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『赤朽葉家の伝説』 桜庭一樹

2008年07月28日 | ライトノベル
   あらすじ 

祖母も母も凄絶な人生を送った。
   しかし、わたしには、なにもない

 「わたし」こと赤朽葉瞳子(あかくちば・とうこ)の祖母、万葉(まんよう)は、
“辺境の人”と呼ばれる漂泊の民サンカの人間だ。
彼女はまだ子どもの頃、のちに嫁ぐことになる製鉄工場の職工の家の近くに置き去りにされた。
少女時代に出会った、製鉄工場の社長夫人、赤朽葉タツに
「あなたはわたしの息子と結婚する」と言われ、事実、そのとおりになった。
 万葉は正直な人だけれど、嘘か真実か分からないような人生を送った。
それは激しく燃えるようで、常に怒りと悲しみが漂っている。

 万葉の子は四人。夫が女中と作ったひとりを含めて、五人を育てる。
子どもたちの名は年齢の順に、長男、泪(なみだ)、長女、毛毬(けまり)、
妾の子、百夜(ももよ)、次女、鞄(かばん)、次男、孤独(こどく)。
百夜以外はタツの命名だ。名前が運命を決めるのではないのだからとのこと。

 万葉の物語の続きは、毛毬を中心に据えて引き継がれる。
 毛毬は不良だった。「女の子」ではなく「スケ」だ。
やがてはレディースを締めるようになるし、
当時の不良ブームに乗った雑誌の取材を受けることもあった。
 毛毬には親友がいた。蝶子、通称チョーコという。
しかし何年も一緒にいられなかった。「時」がふたりを引き裂く。
 毛毬は毛毬のままであったが、チョーコは毛毬の知らない蝶子になってしまった。
 そして変わってしまった蝶子は死ぬ。まだ十代だった。
 蝶子の死を機に、毛毬は少女漫画家になる。超のつく売れっ子になる。
不良の青春を描いた作品で、社会現象になった。
毛毬は追い立てられるように自分の青春を漫画にする。
兄の泪が夭逝した為、赤朽葉家の跡取りとなった毛毬は、婿を取り、娘の「わたし」、瞳子を生む。
しかし、多忙の漫画家は、瞳子がまだ小さいうちに過労で亡くなってしまう。

 祖母の万葉がその劇的な人生を終えるとき、謎がひとつ残された。


「ようこそ、ビューティフルワールドへ。」





   かんそう 

 この物語の「空気」は、読んで数頁で頭の中に広がるけれども、わたしがそれを表現するのは難しい。
 ――田舎の大きな工場と社宅、坂の上の社長の屋敷、漂う血の匂いみたいな鉄の匂い。
 これがわたしの受けたイメージだ。舞台はこんな感じ。

 「赤朽葉」とは色の名前で、朱色に似ていて、朱色より赤味が薄い。  
調べてみたら、このような色だった。
赤というより橙。流れ出る血というより、滲み出る血の色。
 赤朽葉家の屋敷はこの色をしている。
 なんと眩しい色だろうか。
紅葉に埋もれ、夕焼け空の下では辺りを真っ赤に染めるだろうし、
雪が降ればくっきりと映える。さぞきれいだろう。

 わたしたちは万葉の物語で異世界に飛び、毛毬の物語で非日常を垣間見、
瞳子の番になって幻想を掻き消され、現実に引き戻される。
 瞳子が見つめ、語るのは過去だけれど、生きているのは現在の現実だ。
ほかのふたりに比べると、貧相といえるほどに地味だ。
そういえば、瞳子の顔の描写がどうであったか、よく覚えていない。
名前の由来になったように、目が大きくて、あとは――? 母似か父似か、祖母似か?
 しかし瞳子が、「赤朽葉家の物語」を『赤朽葉家の伝説』にするのだ。

 読者の想像を、本の表紙の赤が彩る。
(わたしにいわせれば、表紙の赤は、赤朽葉より紅 (くれない) に近いのだが)
 真っ赤な世界というのは、空に流した血の色のようで、背筋の凍る思いをするではないか。
わたしの住む町の空は、米海軍の基地から照らす光かなにかで、
夕刻、空は不思議な赤に染まる。それは思わず息を呑み、
そっと壊さないように吐き出さなければならない気にさせられる美しさだ。
あらゆる音が自分には関係のない遠くから聞こえ、
「この空を見ているのはわたしひとりだ」という気持ちにさせられる。
 赤には、ひとを否応なしに惹きつける魔力がある。

 今から五十年前の日本はこうであったのだろうか?
 虚構と現実がわたしの中で渦巻く。
 たった五十年前の自国をなにも知らない自分に驚く。これはどこ?







