<古今東西わかりやすい交響曲の最高峰。作曲家アメリカ時代の傑作。>
クーベリック指揮
◎バイエルン放送交響楽団
(en larmes:cd-r)1971/5-6ポルトガル・リスボンlive/
(re!discover enterprise他:cd-r)1970年代live/
(sardana records:cd-r/ORFEO)1980/6live
この三つのライヴ録音の中で、一番魅力ある演奏は圧倒的にポルトガルライヴの盤だ。良く引き締まった演奏である。比較的インテンポで快調に飛ばす一楽章、二楽章は最高の出来。三楽章はややだらしない出だしだが次第にまとまってくる。四楽章は快速で、弦楽器気合の入りかたが尋常じゃない。ペットソロに思い入れが無かったり細かい瑕疵もあるが、そんなに気にはならない。ヴァイオリンパートが両翼展開しているのも驚きである。最後はブラヴォーの渦だが、さもありなん。さて、この演奏とそんなに時期が違わないのにかなり違った感じがするのが70年(代?)ライヴの盤である。演奏時間がまずぜんぜん違う。一楽章は速い。二楽章は遅い。三楽章も長いが、それはフレーズ毎のうたいこみが長いせいだろう。四楽章は速く、なかなかのダイナミズムである。音はややくぐもりがちであるし、そのせいかおとなしく聞こえるが、ブラスが圧巻で、一糸乱れぬ咆哮は気を沸き立たせる。また中間楽章の木管セクションはナイス。最後のブラヴォーはポルトガルのときよりは小さいがまずまずの出来だろう。何故かこの演奏と似た印象を与えたのが、一番新しいはずの80年のライヴである。録音時間的にも70年のものと非常に近い。が、表現はかなり円熟しており良くも悪くも大人の演奏といったふうだ。なめらかであり、よりおとなしいが、叙情性は増しており、とくに四楽章緩徐部のなつかしい響きは印象的である。最後のブラヴォーはまあまあ。サルダナの録音は後述のMETEORと同じ可能性あり、ORFEO(1980/6/19,20)とは同じ模様。
○シカゴ交響楽団(mercury)1951/11/
ウィーン・フィル(decca)1956/10/
○バイエルン放送交響楽団(altus)1965/4/24日本live/
ベルリン・フィル(dg)1973/
チェコ・フィル(denon)1991/10/11live
クーベリックにはムラがある。たとえばウィーン・フィルとの演奏は粗雑で薄っぺらく余り薦められたものではない。しかしそれより5年前のシカゴとの演奏は若々しい躍動にあふれ非常に充実した聴感をあたえる(ただしモノラル)。バイエルンとの演奏はこの中でもっとも薦められるもので、終始速いテンポで小気味よく進む音楽はライヴならではの迫真性をもって迫ってくる。そのドラマティックな音楽は何度でも聴いて楽しみたくなるほどの耳馴染みの良い音楽であり、クーベリックの「新世界」の白眉といっていい。一方ベルリン・フィルとのスタジオ録音はややおとなしくなったというか、中途半端な感じに仕上がってしまった。それでも一定の水準は満たしているのだが。チェコ・フィル盤は祖国に凱旋したあとのものだが、丁寧な音作りは認められるもののさらにおとなしくなった感も否めない。オケにやや難がある気もする。音にあまり個性が無く、熱せず低温なのだ。終楽章の緩徐部など感動的な場面もいくつかあるが、これをクーベリックの真骨頂と呼ぶにはいささか躊躇をおぼえる。拍手もブラヴォーも割合冷静。さてクーベリックはこれだけ多くの記録を残しているわけだが、どれもそれぞれの特色がある。一本筋の通った演奏史とはいえない状況を呈しているわけだ。
○バイエルン放送交響楽団(METEOR)LIVE
METEOR等の怪しげアメリカレーベルは一時期巷に溢れかえっていた。未発売のライヴ音源を、はっきり言えば海賊盤の形で世に送り出し続けたレーヴェルである。ライナーなぞ当然ない。この盤のように録音年代すら書かれていないのも多いのだ。しかしながら、価格帯が低かったのと、当時健在だったチェリビダッケの未認可盤を沢山有していたことから、比較的長期間にわたって売られ続けていた(ASdiscなんかも同じように売られていた。これもアメリカ盤)。しかし現在入手できるのは限られた盤にすぎない。チェリ死後に公式に発売となった晩年ライヴに対してその価値を失った同じ曲の盤(ブルックナーなど)くらいだろう。ブラームスやドヴォルザークなどは滅多に出てこない。