湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番

2017年07月05日 | ラフマニノフ
ブルショルリ(P)アンセルメ指揮ボストン交響楽団(meloclassic)1951/12/14live・CD

録音状態は良くはなくノイズが入り続けるが、このレーベルらしく、最大限聴きやすく鞣されている。演奏も素晴らしい。事故で演奏家生命を絶たれることになる悲劇の女流ソリストが、豪腕や技巧をことさらに見せつけるソリストとは違い、表現の柔和さ、オケとの音色的調和によって協奏曲的な側面以上にラフマニノフの音楽そのもののロマン性〜それはもはや耽溺するものではない〜を理解しやすい形で引き出して、一発聴きでもすぐに引き込まれる世界を形作る。もちろん技巧が劣るわけではなくミスらしいミスはほとんど無く、力感の必要な部分で指の劣るところは全くない(これは録音起因であろう重音や細かな動きの不明瞭さもあるにはあるがまず気にならない)。必要以上の圧力をかけずに楽器の特性を活かして音を轟かせる円熟した演奏ぶりには圧倒される。とくにリズム表現にすぐれるのはラフマニノフのカッコよさを演出するのにふさわしい。3楽章の煽り方はまさにラフマニノフのアレグロの騎馬を駆るようなカッコよさを強調するものだ(ここにきて指の骨の細さを感じずにはおれないがやろうとしていることは伝わる)。音が終始明るく一貫しておりその点での緩徐部とのコントラストがはっきりしないのは、しかし別に問題ではないだろう。指の細かな動きはレース模様を描くように美しくしかしはっきりと音楽の綾を示す。後半になり指の力が回復し、オケの強奏に負けず覇を示す。オケの醒めた音はアンセルメのせいかもしれないが、アンセルメだからこそ技巧的にも音響的にもしっかり盛り立て、しっかり締める。間髪入れず拍手、のようだが残念、断ち切れる。これはフランス派からの刺客である。
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10 Comments

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大胆不敵 (サンセバスチャン)
2017-07-05 21:35:57
ホロヴィッツ健在のアメリカで、ラフマニノフの三番をぶちかますとは大胆不敵ですね。
フランス初演はコルトーだったわけですが、案外フランス系の演奏の系譜があるやもしれません。ハスキルも二番を演奏していたようです。
ドイツ系のピアニストではギーゼキングだけですし。ギーゼキングは三番を演奏したのかな?
最近はヒストリカル録音に手を広げないようにしていますが、おかさんの文章を読むと聴きたくなります。
Re:大胆不敵 (r_o_k)
2017-07-05 21:47:04
ブルショルリは録音にめぐまれないのが残念ですが、ヴィラ・ロボスなど同時代曲のソロも圧倒されます。チャイコフスキーはまだ聞いてませんが、フランスのラフマニノフでライヴでやり切った演奏としては私は初めて感心いたしました。。ほんらいピアノの精緻な音構造を楽しむのにヒストリカルはおすすめではないのですよね(笑)ギーゼキングはメンゲルベルクと録音してますが2番のような伸びやかでメロディアスな曲ではないので、メカニカルな軋みが目立つのと、やはり録音が古過ぎます。
チャイコフスキー (サンセバスチャン)
2017-07-07 12:41:42
チャイコフスキーを聴いてみましたが、すごい音で第一楽章18分少々、ホロヴィッツがハンブルクで急きょこの曲で演奏したとき、最初の和音で、指揮者が目をみはり、あとはひたすらピアノについていくだけだったという話を思い出しました。
動画を見たら、ビジュアル的には完全にオバサンでしたが、ショパンのバラード4番もジェットコースターのような激しい演奏で驚きます。指は結構太いですね。
Re:チャイコフスキー (r_o_k)
2017-07-07 12:44:38
お持ちなんですね!ジャケット写真から指は普通なのかなと思っていましたが太いんですね(笑)フランスの豪腕系ですとメイエルを思い浮かべるのですが、あちらは傾向的にはもっと素っ気なくスピーディなイメージです。
持ってません (サンセバスチャン)
2017-07-07 17:14:59
ようつべ、でのつまみ聴きです。これは買わねばと思いました。
メイエルは剛腕なのですか?同じ写真しか見ていないのと、レパートリーもショパンとかないと比較が難しいですね。なかなか女性は長期間活動するのが難しいです。
Re:持ってません (r_o_k)
2017-07-07 17:20:51
ユーチューブにあるんですか。何でもありますね。。私は近現代しか聴かないのでメイエルもあくまでストラヴィンスキーなどメカニカルなもので判断してます。同門のプーランクの気まぐれな感じとは逆で、人によって好まないかもしれません。録音も古いですね。。
聴きました! (サンセバスチャン)
2017-07-24 09:14:56
BOXを購入し、昨日から聴いています。さすがボストン交響楽団というか、充実した伴奏で盛り上げています。つねに低弦が脈動を感じさせ、停滞感がまったくありません。ピアニストは高音部のきゃぴきゃぴした音が独特ですが、ビシビシ超絶技巧を披露していて、この曲で初めてホロヴィッツを意識せず聴きました。残念なのは第一楽章の大きなカットと、最後盛大なブラヴォーが予測されるのにぷっっと切れてしまうところ、私は終わった瞬間ブラヴォー叫んだら無音になってしまい愕然としました。
チャイコフスキーはラジオ放送用のスタジオ録音ですが、猛烈なテンポで突き進むのはいいのですが、音符を端折ったり、オクターヴで下降する難所で減速し、ホロヴィッツの複数の録音を知っていると白けるところがあります。
それからチャイコフスキーは録音が悪く、とくにピアノの音がいけません。
Re:聴きました! (r_o_k)
2017-07-24 09:32:09
あの高いボックスを買われたんですね、ドキドキしましたがおおむね好評のようでよかったです。ラフマニノフはむしろカット版で聞く事が多いので気になりませんでした。チャイコフスキーは未見です、そんな状態なんですね、いい意味でも悪い意味でもプロフェッショナルですね。このレーベルはブツ切りをよくしますね、残念です。
DVD (サンセバスチャン)
2017-07-24 09:44:58
チャイコフスキーをDVDで見ました。ヴァンデルノートってこんな顔だったのか。
演奏ぶりは猛烈の一言です。指は結構立てているのが目立ちます。大きな手で、和音をわしづかみ、脱力して、腕の重みで弾いています。フレアースカートのセンスは良くないなあ。
Re:DVD (r_o_k)
2017-07-24 09:56:47
まさに豪腕系というひきっぶりなんですね。指を立ててひくのはわかります。これが交通事故でダメになるというのだから不幸です。

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