赤朽葉家の伝説
桜庭一樹
東京創元社 1,700円

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本は至高のもの、読書は至福のとき。

2008年07月28日 | 私信


 みなさんこんにちは。
 長らくお休みしていたブログを再開しようと思います。
 病気は小康状態のようなものです。本当のお別れのときはきちんとお知らせします。
ごく最近になりますが、ようやく本を読む余裕も出てきました、
あまり集中はできず、数頁読んで栞を挟んでしまうのですけれど。
 感想文は、休止前に書き溜めていたのが七十七冊ぶんあります。
以降読んだ四十九冊には感想を書きませんでした。

 さて、今日から週に三回を目標に、一年前に書いた感想も交えながら、
新たな出発です。月に一度はこうして近況報告もしようと思います。
今までとは少し違った感想になると思います、いろいろなところで。

                         これからもどうかご贔屓に。



ブログの存続に関わるお知らせ

2008年03月09日 | 私信


 前略
 病気の療養の為、やる気だけで一切更新していなかった当ブログの更新再開を未定とします。
                                また会いましょう。本の虫よ永遠なれ。みなみ。

旧正月の到来!

2008年02月08日 | 私信
 星はよく観るけれども最近月を観ていないなー煌煌と輝く美しい月を観たいなー 

 みなさんこんにちは!
 今日はなんの日でしょう。…………旧正月です。お約束の復活の日です。
感想文のストックは多分百冊分以上あります。なぜなら昨年八月に読んだ本の感想も消化しきれていませんから。
今になって読み返してみると、文が稚拙に思えるのであります。掲載するのを取り止めるかもしれないほどです。
読んでも感想を書かなかった本は一〇冊ぐらい。ディケンズの「クリスマス・カロル」(村岡花子 訳)は、
二ヶ月近くかけて読んだので最初のほうのあらすじを忘れて、感想を書くことができなくなりました。
ぬかった! あああぬかった! 今年のクリスマスに再挑戦するしかない!!

 絵本の絵の報告をします。この一ヶ月で、四枚描けました。
一週間に一枚のノルマを達成できているので合格です。
二〇枚で完成の予定で、今日までに一五枚仕上げてあります。
駄菓子菓子(だがしかし)! そのうち、ボツにしたものは六枚、
実質九枚しかでき上がっていないのであります! これはマズイでしょう。
計画がスタートしてから今月で六月めです。週に一枚なら睦月の時点で任務完遂のはずです。
ところが霜月までに描いた絵で、ボツにしなかったのは僅か一枚。
その絵ですら妥協した、満足のいかないできなのです。
描けば描くほどどんどん上手になるのです。過去の絵はまるきり駄作。
 いつの日にか、わたしの全力を注ぎ込んだ絵本をみなさんに見てもらいたいです。
独創的なキャラクターと誰の真似でもない塗り方のやや奇抜な明るい色が売りです。
残り一一枚は、週に二枚のペースでいきましょうかどうしましょうか。
必ずやり遂げてみせるのです。人生で一度ぐらいはなにかをなさねばなりません。
 ――こういう感じで日々絵本街道を法定速度を下回るスピードででゆるゆるとドライブしているのですが、
絵のほうは試行錯誤の繰り返しなのに、ストーリーのほうは
ミヒャエル・シューマッハをもブッちぎるパワーで次のステップへ登りつつあります。
単刀直入に説明すると、“次の絵本”のストーリーが存在するということです。
ある晩まどろんでいるわたしのもとに、聖霊が訪れたのです。
無神論ですがまさに天啓としかいいようのない閃き。素晴らしい。
聖霊には精霊としてゲスト出演していただくことになりました。

 さて。わたしがここでこうして話していることは(感覚的なことなので「喋ってはいない」というツッコミはなしです)、
一体どのくらいが実現するのでありましょうか。いやはや楽しみですな。
 これからまた読書感想文を投稿していくのですが、更新は週三日程度にするつもりです。
うたかたの如く消えた意気込みはなかったことに致しましょう。
ここからみなみワールドは新たな章を刻むのです。聴こえてくるのはドヴォルザークの『新世界』。
さあ! 心の翼を解き放ち、自由な明日へ飛び立とう!
  (みなみは仁王立ちで人指し指を天井に突きつけ、照明は絞られる。
   そのまま軽快に袖まで走り、姿が見えなくなると同時に舞台は暗転……
   柏木を鳴らすペースは速くなり、妙な掛け声とともに緞帳が降下。
   書き割りのセットの為一五分の休憩になります。
   ご飲食はロビーでお願い致します。売店はロビー脇にございます。
   お手洗いは混雑が予想されますので地下のもご利用ください。
   また、休憩が終わってからの客席への出入りはご遠慮ください。)


あけましておめでとうございます。

2008年01月07日 | 私信
 KUMA!  KUMA!  KUMA!  KUMA! 