チェリ晩年の「新世界」など聴いてみたい盤のひとつだが、気長に待つしかないだろう、と思っている。某評論本で某著名評論家がやたらとMETEORのチェリのライヴを持ち上げていて、ヘキエキしたものだが(だいたい未認可盤をこんな本に載せていいものかどうか!)、それだけ持ち上げられる理由があるのかどうか、いつか確かめていきたい。話しが外れたが、クーベリック盤である。かなり完成度の高い演奏で、それゆえにケチのひとつもつけてみたくなる。以前ここで挙げたクーベリックのライヴ盤と同じ物なのか違う物なのか、聴いただけでは判別がつかない(たぶん違う)。それらから離れた演奏ではないことは確かで、まあ、コレクターやアニアが喜ぶくらいのもの、としておこう。1、2楽章はそれなりに胸打たれた。3、4楽章の気合にはびびる。このコンビのライヴは表現意欲が強く、ちょっと油っぽい感じもあるが、よく引き締まった音は聴いていて気持ちがいい。もっとゆったり聴きたいよ派には薦められないが、たとえば新世界初心者にはよい導入盤となることだろう。あふれる情熱、途切れない集中力に傾聴。終楽章緩徐部の濃厚な表現は独特。この楽章、音楽の表情付けが凄い。あれ、テンポが、という箇所あり。盛大なブラヴォーと拍手で終了。(2003春 記)CD-R盤のどれかと同じ演奏である可能性あり。
○バイエルン放送交響楽団(MA:DVD)1977/12LIVE
いきなり始まって終わってぶつ切れるなんとも余韻も何も無い編集だけれども、音も映像も良好。同時期のライヴCDも多いので、ひょっとするとどれかと同一演奏かもしれないが、観たところちょっと事故的なものがあったりする(終楽章で弦がなぜかズレそうになる)のが特徴的なのでおそらく別だろうと思い別項にあげた。クーベリックは直情型だがここぞというところで大きく揺らしてくるのがかっこいい。なんといっても終楽章なのだが、ペットがタメを作って警句を鳴らしたり、弦が思い切りテンポを落として緩徐主題を歌い上げたりと面白さに事欠かない。おおざっぱに言えば確かにあまり個性的とはいえない正攻法の演奏ではあるが、ライヴのクーベリックが見せる気迫の一端に触れる事が出来るので、ファンならずとも一回試してみてください。
※2004年以前の記事です
クーベリック指揮
◎バイエルン放送交響楽団
(en larmes:cd-r)1971/5-6ポルトガル・リスボンlive/
(re!discover enterprise他:cd-r)1970年代live/
(sardana records:cd-r/ORFEO)1980/6live
この三つのライヴ録音の中で、一番魅力ある演奏は圧倒的にポルトガルライヴの盤だ。良く引き締まった演奏である。比較的インテンポで快調に飛ばす一楽章、二楽章は最高の出来。三楽章はややだらしない出だしだが次第にまとまってくる。四楽章は快速で、弦楽器気合の入りかたが尋常じゃない。ペットソロに思い入れが無かったり細かい瑕疵もあるが、そんなに気にはならない。ヴァイオリンパートが両翼展開しているのも驚きである。最後はブラヴォーの渦だが、さもありなん。さて、この演奏とそんなに時期が違わないのにかなり違った感じがするのが70年(代?)ライヴの盤である。演奏時間がまずぜんぜん違う。一楽章は速い。二楽章は遅い。三楽章も長いが、それはフレーズ毎のうたいこみが長いせいだろう。四楽章は速く、なかなかのダイナミズムである。音はややくぐもりがちであるし、そのせいかおとなしく聞こえるが、ブラスが圧巻で、一糸乱れぬ咆哮は気を沸き立たせる。また中間楽章の木管セクションはナイス。最後のブラヴォーはポルトガルのときよりは小さいがまずまずの出来だろう。何故かこの演奏と似た印象を与えたのが、一番新しいはずの80年のライヴである。録音時間的にも70年のものと非常に近い。が、表現はかなり円熟しており良くも悪くも大人の演奏といったふうだ。なめらかであり、よりおとなしいが、叙情性は増しており、とくに四楽章緩徐部のなつかしい響きは印象的である。最後のブラヴォーはまあまあ。サルダナの録音は後述のMETEORと同じ可能性あり、ORFEO(1980/6/19,20)とは同じ模様。
○シカゴ交響楽団(mercury)1951/11/
ウィーン・フィル(decca)1956/10/
○バイエルン放送交響楽団(altus)1965/4/24日本live/
ベルリン・フィル(dg)1973/
