はいなかったと思う。「バルンガ」の元ネタはロバート・シェクリイの短編「ひる」だそうだが、そちらは未読。

さて、このバルンガ、「風船怪獣」と紹介されることが多いが、表情もなく意思表示もせず、そもそも生物という感じさえしない。
元は地球に帰還するロケットに付着していた未知の物体。それが地球上のあらゆるエネルギーを食い尽くして巨大化して行く。ミサイル攻撃も無意味、台風のエネルギーさえ吸収してしまう。電気もガスも使えなくなり、首都は完全に機能を停止する──

冒頭に記したのは、その光景を目にした或る老科学者の言葉である。彼こそ20年前、最初のバルンガ発見者でありながら、当時の学会からは受け入れられずに姿を消した奈良丸博士であった。
その言葉の前段はこう。

「君は洪水に竹槍で向かうかね、バルンガは自然現象だ。文明の天敵と言うべきか」

これだけなら、誰かさんの「天罰」発言と大差ない。が、それに対して、シリーズのヒロインである由利子は「反省すれば救われるのか」と、きわめて正しい反論を投げかけるのだ。
実は博士の息子は、地球へと帰還するロケットの乗組員であり、バルンガの最初の犠牲者でもあったのだが。
結局、奈良丸博士は発見者、研究者としての責任から、バルンガを地球外へと向ける方法を提案することとなる。
その作戦により、地球を離れ太陽へと向かうバルンガ。ラストのナレーション(ナレーターは若き日の石坂浩二)もツイストが利いて空恐ろしい。



何かにつけ「悪しき文明」の象徴の如く批判の対象になる「都市」なるもの。しかし、それこそ「文明」発祥の頃から、都市とは単なる集落ではなく、自然の脅威から人間を守るべくデザインされ、そのために機能するものであった。国最大の都市の長による「天罰」発言など、それだけで職務放棄に等しい。

自然を「征服」すべきものとして発展して来た西欧文明に対し、日本は自然と共存して来た素晴らしい国だ、という言説がある。しかし、結局それは自然の美しい側面、自分たちに都合の良い部分しか見て来なかったということなのではないか。西欧世界の方が、よほど自然と真摯に向き合って来たのではないか。
ただ、本来人間を守り、安定した生活を送らせるための機能そのものが暴走を始めたら、それを停止するのは困難である。そして、その機能をも一瞬にしてズタズタにするほど、自然の力は強く恐ろしい。かつて、多くの古代文明や国家が、都市機能を持ちこたえられず、或いはそれこそ大地震や津波や火山の噴火によって滅んで行った。
どこでどんな風に恐るべき自然と折り合いをつけ、バランスを取るべきか、適切なバランスとは何なのか。そう言えば『ウルトラQ』の原題は『アンバランス』であった。

しかし、ペシミスティックになる必要はないと思う。20世紀末のノストラダムス騒動やクライシス待望論などは、しょせん平和で恵まれた時代や場所だけの世迷い言に過ぎなかったのだ。
いま回復すべきは自然ではなく「人間」そのものである。自分は「人間」に負けてほしくはないし、まだまだ東京にも負けてほしくはない。

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