 あけましておめでとうございます。管理人のみなみです。ご無沙汰しておりました。
「絵本に師走をつぎ込むのさ!」と意気込み、更新をお休みしていたのですが、
昨年十二月の一ヶ月で何枚絵本の絵を描くことができたと思いますか。
なんと一枚も描けなかったのです。一月になってから焦り、机に向かう日々が続くこと一週間。
今日になってやっと思い通りのものが描けたのです! バンザイ!
自分の持っている技術では描けないシチュエーションで、苦しみました。
イメージにイメージを重ね、習作をこしらえ、唸り、頭を抱え。
もうお終いなのか…………、希望が霞みました。
しかしできた! このわたしに習得できない画法などないのである! 自信満々です。

 十二月は、絵本以外にもいろいろ描かなければならない絵がありました。
例えば、クリスマスカード。例えば、年賀状。
もちろん描く描かないはわたしが決めることです。
でも去年は高校受験が迫っていてできなかったこと。どうしてもやりたかったのです。
今まで生きてきた中で、最もたくさん絵を描いたひと月だと思います。
今月もそのぐらい描ければターミナルが見えてきます。

 今しかできないこと。それが、わたしにとって絵本作りなのです。もう逃げかけているけれど、
このチャンスをみすみす逃してしまっては天誅を喰らいます。後悔という地獄に突き落とされます。
勘のいい人にはわたしが次にどんな文句を用意しているか、分かるのではないでしょうか。


 つきましては、あと一ヶ月、絵本のほうに集中したいと思います。


 この一ヶ月で完成させるのは少し無理があると思うのですが、全力を尽くします。
ただ、無理なものは無理なので、「完成」まではいかなくとも、
ゴールテープが見えるぐらいまでは漕ぎ着けます。ええ、漕ぎ着けます。
五臓六腑に漲り溢れんばかりの「夢を実現させるべくはたらくエネルギー」が背中を押してくれます。
すでに半分は終わっている。頑張れ、わたし。
いつからか、本を読むのもやめています。目指すは、絵本作家。
本気になったアウストラロピテクスの子孫(学名:ヒト)にどの程度のことができるのか。
身をもってわたしが証明しようではありませんか。そう、「なんでも」できる。
……あんまりカッコいいこと言っておいて、できなかったら恥ずかしいのでこの辺でやめておきます。

 では、ハッピーニューイヤーの頃に戻ってこられなかった償いに、
「the New Year by the lunar calendar(旧正月)」に戻ってくることにしませう。

 また会う日まで、お元気で。

2007年 12月

2007年12月01日 | 私信
 みなさんこんにちは!
 のほほんと暮らしていたわたしのもとに、あっという間に年末が押し寄せてきました。
早い、早すぎる! 通算九週間の入院でこの一年を意義なく過ごしてしまった気がします。
二度めの入院は楽しかったのですが、一度めの入院は人生においてのムダだと思っています。

 さて、わたしは最近、ブログの更新を滞っていますね?
本を読んではいるのですが、ほかにやりたいことがあってなかなか更新できません。
わたしは絵本作家を目指しています。今、その絵を頑張って描いているところなのです。
つきましては、この一ヶ月、絵本のほうに集中したいと思います。
ということで、今年いっぱいはブログをお休み致します。
また来年、ハッピーニューイヤーの頃には戻ってきます。
 それではみなさん、よいクリスマスを、お年を!  みなみ

入院のお知らせ

2007年11月08日 | 私信
左ッ、右ッ! 左ッ、右ッ!