チェコ・フィル(denon)1991/10/11live
クーベリックにはムラがある。たとえばウィーン・フィルとの演奏は粗雑で薄っぺらく余り薦められたものではない。しかしそれより5年前のシカゴとの演奏は若々しい躍動にあふれ非常に充実した聴感をあたえる(ただしモノラル)。バイエルンとの演奏はこの中でもっとも薦められるもので、終始速いテンポで小気味よく進む音楽はライヴならではの迫真性をもって迫ってくる。そのドラマティックな音楽は何度でも聴いて楽しみたくなるほどの耳馴染みの良い音楽であり、クーベリックの「新世界」の白眉といっていい。一方ベルリン・フィルとのスタジオ録音はややおとなしくなったというか、中途半端な感じに仕上がってしまった。それでも一定の水準は満たしているのだが。チェコ・フィル盤は祖国に凱旋したあとのものだが、丁寧な音作りは認められるもののさらにおとなしくなった感も否めない。オケにやや難がある気もする。音にあまり個性が無く、熱せず低温なのだ。終楽章の緩徐部など感動的な場面もいくつかあるが、これをクーベリックの真骨頂と呼ぶにはいささか躊躇をおぼえる。拍手もブラヴォーも割合冷静。さてクーベリックはこれだけ多くの記録を残しているわけだが、どれもそれぞれの特色がある。一本筋の通った演奏史とはいえない状況を呈しているわけだ。
○バイエルン放送交響楽団(METEOR)LIVE
METEOR等の怪しげアメリカレーベルは一時期巷に溢れかえっていた。未発売のライヴ音源を、はっきり言えば海賊盤の形で世に送り出し続けたレーヴェルである。ライナーなぞ当然ない。この盤のように録音年代すら書かれていないのも多いのだ。しかしながら、価格帯が低かったのと、当時健在だったチェリビダッケの未認可盤を沢山有していたことから、比較的長期間にわたって売られ続けていた(ASdiscなんかも同じように売られていた。これもアメリカ盤)。しかし現在入手できるのは限られた盤にすぎない。チェリ死後に公式に発売となった晩年ライヴに対してその価値を失った同じ曲の盤(ブルックナーなど)くらいだろう。ブラームスやドヴォルザークなどは滅多に出てこない。チェリ晩年の「新世界」など聴いてみたい盤のひとつだが、気長に待つしかないだろう、と思っている。某評論本で某著名評論家がやたらとMETEORのチェリのライヴを持ち上げていて、ヘキエキしたものだが(だいたい未認可盤をこんな本に載せていいものかどうか!)、それだけ持ち上げられる理由があるのかどうか、いつか確かめていきたい。話しが外れたが、クーベリック盤である。かなり完成度の高い演奏で、それゆえにケチのひとつもつけてみたくなる。以前ここで挙げたクーベリックのライヴ盤と同じ物なのか違う物なのか、聴いただけでは判別がつかない(たぶん違う)。それらから離れた演奏ではないことは確かで、まあ、コレクターやアニアが喜ぶくらいのもの、としておこう。1、2楽章はそれなりに胸打たれた。3、4楽章の気合にはびびる。このコンビのライヴは表現意欲が強く、ちょっと油っぽい感じもあるが、よく引き締まった音は聴いていて気持ちがいい。もっとゆったり聴きたいよ派には薦められないが、たとえば新世界初心者にはよい導入盤となることだろう。あふれる情熱、途切れない集中力に傾聴。終楽章緩徐部の濃厚な表現は独特。この楽章、音楽の表情付けが凄い。あれ、テンポが、という箇所あり。盛大なブラヴォーと拍手で終了。(2003春 記)CD-R盤のどれかと同じ演奏である可能性あり。
○バイエルン放送交響楽団(MA:DVD)1977/12LIVE
いきなり始まって終わってぶつ切れるなんとも余韻も何も無い編集だけれども、音も映像も良好。同時期のライヴCDも多いので、ひょっとするとどれかと同一演奏かもしれないが、観たところちょっと事故的なものがあったりする(終楽章で弦がなぜかズレそうになる)のが特徴的なのでおそらく別だろうと思い別項にあげた。クーベリックは直情型だがここぞというところで大きく揺らしてくるのがかっこいい。なんといっても終楽章なのだが、ペットがタメを作って警句を鳴らしたり、弦が思い切りテンポを落として緩徐主題を歌い上げたりと面白さに事欠かない。おおざっぱに言えば確かにあまり個性的とはいえない正攻法の演奏ではあるが、ライヴのクーベリックが見せる気迫の一端に触れる事が出来るので、ファンならずとも一回試してみてください。
※2004年以前の記事です