 寒い寒い! 外を歩いていて、前方から襲いくるビル風に震えます。
しかしそんな天候にも負けず、わたしは年中無休ALWAYS読書に没頭です。
現在夢中なのはモンゴメリ作品、貫井徳郎作品、ドイツ文学です。
特にドイツ文学! エンデ、ケストナー、ヘッセに心を奪われました。
それから、「こどものためのほん」の充実計画遂行中です。

 ブログ運営の意気込みはここまでにして、入院のお知らせです。
前回の入院から三ヶ月、再び病院に収容されることになりました。
ちょろっと手術してさくっと退院の予定です。入院期間は五泊六日の見込み。
前回の入院では、ある日突然腸閉塞になってしまったり、
体重がなななんと二ヶ月で6㎏も増加してしまったりしましたが、
今回はそんなおもしろエピソードが生まれる前に退院できそうです。
もちろん病院には持てる限りの本を持ち込み、読める限りの本を読み漁ります。
一日中なぁんにもしなくてよくて、ただひたすら読書に励めるなんて素敵すぎです。
……と軽く自分を慰めています。入院したら運動量が足りなくて
また太りそうなので、やっぱり入院することにちょっぴり抵抗があります。
でも手術なんてちょろいモンだぜ! 全然不安ではありません。
 では、続きは退院したときに。    みなみ

2007年 11月

2007年11月01日 | 私信
 みなさんこんにちは!
 そろそろ霜やけの季節です。例年ぼろぼろになるわたしの手は早くも乾き始めています。

 本を一日一冊どころか二冊三冊の勢いで読んでいます。
学業との両立はできているのでしょうか。否、これだけの読書量ではそれは不可能です。
少しは勉強しようとは思わないのでしょうかこのわたしは。
でもいいのです、人生を長い目で見れば、今というこの時間は刹那にも満たない一瞬でしょう。
勉強をして過ごすか、本を読んで過ごすか、どちらが有意義か、わたしは後者だと思うのです。
今という時間が、同じ未来に繋がっているという保証があるので、
好きなことをしてその時間を消費していくつもりです。

今月読みたい本

Rsさんのお薦め! 『塩狩峠』 三浦綾子
ハルさんのお薦め! 『大地の子』 山崎豊子
『空の中』 有川浩
『ミカ!』 伊藤たかみ
『リアル鬼ごっこ』 山田悠介
『星の王子さま』 サン・テグジュペリ
『半分の月がのぼる空7』『同8』 橋本紡
『ミッドナイト ―真夜中の妖精』 ジャクリーン・ウィルソン


2007年 10月

2007年10月01日 | 私信
 みなさんこんにちは!
 急に寒くなりました。体調を崩した方もおられるのではないでしょうか。
天気が悪いと骨折の痕が痛みます。身体には気をつけたいものです。

 なんだか毎日更新ではなくなってしまっていてごめんなさい。
本も、最近では週に二冊も読めていません。
それでも細々とですがやっていきたいと思います。

今月読みたい本

火星人さんのお薦め! 『空想科学読本』 柳田理科雄
『都会のトム&ソーヤ 1~3』 はやみねかおる 【二度め】
『都会のトム&ソーヤ 4』 はやみねかおる
『なんだかへんて子』 山中恒
『あしながおじさん』『続あしながおじさん』 ジーン・ウェブスター 
『電車男』 中野独人


 実は先月のノルマの『神秘の島』も読み終わっていません。
時間はたっぷりあるのでもっとたくさん読みたいです。

『若い兵士のとき』 ハンス・ペーター・リヒター 上田真而子 訳

2007年09月16日 | こどものためのほん
あらすじ

 十七歳で志願し、軍隊に入った「ぼく」。左手を肩から失い士官となった。
 軍隊は、戦争は、理不尽なことが多すぎる。
敢えてそれが例えばどんなことかは書かない。読者となって知ってほしい。
 戦争は恐ろしい。平和の中でぬくぬくと育ったわたしは、本を読むことでしか知り得ない。
そんな過去の現実は、決して消してしまってはいけないものだ。
よしんば誰もが昔の痛手を忘れてしまったとしても、繰り返してはならない。
ヒトがまた、愚かな行為に及ばないように、もっとたくさんの人に
戦争のことを書いた本、例えばこの本を読んでほしい。


かんそう

 戦争は不条理なものだ。どうして、と詰りたくもなる。血を流すことに躊躇いなどない。
今までわたしは、「戦争はよくない、二度とあってはいけない」というような言葉を耳にすると、
ああきれいごとにしか聞こえない、このままではもう何度も踏み誤った同じ道に、
また足跡を重ねるのではないだろうか、と思っていた。
実際そうだろうと今も思うが、今ではなんとなく以前と考え方が変わった。
それは微妙な心境で、言葉にして伝えるのは非常に困難だ。
「戦争が悪いということは、実はみなよく心得ているのではないだろうか」こういう感じだ。

 戦争は大切なものを奪う。戦争は大切なものを壊す。
破壊あるのみでなにも生まない。それは、治ることのない傷を残す。
本当に誰もが戦争の実態を知ったのであればいいと思う。



若い兵士のとき
ハンス・ペーター・リヒター 上田真而子 訳
岩波書店 714円

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